出会い
登場人物の説明は本編で☆
アバウトですみません
「ッぐ…」
さっき撃たれた傷口から血が止まらない。なんとかとどめを刺されないように逃げ出したものの見知らぬ森に来てしまった。
救援は絶望的だし逃げ出した戦士に用はないだろう。でももうこんな戦争に参加しなくていいのなら死ねて嬉しかった。
それほどまでにこの戦争は狂っていると思う。だだ血と煙りが上がり続ける日本。昔の姿は跡形もない。
きっと俺が生き残れたのはたまたま仲間が壁になり銃撃が一発ですんだだけの話でもう一回は無い。ならば苦痛に堪え戦場に戻るのはいい手段とは思えない。
傷口を抑えるのをやめ身体に力を入れるのもやめる。霞みがかった頭も考えるのを放棄した。ゆっくりと静かにしかし確実に迫る睡魔と徒労感が身体を蝕み暖かい体液が地面に広がる。この先に待ち受けるのは『死』なのに恐怖など微塵も感じなかった。
「人生これまでか…つまらない一生だったなぁ…悔いは無いけど」
急激に視界が白くなる。ずきずきと傷口から血が溢れるのをただ感じる。気持ち悪い。まるで闇に突き落とされたような睡魔が襲う。面倒になって意識を手放そうとしたとき。
「血の匂いがすると思って来てみたら…倒れてる人がいるわ?」
凛とした女性の声が響いた。軍人さんかしらと呟いている。顔を上げるのも面倒だったので意思表示はぜずことを見守る。
「こんな山奥に何の用かしら…私やっと抜け出して来たからあんまり厄介事に首突っ込みたくないのよねぇ…」
ため息紛いの呼吸がちょっと辛かったが次の言葉で何もかも吹っ飛んだ。
俺に近づきながら、でも…と付け足す。
「見捨てられないわ?」
そう言って俺に呼び掛ける。
「大丈夫ですか?意識ありますか?」
「…あぁ。なんとか…」
嬉しさがこみ上がり俺は生きたかったのかと一人驚いた。ついさっき諦めたはずなのにつくづく生物の生命力には驚かされる。
彼女は長い黒髪に白い肌。美しい容姿と豪華な着物を着ていた。明らかになんか間違ってる。心配そうに覗き込む彼女はだいたい15・6といったところか。ちょっと待て俺にはロリコンの趣味は無い。俺は21だ!
顔を赤らめる暇も無く傷口見ますよといいながら服を捲りあげ傷口を見て彼女は息を呑んだ。
「これ…は…」
俺にはわからないが結構やばいのかな?と考えた。しかし彼女は焦った様子もなく何かブツブツと呟きはじめた。その刹那俺の視界が青白い光に包まれた。
すると途端に痛みがすぅ…と…消えなかった。
「やっぱり…」
何神妙な顔して…
「っ…」
さっきは彼女の登場で頭がはっきりしたがもう時間がないようだ。はっきり言ってやばい。血が…足りない。…もう彼女の姿がぼやけてしまって見えない。
「着物…汚して…すまな…」
俺の声は、だいぶ掠れてしまっていた。聞こえたかな?心配するところ間違ってんだろと自嘲しながら答えを待つ。
心配の必要は要らなかったようで彼女の声が耳に届く。
「何それ!やだ!!死なないで…何か手があるはず!…何…か?血…血があるじゃない!みんな深手を負うと私の血を呑んでた。だったら…」
なんで見知らぬ俺にそんなに必死になるんだ?そう思ったのもつかの間彼女の唇が俺に押し当てられていた。びっくりする余裕はない。楽しむ余裕もない…残念ながら。少し開いた口から生暖かい物が入れられた。まるで飲めと言われていたみたいだったのでおとなしく飲みこんだ瞬間…ドクンと身体が急激に変化した。何かが変わった。それは何かわからないが確かに…変わってしまった。
「う゛ぁああぁあああ!!!」
悲鳴と言うにはちょっと野太いな。雄叫びと言った方がいいかもしれない。ただ体中をはい回るモノが俺を狂わせる。ジタバタと無茶苦茶に動かし喉を掻きむしる。血が溢れようが関係ない。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死にたい。死んだ方がましだと思ってしまうほどに苦しかった。彼女は怯えた様子で涙目で俺を見ていた。彼女に悪気はないようだ。
「ぐぁああぁあああ!!!!!!」
もう一度襲った衝撃的なモノに…俺は意識を手放した。
「……。あの…っ…もしもし…?」
私は何をしてしまったのだろう。死んでしまったのだろうか。急いで軍人さんに駆け寄り脈をとると生きていた。傷口も跡形も無くなっている。ただ…変わってしまったことがある。
「…………!!!ごめ…ごめん…な…さい……っ!!」
私は目を逸らし涙を零した。許されない罪を犯したことに気がついたから――。
さて
どうなるのやら…
知りたい?
知りたくないですよね…