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避暑。または執念 3

お待たせしました。女王暗躍ーー全然隠れてねぇよ!ーーする。です(笑)

 ビーチのチャラい男達には、厳重注意がしぃちゃんのアイアンクローつきで、本人達が納得するまで続いた。


 しぃちゃんは説得だと言ってたけど、説得か? あれ。


「溺れたいのか、真桜?」

「イイエメッソウモナイ」


 浮き輪を使って海面に浮いてる私の後ろから、耳元でささやくのはやめて!

 ちなみに私は泳げない。泳げなくても生きていけるもん!


「足っ、しぃちゃん! 足つかないとこはダメだってば!」

「俺はつく」

「身長差考えなくてもわかるよね!?」

「俺は泳げる」

「しぃちゃん!?」


 足がつく場所で浮いてるのと、つかない場所で浮いてるのでは、怖さが違うのだよ!


「じゃこっちこい」

「なお怖いこと言うし」

「離さないから」

「……ほんと?」

「ああ。おいで」


 しぶしぶ、浮き輪からしぃちゃんに抱きつく。怖さのあまりぎゅう、と力が入る。ふと、しぃちゃんを見るとなぜか嬉しそうな顔。


「顔にやけてるよ」

「ん」

「不憫君が見たらムンクになるよ」

「気にするな、記憶から抹消しとくから」

「……なにする気?」

「安心しろ、奴の記憶に真桜の水着姿を残すつもりはない」

「さらっと言ってるけど爽やかな笑顔だけど言ってることおかしいからね!?」

「真桜の水着姿は俺のだ」

「いや、あってるけどそうだけど! 犯罪はやだよ!?」

「大丈夫だ。目撃者も証拠も残さない」

「完全犯罪!!」


 ぐったりです。



 更なる事件は二日目の夜に起きた。

 昨日の夜はレストランでバイキングの予定だったけど、女王と駄犬がレストランに居座ってるとかで、スタッフさんが料理を取り分けて部屋まで持ってきてくれた。


 今日は出かけたので、大丈夫ですとすすめられた。

 正直あれはあれで楽しかったんだけど。


 レストランに入って、6人でテーブルを囲む。


「ある意味あっちのが贅沢だったわよね」


 サラダを山盛りにしてりっちゃん。


「女王さまは何を考えてるのかなー?」

「そりゃ、料理の皿持った真桜にぶつかって自分にグラスのジュースかけて、酷いって泣き真似したかったんじゃないの?」

「誰得? それ」

「学校以外でそれやっても、真桜を(おとしい)れるには

 弱いだろうな」


 そういや、しぃちゃん昨日海から帰ってきてから誰かに電話してたね。なにか考え、てか企んでる?


「あの女、間中のこと気にしてたよね? 真桜に騙されてるとかって」


 いつの間にかサラダを空にしたりっちゃんが、お肉をロックした。


「世の男は自分を愛するのがあたりまえ、って人種みたいじゃない? 間中ロックオンされたんじゃないの?」

「否定はできないな。まあ、真桜がいるのによそになびくわけないが。しかもあんな脳内花畑自称ヒロインとか、マジであり得ないけどな」


 しいちゃんはたしかに私より視野が広いけど、興味ないものを認識しないというとこはどっこいだと思う。


「真桜? どうした」

「手洗ってくる」


 りっちゃん的メインのお肉を食べた後、デザートのケーキをちぃちゃんと不憫君が取りに行っていた。

 私が手を洗うのに立ち上がると、りっちゃんがつきそってくれた。過保護だわー。


「なにがあってもおかしくないわよ。お花畑でキャッキャウフフしてる女王だもの」

「そこはお姫さまじゃダメなの」

「あんな電波、姫なんてタマじゃないわよ」

「たしかに会話にならないけどさぁ」


 ついでにトイレに入ったりっちゃんを通路で待つことにした。ここからはしぃちゃん達は見えない。レストランの端も端、さらに壁で目隠しされてる。


「お待たせ~」

「りっちゃんおそ、い?」


 りっちゃんじゃなかった。野太い男の声だった。てか、一人じゃなかった。またかよ!!


 確かに。なにがあってもおかしくなかったよ、りっちゃん。


「待ったよね~、さあ行こうか~」


 男が語尾伸ばすのってまったく愉快じゃないなぁ。

 気軽に伸ばしてくる手を避けながら思う。これ、もう間違いなく女王だろうと結論付けるあたり、私もりっちゃんと同意見だったんだろうな。


「待ってないし、待ってるのは別の人だし、どこにも行かないし」

「大丈夫だよ~? 上に部屋とってあるし、楽しもうよ~」

「行かないし、楽しまない」


 バカなの? アホなの。ニヤニヤとそれしか考えられない顔して、ほんとおつむ軽すぎなんじゃないの。


「おい、早く行こうぜ」

「あ~、はいはい。じゃあ行こうか~」


 だから行かないっつうの。


「どこに行くわけ?」

「りっちゃん、しぃちゃんに」

「あ~、お友達~? 一緒に行こうか~」

「なにこいつ。ウザッ」

「え~、ひどいな~」


 トイレから出てきたりっちゃんが、私をかばうように前に出ると、男達はさらにニヤニヤと表情を崩した。


「いいから行くぞ。こい!」

「っ!? 触んな!」


 しびれをきらしたのか、語尾伸ばし男の後ろから出てきた真っ黒な男がりっちゃんの腕をつかんだ。

 抵抗したりっちゃんに舌打ちをした男は、押さえつけようともう片方の手も伸ばした。


「はい、そこまで」


 男性の声だった。多分私達の味方だった。

 シャツにスラックス。暑いだろうに着崩すわけでもなく、むしろ爽やかに着こなしたその人は。


「晴さん」

「無事? 真桜ちゃん」


 なんと、しぃちゃんの従兄弟の晴さんだ。




「真桜!!」


 晴さんの部下ーー晴さんは刑事さん。所属は知らないーーさんが男達を連れて行った時、しぃちゃんが走ってきた。珍し、焦ってる。


「しぃちゃ、んぶっ」


 変な声出た! ちょっと待って、息できないし! そんなぎゅうぎゅう抱きしめないで、落ちる!


「静留。とりあえず事情聴取はするけど、教唆にとれるかはわかんないぞ。バックもついてるみたいだし」

「助かったよ晴。ありがとう」

「いや、真桜ちゃんが無事でなにより。てか、真面目に深刻そうだな。親父が」

「晴、その話は後で」

「あ、ああ。連絡する」

「悪いな」

「仕事だからな。ま、貸し1で」

「しょうがないな」

「じゃ、またね。真桜ちゃん」

「ありがとうございました、晴さん」


 忙しそうだな、晴さん。しぃちゃんにお仕事増やされたのかな。は! それはもしかしなくても私関連か? ごめん、晴さん。諦めて頑張って!


「中里は大丈夫か?」

「平気、そっちもなんかあったの?」

「ああ、場所かえよう」


 私達の部屋に集合した後聞いた話は、まぁ、あきれるしかないわけで。

 てっとり早く言えば、私達にチャラ男第2弾が投下された頃、しぃちゃん達には女王が突撃かましてたそうで。


 相も変わらず会話が成立しない空気読めない発言をしてたそうだ。


「こっちがなに言ってもー、真桜ちゃんにだまされてるとか、自分がいじめられてる怖い、とかー。ナニアレ?」

「ちなのことまでいじめをする加害者呼ばわりだぞ」

「まあ、通常運転だね」


 ちぃちゃんと不憫君は初遭遇だもんね、女王さまはあれが普通です。ん? 女王さま一人? 駄犬は?


 聞こうと口を開くより先に、しぃちゃんが立ち上がった。


「しぃちゃん?」


 私の頭を撫でて、しぃちゃんはスマホを取り出した。


「あのバカと話をしてくる」


 わあ、本気で怒ってる!



次回、怒れるしぃちゃん視点です。

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