10.ダンダリオン図書館
各階のトラップをかいくぐっていき進んでいく。
いや、ユーカだけはトラップを体全身で受け止めると言うギャグをかましていたので、テラスさんの回復魔法で回復されつつ進んでいったのだ。
そして10階へと到達する。
そこは広い部屋の図書館となっていた。
「ほう、ここは図書館か」
「ここはダンダリオン図書館なんですよぉ。魔法に関する本がたぁああああああくさんあるんですよぉ」
テラスさんの言うように、その図書館はかなり広い部屋となっていた。本棚が俺たちの背の3倍以上もの高い位置まで延びていた。梯子か、もしくは魔法を使わなければ上の段の本は取れないだろう。
「今はここにはだれもいないと思うから、安心していいわよぉ」テラスさんが言った。
「図書館ですか。なんだかふるーい本特有のチョコっぽいにおいが立ち込めてますねぇ」
「そうだなぁ」
俺はその部屋にあった棚から本を取り出す。本は英語で書かれているものだ。
「せ、先輩! こんなところで本を読んでいる場合じゃないでしょう! はやく次の階に行きましょうよぉー」
「まぁ待てユーカ。俺たちは魔女たちと戦わなきゃならないんだ。とりあえず魔法について予備知識があれば有効に戦えるかもしれない。だからここでしばらく調べ物をしようぜ」
「し、調べ物って! 図書館っていうのは手塚治虫先生の漫画を読むところじゃないんですか!」
ユーカがぶぅぶぅと抗議していると、後ろからテラスさんが顔を出す。
「二人ともぉ、ちょうどいい機会だからぁ、私が魔法のことについていろいろ手取り足取り教えてあげるわぁ」
ダンダリオン図書館の中央のテーブルに座り、テラスさんによる魔法の講義を受ける。
「えーと、魔法というのはねぇ、この世界の根幹であるところのケロネスの力を借りてぇ……」
「ぐぅー……」
ユーカはテラスさんの講釈が始まると急に眠り出した。丸まって猫みたいに眠っている。
俺は本を斜め読みし、魔法についてある程度のことを知った。
俺が特に注意して読んだのは『魔法の発現』について。
魔法の発現には条件があり、その条件を一つでも満たさないと魔法は発現されない(ただし魔法発現不可地域、、体調不良、魔法無効化の呪いを受けた場合は条件を満たした場合でも魔法は発現されない)。
魔法を発現する条件は……。
①発現者は10ジュリィ(魔力の単位?)以上の魔力を持つ、悪魔との契約を交わした魔女もしくは魔法使いであること。
②発動させる空間、または対象物に対して、手のひら、杖、または陣などの媒体を用いて指し示す。
③発言者は魔法を正しいスペル、発音で、口頭にて唱える。
とのこと。そのあといろいろ細かいことが書かれていたけど割愛。
まぁ簡単に言うと、魔法というのは魔女か魔法使いである者が、対象物に対して手か杖か陣で指し示し、そして口で魔法をしっかりと唱えれば魔法が発現するということだ。
「ユーカ、分かったか」
「ええと、簡単に説明していただけますか」
「つまり杖か指かで目標を指示して、魔法のコトバを唱えれば魔法が発現するというわけだ」
「おお! じゃあためしにやってみましょうか! イオナズン!」
とユーカが手を正面に突きだして魔法を唱えてみるも魔法は発動されない。
「魔法が発現できるのは魔女か魔法使いだけだ。普通の人間にはできないみたいだ」
「じゃ、じゃあどうやって私たちはその魔法使いと戦えっていうんですか!」
「安心しろユーカ、仮にも俺たちは前にあのプルーとかいう魔女を倒しているんだ。イージスも倒しているんだ。魔女っていうのは魔法が使える割に、本人の身体能力はさほどないんだ。だから魔法を避けて攻撃すれば問題ないんだよ」
なんにせよ、俺たちは今までどおり敵と渡り合っていくまでだ。
どんな敵が現れようと俺たちは突き進んでいく。魔王復活を阻止するために、そして……
「せ、先輩の目になぜか金貨が浮かんでいるのは私の目の錯覚なんでしょうか……」
「とにかく、魔法についてはあらかたわかったな。テラスさん、講義ありがとうございました」
「いえいえぇ。私もひさしぶりに魔法を教えることができて、少し楽しかったわぁ」
「あまりここに長居するわけにも行きませんから、すぐに次の階に向かいましょう」
「そうですねぇ。でも気を付けてくださいねぇ。いままでの階にはだれも魔女がいませんでしたけどぉ、次の階からは、サバト会の会員がいるかもしれませんわぁ」
「どんな魔女が現れようと私がやっつけてやるまでですよ!」
「そうだな。俺たちは魔女にも魔法にも屈しない」
俺たちはダンダリオン図書館を後にし、次の階へと向かった。




