エピローグ:兵どもが夢の跡
ひとまず俺たちは、倒した二人の魔女を拘束した。
二人を仲よく一つの縄で束ねて拘束しておいた。
「は、離せ! せめてとなりのやつと離して縛ってくれ!」
「そうだ! こんな負け犬と一緒なんか嫌だ!」
「そっちも負け犬じゃないか!」
二人は終始いがみ合い、睨み合っていた。
「プルー、お前がサバト様の魔王復活の仕事を引き受けなかったからこうなったんだぞ!」
「魔王復活の仕事なんか聞いてないぞ!」
「だからそれは伝書鳩で届けたではないか!」
「だからそんなものもらってない!」
としょうもないことで言いあう。そのしょうもないことによって俺たちは命の危機に瀕したのだが。
「大方、伝書鳩がどこかで不時着したとか、そういうオチじゃないのか?」
俺が言いあう二人に対しつぶやいてみた。
「そ、そうだ! たぶんそうだ! リュミエル! おまえの伝書鳩、老衰でもしていたんじゃないのか!」
「何を言うか! そんな伝書鳩で大切なサバト様の伝言を届けるわけがない! 私の血統書付きのハトちゃんを愚弄するのか!」
「何をおおおおお!」
「まーいいじゃないか。プルー、ぼっちのお前に友達ができたことだし」
「こ、こんなやつと友達になった覚えはない!」リュミエルが叫んだ。
そんな不毛な争いを、ずっと見ておくのも飽きたので、俺たちは偽の北の荒城を後にした。
北の荒城より北にある、丘へと登る。
丘を登っていると、ちょうど東の空から日がのぼってきた。
「うわあー! なかなかいい眺めじゃないですか! まるでオープンワールドのゲームをしているようです!」
その比喩はなんかおかしくないか、と突っ込みはせず、俺もユーカと共に朝日を眺める。
「ユーカ」
「ん? なんですか先輩」
「お前にはずっと言ってなかったな。あの事件の話のことを」
「先輩……」
俺が小学6年のときに巻き込まれた拉致事件。
その凄惨なる事件について、ユーカには何も言っていなかった。
なにも、言う必要がないと思っていた。
だが、今は事情が違う。この世界は、もしかしたら“あの男”のことが関係しているのかもしれないから。
俺の前に『コロビ』の幽霊が現れた。コロビはあの事件で死んだ人間だ。もしかしたら、俺たちをここへ引っ張ってきた人間も“あの事件”にかかわりのある人間かもしれない。
「ちょうどいい機会だから、あの事件のことを話してやる。あの『笛吹き男事件【パイドパイパー】』のことをな」
朝日はすでに山際を越えていた。




