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無色は何色にも染まる

初投稿です。よろしくお願いします

効率厨こうりつちゅう


──物事における効率を過剰に信仰し、無駄という概念そのものに嫌悪感を抱く気性のこと。



世界の不幸の大半は、“無駄”から生まれる。


無駄遣いをしたせいで、必要なものが足りなくなる。

無駄な一言で、人間関係が壊れる。

無駄な選択をして、取り返しのつかない何かを失う。


……実に馬鹿らしい。


無駄さえなければ、人生はもっと楽で、もっと幸福だ。


朝、目覚める。コーヒーを淹れ、優雅に朝食を取り、歯を磨き、服を整え、家を出る。


学校や職場では、仲間と談笑し、ほどほどに成果を出す。


軽い達成感を胸に、定時で帰路につく。


風呂でキレイに汚れを落とし、清潔な身体で布団に入る。そして翌朝、快適に目覚める。


完璧だ。

無駄が一切存在しない、理想的な人生。


──なのに。


なぜか人間は、それができないらしい。


朝起きて、まずスマホ。気づけば遅刻。

授業では居眠りし、叱られる。

帰宅後もスマホとテレビに時間を吸われ、気づけば深夜。


当然、翌朝は起きられない。


「本当に馬鹿らしいと思わないかい?」


『名前を教えてください』


……どうやら、僕の崇高な演説も、機械相手には通じなかったらしい。僕は肩をすくめてみせる。


「やれやれ。何も感じないのかい?君たちみたいな“機械”こそ、無駄を嫌うべき存在だろうに」


『名前を教えてください』


「……」


仕方ない。


僕は「あ」と入力した。


これ以上ないほど無駄のない名前だ。


『──“あ”様。ようこそ、Astral Link Onlineへ』


機械の声とともに、派手なエフェクトが走った。

豪勢なオープニングが始まる。


『この世界はかつて─』


「スキップで」


『─はい?』


「スキップで」


僕は当然のように言い切った。


僕はゲームをしに来たのであって、世界を救いに来たわけでも、お姫様を助けに来たわけでもない。


それは“無駄”だ。


ゲームの世界は人間が作ったものだ。

つまり危機も悲劇も、すべて“演出”。


それをまた人間が必死に救う?

実に“無駄”だ。

僕は僕のやりたいようにプレイする。


「というわけで、スキップだ」


『……オープニングをスキップしました』


ふふん。いい判断だ。

この小さな機械にも、僕の思想が理解できたらしい。


もし理解できていなければ、さっきの長話が完全に“無駄”になるところだった。危ない危ない。


「次に進んでくれるかな?」


『……かしこまりました。次に、種族をお選びください』


半透明のウィンドウが浮かび上がる。


人間、エルフ、オーガ、ドワーフ……。


「説明をお願いしてもいいかな?」


『かしこまりました。まず人間が──』


「あ、いいや。読むほうが早い」


『……』


無駄な説明は未然に遮断する。効率は命だ。


ふむ。種族ごとに得意不得意がある、と。


オーガは耐久と攻撃が高い代わりに魔法が苦手。

エルフはその逆。


どれも一長一短──。


……いや、それはない。


ゲームには必ず“環境”というものがある。必然的に、選ぶべき種族が存在するはずだ。


知らないけど。


説明書、無駄だと思って捨てたし。


……。


「……いや、問題ない」


僕は機械に向かって、チッチッチと指を振ってみせる。


『?』


制限は後から外せない。

だが、強みは後から足せる。


ならば──


「『人間』だ」


『次は職業を──』


「読むほうが早い」


『……』


しー、と指を立てる。


ていうかさっきからうるさいな。

僕は音声設定を0にした。効率は命だ。


「職業か……」


スクロールする指が止まる。


……多すぎない?


『メイド』?


誰がやるんだそんなもの。


あ、職業は後から変更可能……。

ふーん。


ならば答えは一つ。


「『無職』で」


ニートではない。

“無色”だ。


どんな色にも染まれる、最も効率的な状態。


続くステータス設定も、全て均等に振る。

偏りは、すなわちリスクだ。リスクは非効率を生む。


「よし、終わりだ」


僕は機械を見る。


「お世話になったね」


『     』


「……ん?」


音がしない。


ああ、そうか。


僕は音量を戻した。


「まったく、ちゃんと喋ってくれ。なんだい?」


『……申し訳ございません。最後に“初期スキル”の選択を行います』


「初期スキル?」


『各プレイヤーにはスキルポイントが100付与されます』


『既存スキルの取得、または独自スキルの作成が可能です』


『初期に取得したスキルは成長速度が上昇します』


なるほど。


「じゃあ、呼吸するだけで半径2km以内の生命体が即死するスキルで」


『そのようなスキルは作成できません』


却下された。


『強力すぎるもの、または想定外のシナジーを持つものは制限されます』


期待させておいて酷いやつだ。


僕は設定を開き、音声のピッチを最大まで上げた。


『マタ、スキルガキョウリョクニナレバ──』


甲高い声が響く。


……まずい、面白すぎる。


僕はすぐに元に戻した。


「なるほどね。ありがとう」


さて、スキルか。


既存のものを選ぶのは面白くない。

なら作成するしかないが、何が強いか分からない。


「こういう時は──ネットだ」


検索。


【お前らのスキルを教えてくれ!Astral Link Online】


一番上をタップ。




1:風吹けば名無し

ワイのスキルが最強や

【ゴッドドラゴンブレス】最強のドラゴンを召喚して全てを焼却する

必要ポイント25000000


2:風吹けば名無し

作れねえ定期


3:風吹けば名無し

ワイのも見てくれ

【舞踊会の神】超綺麗に踊れる

必要ポイント65


4:風吹けば名無し

ゴミで草


5:風吹けば名無し

戦闘中に踊り出すおっさん想像したらオモロい


6:風吹けば名無し

利敵やんけ


7:風吹けば名無し

【絶対遅刻回避】どんな状況でも遅刻しない

ポイント40


8:風吹けば名無し

社会人専用スキルやめろ


9︰風吹けば名無し

80ポイント払うから使わせてくれ……


10:風吹けば名無し

【全知】なんでも分かる

ポイント9999999


11:風吹けば名無し

なんで【ゴッドドラゴンブレス】より安いんだよ


12︰風吹けば名無し

ドラゴン最強!ドラゴン最強!



僕は無言でサイトを閉じた。

……参考にならない。


が、考えはまとまった。


「じゃあ、作成するよ」


『かしこまりました。どのようなスキルにしますか?』


「そうだね、スキル名は─【再構築(リコンフィグ)】だ」

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