第六話。
「えっ!?…聞いていたんだ…」
彼は、驚いていた。
私は我慢できずに、目を瞑った。
目の前に、赤くなった彼が見えるようで、笑ってしまった。
「…クスクスッ」
「わ、笑わないでよ…」
やっぱり、明るい声だ。可愛いとも、思える。
私は、ゆっくりと目を開けた。
まだ、眩しかった。けど、彼は見えた。
キャップは取っていて、少しツンツンした茶髪。
整った顔立ちは、文句の付けようが無いほど、綺麗だった。
少し吊り上がり気味の目も、薄い唇も、スッと通った鼻筋も。
耳には、ピアスを三つしていて、似合っていた。
格好、良かった。
「…良かった、無事で」
彼は、優しく微笑んだ。
其れは、心の底から笑ってくれていた。
歌声のトキの、憂いは無かった。
「助けて、くれたんですよね。ありがとうございました」
私は寝たまま、礼を言った。
私は其れに気付いて慌てて起き上がる。
…失礼すぎるよ、私。
「あっ。止めた方が…」
彼は、そう言うけど……。
そう思っていると………
ズキンッッ
頭に、響いた。
後頭部を殴られるようで。
脳が、締め付けられるようで。
私は後ろに倒れ込んだ。
「うわっ。危ないよ」
彼は私を受け止めてくれた。
頭を、抱えてくれた。
「……あっ。すいません…」
「すいません、か…。ねぇ、危なかったんだってよ?え、っと……」
私は、自己紹介をしていなかった事に気付いて、慌てて名前を言った。
「う、『海原 南奈』です」
ごめんなさい!!
色々ゴタゴタありまして……。
私の、片思い中の男子がですね…引っ越すらしくて……。
精神的に落ち込んでいて無理でした……。
っと、こんなの言い訳ですね。
今日は二話連続で投稿いたします!
こんな私ですが、今後とも宜しくお願いします!m(— —)m