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13.決闘裁判 其の参

 さてあとは3人だけだ。ここからはハイスピードで事を済ませようではないか。

「くっくっく。くぇーッケッケッケッケ!」

 ユーカのような下品な笑い声をあげるのは一人の男の剣士。

「我が名はケイン! 漆黒(しっこく)の剣士!」

 全身を黒い服で纏ったブラックな剣士が参上した。片方の目に着いている黒い布の眼帯はファッションなのかマジなのかわからん。

 黒い男は装飾過多な鞘の中に剣を収めている。

「お前に一つ告げておこう」と俺は戦う前に言う。

「な、何だへっぴり腰!」

「お前がその剣を引き抜いた時、俺の勝利が確定する」

「はぁ? なーにを言ってるんだよへっぴり腰。恐怖で頭がおかしくなっちまったのか」

「俺は極めて冷静だ。お前は戦う前から負けているんだ。つまり俺の不戦勝なんだ」

「何をふざけたことを……。へっぴり腰! お前をギッタンギッタンに切り刻んでやるぜぇ!」

「初め!」

 審判の合図とともに黒い服のヤツが剣を引き抜く。

「この俺の愛刀、黒い(ブラックタイガー)を喰らえぇええええ!」

 黒い服のヤツはこちらへと突っ込んでくる。が、男の進行は途中で止まる。

 黒い服のヤツは途端に体を曲げて、そして手から剣を落とす。そして手をわなわなとふるわせる。

「あ……ぁあ! 手がぁ! 手がぁああああ! き、貴様一体何をしたんだ!」

 見ると、黒い服のヤツの手が真っ赤に腫れ上がっていた。何かのアレルギー反応を示したように。

 まぁこれも俺の仕掛けた罠なんだけどよ。

「こ、これは、(うるし)かぁ! 漆ってあの食器とかに塗ったりするあの触ったらかゆくなるやつのことかぁ!」

「はてさて、いったい誰があんたの剣の柄に漆なんか塗ったんだろう」

「白々しいことを言いやがってぇ! なんてものを塗ってくれたんだぁ! ぎゃあああかゆいいいいい!」

 黒い服のやつはのたうちまわっていた。

 “漆黒(しっこく)”の剣士が“(うるし)”にかぶれるとは因果なものだな。

 これで5人目も圧勝。


「やい! トマリギトマル! 相手の剣の柄に漆を塗るなんて卑怯ではないか!」

 またも俺に抗議してくるシリウス大臣。

「でも、誰も俺があいつの柄に漆を塗っていたところを見ていなかったんでしょう?」

「くぅ……」

「くだらない言いがかりは止めてくださいね、大臣」

「言いがかりは……お前の方だ……。今度こそ、今度こそ……!」

 くちびるかみしめる豚、いや大臣の姿が。どうやらやっこさん、追いつめられているようですよ。


 そして迎える第4戦目となったのだが。

 なぜか突然休憩タイムとなる。

 家来と大臣の姿が闘技場を見回しても見えない。どこか人目のつかないところで作戦会議をしているんだろうか。

「トマルさん、すごいですね。もう5人も倒して、残るはあと二人ですよ……」

 笑顔で話している風のファナさんだったけど、どうやら心中は複雑怪奇でどことなく言葉尻に影が見える。

「ファナさん、あなたはお優しい人だ。でも、無理をしてはいけませんよ」

「トマルさん……」

 俺はファナさんを近くの長いすへと坐らせ落ち着かせる。

「トマルさん、確かに私、複雑な気持ちなんですけど。でも、それでもトマルさんは正しいことをしていると思うから……。ちっとも苦しい思いにならないんです」

「俺はちっとも正しいことなんかしてませんよ。ただ自分の欲のために、汚い手を使って、破れかぶれで、戦わずして勝っているだけですから」

「じぃーっ」

 俺とファナさんの会話に、光線のような視線を送って入ってくるユーカ。

「先輩! そもそもそこの人は大臣のムスメなんでしょう! つまり敵なんでしょう! なんでそんな人と仲良くなってるんですか!」

「まーそりゃそうだけど。ファナさん親切だし、いい人だし。だいたい大臣の養女だから敵というのは短絡的な考え方だよ。ファナさんはファナさんだ」

 それを聞いてか、ファナさんはまた「トマルさん……」とつぶやく。

 そのとき、からんからんと鐘の音がした。どうやら休憩時間は終ったようだ。

「とにかくユーカ。待ってろよ。あと二人だけだから」

「いけいけ先輩! ふぁいとぉ!」

 俺は戦闘ステージへと歩いていく。

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