閑話No.003 議題のない会議
「えー、それでは第一回世界仕様決定部会議をはじめたいと思います。」
珍しく六人の天使が全員集まった世界仕様決定部のオフィスで、前に立ったハニエルが宣言した。しかし、それに続く言葉がなく、戸惑っているようだ。そして訪れる沈黙。
「……議題は、なんなんだ?」
耐えかねたアブディエルが言葉を発した。
「それが、僕もよくわかんないんですよ。神が『会議とか開いてみてよ』とこの間おっしゃったから開催してるだけで。議題とかどうすればいいのか聞いてみたら『いるの、それ?』と言われてしまって……。」
全員があー、と納得とも諦めともつかない声を漏らす。
「天使ってそもそも個人主義だからね、僕もこうやって会議って形で集まったのは初めてかもしれない。同じような職務の天使同士での集まりとかはあるけど、世界仕様決定部の仕事は個人で完結するしね。」
メタトロンがフォローを入れる。
「まあ、会議とは名ばかりの、親睦を深めようって会だと思っていただければ。六人全員がこうやって集まる機会も少ないですし。」
「まあそうね〜。お互い顔と名前は知ってても天使としての職務が違うと喋る機会がないものね〜。」
そこにサマエルが閃いた顔で声を上げる。
「話すことないなら議題を決める会議ってことにしたらどうすか?」
「人間界で無駄な会議が無くならない理由が今わかった気がするな……。」
キラキラした顔のサマエルの発言に対してアブディエルは少し頭を抱えた。
「そういう会議についての仕様とか考えてみても面白そうですけどね。」
「無駄な会議が減るような仕様か……。いいかもしれんな。」
無駄な会議に対して何が生じるのか、どんな会議が対象なのか、など、アブディエルとハニエル、そこにメタトロンも加わってようやく会議らしい会話が始まった。
一方、それに興味なさげなレリエルは、どこからともなく取り出した異様に種類の多い菓子を持って、サンダルフォンさん、サマエル君、お菓子食べる?と言ってメタトロンたちを尻目におやつタイムを始めてしまった。
*****
数十分後。
「ではこんな感じで仕様書作ってみようと思います。」
と仕様書を任されたらしいハニエルが言い、メタトロンが
「それじゃあ今日はこの辺にしようか。皆忙しいだろうし。」
と声を上げた。
「あら、もう終わり?」
とレリエル。
「会議って楽しいんすね!またやりたいっす!」
「お前はお菓子食べてただけだろ……。」
おやつが美味しかったらしいサマエルに、呆れたようなハニエル。
「まあでも有益な時間ではあった。また機会があったらこういう会を設けてもいいんじゃないか。」
「神はどういう会を想定してらしたのかしらね〜。」
満足げなアブディエルに、掴みどころのないレリエル。
そしてそんな彼らを眺めるメタトロンとサンダルフォン。
「それでは、次回は未定ですが、第一回世界仕様決定部会議を終わります。」
一応司会という役割を忘れていないハニエルが終わりを宣言したことで、世界仕様決定部の議題のない会議はなんとなく始まり、なんとなく終わった。
本日夜の投稿はお休みさせていただきます。




