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閑話No.002 バタフライ・エフェクト

ある日の世界仕様決定部のオフィスである。書類を整理していたレリエルが何かに気づいたように手を止めた。


「ねえ、アブディエル、この仕様書なんだけどさぁ」


彼女の手には先日神のもとから返ってきた仕様書No.005があった。


「サンダルフォンさんのやつじゃないか。それがどうしたんだ?」

「これって却下されたやつよね?」

「却下印が捺されてるならそうなんじゃないのか?」

「これに似たような考え方が人間の間にあるのよ。バタフライ・エフェクトってやつ。」

「何?ブラジルの一匹の蝶の羽ばたきがアメリカで竜巻を起こす…だと?サンダルフォンさんの仕様書そのまんまじゃないか」

「この仕様、却下されてて実装されてないはずなのに人間の間でこんな仮説が立ってるのよ。一応、学術的なやつでもあるみたいだけど。」

「サンダルフォンさんが却下案を勝手に実装するはずもないが…調べてみよう」


そう言ったアブディエルは数分自身の端末を確認する。


「そういう仕様が実装された記録はないぞ。」

「んじゃあ、あたしたちの仕様と関係なく人間たちはこう考えてるってわけか。ウケる〜」


そう言いながらも彼女の表情は変わらない。


「変な偶然もあるもんなんだな。後で部長に報告して付記をつけてもらおう。」

「人間って面白いのねぇ。日本には『風が吹けば桶屋が儲かる』ってことわざもあるらしいわ。これも似たようなものかしら。」

「一応これに準ずる仕様を提出して、我々の管理化に置くことも考えるか。」


二人がそう話していると、席を外していたメタトロンが帰ってきた。

二人は事の経緯を説明する。


「へえ、面白いこともあるもんだね。サンダルフォンには伝えとくよ。でもな、うちできたばっかだからこういうときのためのマニュアルってないんだよなぁ。」

「良ければ自分が代替案を出して仕様だったことにもできますが」


アブディエルの申し出に対して、メタトロンは首を振る。


「うーん、多分神は放置っておっしゃるだろうから、今は何もしなくていいよ。神にはこっちで聞いとくから。」

「そんな適当でいいんですか?」

「まあ、神も結構適当なノリでこの部署を作られたしね。まあ君たちも肩の力を抜いて働くといいよ。」

「ウケる〜。肩の力を抜くってアブディエルが一番できないことじゃない?」

「うぐ……」


図星のようである。


「まあ真面目なのもいいことだし、別に変える必要はないけどね。あ、次の仕事に行かなきゃなんだった。じゃあ、その件は僕が持っとくから。まあなんとなく頑張って」


そう言うとメタトロンはまたオフィスを去っていってしまった。


「神も適当だけど、部長も大概よね〜」


というレリエルの呟きだけが残り、残った二人も次第に仕事の続きへと向かった。


後日、バタフライ・エフェクトの件に関して、神曰く「放置」とのことだった。

世界仕様決定部は本日も適当である。

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