第九話
「南奈ちゃん。これから、俺と友達、宜しく。」
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私は、舞い上がってしまう。
…こ、こんなに有名な人と、友達になれるなんて…。
他の人だったら、こんな風に舞い上がっちゃうんだろうけど。
私にとっては、友達が一人。出来たのと、同じ嬉しさ。
他の人と接するのと、変わらないよ。
…それに…
名前で呼んでくれたっ!
嬉しい。
光輝君から、私の名前を聞くと、違って聞こえる。
もっと、可愛く聞こえる。
あんなに格好良くて、優しくて、歌がうまくて。
皆が、惹かれるのも、分かる気がする。
私だけに、その声とその顔を見せてくれないかな、って我が儘だよね。
年上なのに、可愛い一面がある光輝君。
皆に、見せたくないよ。
「…南奈ちゃん。南奈ちゃんの番だよ?」
「…えっ。」
「ほら、学校。」
「え、えと、ですね……。私、小さい頃から長期にわたって渡米していたんです。
それで、向こうの飛び級制度を利用して、大学まで卒業したんです。
ハーバード大学……でしたっけ。それで、中学、行ってないんです。
一度した勉強を…もう一度は一寸……。」
…ほら。やっぱり。引くんだよね、皆。光輝君も、だよね。
言われ続けてきたんだ。秀才だ、とか、天才だ、とか。
でもね、友達が欲しくて。嘘ばっか、吐いてきた。
だからかな。誰も、逆に近寄らなくなっていく。
只、友達が欲しいだけなのに。
「…俺、一寸帰るな。ごめん。」
そう言って、光輝君は、部屋を出て行った。
…光輝君も、なの…?私は、望みすぎなの…?