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24.氷寒(アイス)の魔女との戦い 其の参

「というわけでマルマル、まずは手始めに目の前の氷寒アイスの魔女、ウラノをぶっ倒してくれないか」

 俺は正面に突っ立つウラノを指さす。ウラノは無表情でぼんやりしている。

「な、何を! 私にウラノを倒せと言うのか! ウラノとは文通するぐらいの仲があるんだぞ! 私に仲間を攻撃しろというのか!」

「それはそれ、これはこれということで。お前、サバトに打ち首にされたくないだろう」

「ぐぬ……」

 と苦虫を噛みつぶしたような顔を浮かべる。

「し、しかし私は先ほどの戦闘で魔力量が底を突き、その底をついたわずかな魔力も治療と、さっきのちびっ子にまとわりついてた氷を溶かすのに費やされて、もう『焔蜥蜴【サラマンダー】』一回分くらいしか使えないんだが……」

「なんだ、それっぽちしか使えないのか。使えないやつだな」

「使えないやつって! そもそも貴様たちのせいで私はこうなってしまったんだぞ!」

 マルマルはまた怒っているが、魔力量が尽きているからか覇気が感じられない。

「一回分か。一つ訊くが、あのウラノという魔女はどれほどの力の持ち主なんだ?」

「うーん、ウラノは……たしかに魔法は強いものだけど、基本的な体力は見た目通りあまりないんだよ。前にウラノとやり合った際、私の『焔蜥蜴【サラマンダー】』一発でKOさせたことがあるから、うまく『焔蜥蜴【サラマンダー】』が当たれば倒せるかもしれないけど……」

「うまく当たれば倒せるのか」

「いわゆる相性の問題で、火炎フランメの魔法には氷寒アイスの魔法で太刀打ちできないからな。しかし……あいつも腐っても十人十色の魔女だ。もしあいつが氷華グラキエースの魔法で氷の壁でも作ってしまえば、魔法の威力が相殺されて、相手に魔法が当たらなくなる」

「そうなれば、マルマルは魔法が使えなくなるから無意味というわけか」

 つまりこちらの状況は、銃に弾が一発しか入っていない、そんなイチかバチかの状況である。

 うまくマルマルの魔法が当たればウラノを倒せるかもしれないが、その保証はどこにもない。

 しかし、こちらも何の手もないわけではない。弾が当たらないのなら、弾を当てさせてやればいいのではないだろうか。

「マルマル、お前の魔法を当てるため、俺たちは手を打っておく」

「手を打つって、何をする気だ?」

「今回はユーカに手伝ってもらう」

 ユーカの頭をぽんと叩く。

「おお先輩! ご命令とあらばなんなりとー!」

「いまからお前はあのウラノの身体を拘束させて来い。どんな手を使っても構わないからあいつの動きと、口を封じてやれ」

「せ、先輩! オトリの次は身柄の拘束ですか!」

「いいからユーカ、やってくれ」

「そ、そんなぁ! 先輩! 私はあのウラノに氷漬けにさせられたんですよ! またあのウラノに氷漬けにされちゃいますよ!」ユーカが抗議する。

「そうだ。ウラノの傍に行ってしまえば、ウラノに氷漬けにされかねないぞ。どうするつもりなんだ?」

「俺が考えなしにユーカを送ると思っていたのか? ウラノの魔法なら、なんとかなるさ。それについての対策は取ってある」

「う、ウラノの冷凍室【フリーザー】の魔法は生物やあたりの空気さえも凍らせてしまうんだぞ! そんな魔法を、お前たちみたいな普通の人間がどうやって乗り越えようと言うんだ」

「安心しろマルマル、俺の策には抜かりはない。それに万一失敗してもユーカが氷漬けになるだけだ。だから心配する必要はこれっぽっちもないんだ」

「ああ。なるほど。それなら心配ないな」

「な、何で二人とも私が氷漬けになることを納得しちゃってるんですか!」

 ユーカは怒りにまかせて叫んでいる。

「まぁユーカ、お前にはこれから頑張ってもらうんだ。まずはこのタオルでしっかり体を拭いておいてくれ」

 俺はユーカにタオルを渡す。水浸しだったユーカの身体が、辺りの冷気も相まってすっかり乾いていく。

「よしユーカ、身体はしっかり乾いたか」

「はい、ばっちりです!」ユーカが高らかに言った。

「よし、じゃあこれを被れ」

 俺は革袋の中からとある臭いのキツイ液体をユーカにドボドボと振りかける。

「って、なんじゃこりゃあああああああああああ!」

 ユーカはすっかりびしょびしょ状態に戻っていた。

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