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8.魔女協会都市(ウィザードコミューン) 其の参

 ティータイムのあと、俺たちははサバトの魔王復活を阻止するため外に出る。

「サバトちゃんはこの荒城の最上階の『魔王の祭壇』で魔王復活のための陣を作っているみたいよ」

 俺とユーカはテラスさんのあとについていく。テラスさんいわく一階の魔女の居住区から次の階へと向かうには普通の行き方ではたどり着けないように魔法がかけてあるらしい。なので俺たちはただテラスさんのあとをついていく。はぐれないように。

「魔王復活……って言ってるけど、実際は復活というより召喚に近いのよねぇ」

「召喚か……」

「魔王は勇者ウルスラ・アームストロングの白の特異点【ホワイトホール】と自分の黒の特異点【ブラックホール】との衝突によって消えたと言われているけれど、魔王もとい勇者は、もしかしたら消滅したのではなく、どこか別の空間に飛ばされたのかもしれない――というふうに言われていたりするのよ」

「別の空間、もしかして別の世界に飛ばされたりとか……」

「別の世界ねぇ。たしかにそういう考え方もあるみたいよぉ」

「ふぅむ」

 もしかしたら、魔王の消滅というのは俺がこの世界に来たことと何か密接な関係があるのかもしれない。

 もしかしたらまったく無関係と言うこともあり得るだろうけど。

「とにかくねぇ、サバトちゃんは魔王を復活、この世界に呼び出すために、どこかの空間か世界にいる魔王をこっちの世界へ引っ張ってくるための『召喚陣』を作っていたのよ。召喚の魔法っていうのは高度な魔法でねぇ、ちょっとでも塩梅を間違えたらもとの物体を破壊したりどこかよくわからないところに飛ばしてしまったりする難しいものなのよ。それをどこにいるかも見当のつかない魔王に対してやるとなったら不可能に近いぐらいむずかしいのよぉ。でも、サバトちゃんは仲間を寄せ集めて、なんとか50年もかけて召喚陣を9割方完成させたみたいなのよ」

「ご、50年って……。普通の人間にとっちゃ一生分の時間じゃないか……」

「サバトちゃんは真面目で執念深いからねぇ。その召喚陣はかつて魔王が住んでいたと言われる、勇者もそこで魔王と最終決戦した場所である、この荒城の最上階の『魔王の祭壇』にて作られているわ」

「じゃーその召喚陣を破壊するか消すかしたら魔王復活は止めれるんですか!」

「うーん、召喚陣、もとい魔法陣っていうのは消しゴムで消えるシロモノじゃないからねぇ。そりゃ跡形もないくらい粉々にしたら召喚陣の効力はなくなるでしょうけど、そんなことする前にサバトちゃんがそれを阻止するはずだからねぇ。サバトちゃんは、少々自意識過剰なところはあるけど、あれで魔法はめっぽう強い魔女だからねぇ。多分、魔女の中では一番強いかもしれないわ」

「一番強いって……。そんなに強いならもう魔王の力とかわざわざ手に入れなくてもいいんじゃないですか」

「一番強いからこそ、サバトちゃんはさらなる力を求めていると思うのよ。力っていうのは、上限がないものだからねぇ」

 まったくサバトとやらは。どこまでも力を求めているんだろうか。

 それが魔女の性というのだろうか。

「まー、どんな野郎が相手だろうと戦ってやりますからねぇ!」

 ぶん、と木刀を振りながら歩くユーカ。準備運動のつもりだろうか。

「サバト会の会員たちはこの城の30階から最上階の36階までを根城にして魔王復活の計画を行っているわ。魔王復活のための召喚陣は最上階にあるけど、その途中にはほかのサバト会の魔女がいるでしょうから、おそらく、その人たちも倒して進まないといけないと思うわ」

「つまりサバト会を全滅させてやればいいんですね!」

「まー簡単に言っちゃえばそうねぇ。でも気を付けてねぇ。サバト会の魔女は何人か精鋭の、サバトちゃん並に強い魔女がいるもんだから注意してねぇ」

「どんな相手だろうとこの木刀で倒してやりますよ!」ユーカが威勢よく言った。

「ふふふぅ、魔女相手に普通の人間が相手になるなんて100年前の勇者ウルスラ以来かもねぇ。あなたたちは、新しい勇者となるのかもしれないわねぇ」

「いやー、勇者だなんてそんなぁー」

 とユーカは照れてる。

「剣士ちゃん、少年くん、向こうに階段が見えるわ」

「わ! 階段だぁ! 早く登りましょう!」

「あ、その階段の手前はだまし床になっていて穴に落ちていってしまうんだけどぉ」

「ぎやぁああああああ!」

 ユーカの叫び声が居住区じゅうに響き渡る。

 やれやれ。先が思いやられるものだ。

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