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中二病を演じる最強騎士は、氷令嬢と偽りの恋人になる  作者: すなぎも


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9 宣告≪ジャッジメント・コール≫

 演習前の休憩時間。

 中庭の片隅にある古びた石のベンチで、俺は呼び出し主を待っていた。


「悪かったわね。わざわざ時間とらせて」


 現れたのは白と青の騎士服に身を包んだヴィオラ・グレイシャ。

 日差しの下、蒼銀の髪が風に揺れていた。


「今更だ。偽装恋人をやっているのに変なことを言う」


「恋人だとしても、呼び出したらお礼をするものでしょ?」


「……さあな」


 経験がないからそんなことは知らない。


「セレナが何か失礼なことをしたんじゃないかと思って」


「気にするな。少し遊んでやっただけだ。俺にとっては造作もないこと」


 今朝はだいぶ言い過ぎた気もするし、昨日の件は許すとしよう。


 ヴィオラはベンチの隣に腰かけると、少し間を置いて言った。


「セレナ、なにか言ってた?」


「お嬢様がこんな変な奴のこと好きになるはずがないと怒ってたよ。やれやれ、俺は傷ついた」


「冗談でしょ?」


「当然だ。この俺、狂人の(ルナティックス)運命(・フェイト)を背負いし闇に生(ウォーカー・)きる存在(イン・シャドウ)を傷つけられたら大したものさ」


 少しイラっとはしちゃったけどね。


「セレナには説明したんだけど、全然納得してもらえなくて。困ったものね」


 それはまあ、俺みたいな奴のこと好きになったなんて第三王子の許嫁が言い出しても信じてもらえるわけがない。


 俺だって信じないもん。なんなら周りにも信じないでくれって祈ってるからね。


「で、あなたは"本当のこと"を話さなかったのね?」


「適当に言い負かしておいた。令嬢の従事者の乙女(サーヴァントメイデン)と言えど、あの程度かと失望したよ。ヴィオラへの忠誠心は大したものだったがな」


「ふふっ」


 俺の言葉に、なぜかヴィオラは静かに微笑む。


「なにがおかしい?」


「いえ。あなたは狂人の(ルナティックス)運命(・フェイト)を背負いし闇に生(ウォーカー・)きる存在(イン・シャドウ)の目を欺く存在だものね」


 なんかバカにされている気がしないでもないが。


「あなたの言う通り、セレナは私を信じてくれているの」


 へぇー。そうなのか。

 ……っていうか、なんだこの優しい語り口調は。


「それは私も感じてる。だって、私たちは小さい頃から一緒に育ったから」


 はっはーん。さてはヴィオラ、センチメンタルになってるな?

 感傷的な雰囲気を醸し出しをってからに。


「迷っているのか?セレナに俺達の関係を打ち明けるかどうか」


 問いかけに、返事はない。

 付き人が主を「ヴィオラちゃん」と呼んでいたのだ。

 本来の主従関係ではありえないこと。


 だからこそ、嘘を吐いていることに胸を痛ませているのか。

 彼女たちの本当の関係性は知らないが、だいたいは察せる。

 だが、このヴィオラ・グレイシャという女、よくわからん。


 第三王子の許嫁でありながら、それを拒み俺と偽装恋人を始めた。

 それなのに、王子を前にしたら恐怖に怯え、付き人に本当の事を打ち明けようかとセンチメンタルになったり


 事の大きさを理解できていないのか?

 王子を敵に回すかもしれないという重大さに。


 ヴィオラは少し考えた後。


「……セレナに本当のことを話すつもりはない。けど、今まであの子に隠し事なんてしたことなかったから。少し弱気になってるかも知れないわね」


 彼女は遠くを見ながら儚げに笑う。


「変よね。王子との婚姻を破棄すようとしてるのに、今更こんなことで悩んでるなんて。自分だって小さいって思ってる。けど」


 と、続きの言葉は出てこない。

 暫くの沈黙が流れ。


「シュヴァ。私とデートしてくれない?」


「なぜそうなった?」


「なんとなくだけど、あなと一緒に遊んだら元気が出るかなって」


「俺と一緒にいて元気が出る?正気か?」


 自分で言うのもなんだが、俺なんかといて元気が出るとは思えない。

 言ってる意味がわからな過ぎて疲れるか、あまりのストレスで発狂するかだ。

 まあでも発狂すれば元気は出るか?


「いいでしょ?私達、恋人なんだし」


偽りの(フォビドゥン)誓約(ギアス)。偽物の恋人だがな」


「それでもよ」


 こいつ、偽装恋人になった時のように脅してくればいいのに。

 なぜそれをしない?


「ね?お願いだから。1日ぐらいいいじゃない?」


「……俺はお前のことがいまいちわからん」


「お互い様よ。私だってあなたのことわかってないもの」


「それでよく偽装恋人をお願いしてきたものだ」


「それは、その……。直観っていうやつ?」


「なんだそれは」


「あなたで言うところの第六感(イクスサイト)っていうやつよ」


 第六感(イクスサイト)

 なにを言っているかはわからんが、ようは勘が働いたのか。


「この私、冷徹(エンプレス・オブ)(・ザ・)女帝サイレント・グレイシャが命ずるわ。我が恋人(セイントパートナー)闇に生(ウォーカー・)きる存在(イン・シャドウ)よ、偽りの(フォビドゥン)誓約(ギアス)により(ホーリ)(ー・ミ)(ティング)を受けなさい!」


 バっ!と手をクロスさせていきなり変なポーズを取るヴィオラ。

 こ、こいつ。いきなりそんなことするなんてそうとう疲れてると見える。


「さあ、この神の選択(ヘヴンズ・チョイス)を受けなさい!運命(ザ・フェイテ)共同体(ッド・フェローシップ)観測者(ザ・ウォッチャー)が嫉妬するような(ホーリ)(ー・ミ)(ティング)するのよ!」


 んー……重症。

 重症ではあるが、ここまでされるとである。


「致し方なし。偽りの(フォビドゥン)誓約(ギアス)と言えど、誓約(ギアス)ではある。(ホーリ)(ー・ミ)(ティング)恋人(セイントパートナー)が望むのであれば、受けるのが道理」


「えっ?本当にいいの?」


「そこで引くのはずるくない?」


「う、うそ!うそようそ!デートの誘いは本当!」


 なんだよあぶねえ。

 モテない奴に罰ゲームで告ったらOKされてきまずい展開になった感じと同じかよ。

 あぶねえ。ショックで危うく自殺するところだった。本当にあぶねえ。


「まさかシュヴァって……。闇に生(ウォーカー・)きる存在(イン・シャドウ)よ!私の僕になりなさい!」


「いや、別にその喋り方ならなんでも言うこと聞くとか。そんなんじゃないから」


「あっ、あはは。そ、そうよね。冗談よ、冗談。本当に軽い気持ちで言ってみただけだから」


 なにが軽い気持ちだよ。

 そんな軽い気持ちで僕にされてたまるか。

 どんだけ俺を変な奴だと思ってるんだ。


「まったく。本当によくわからん奴だ」


「だからそれはお互い様だって」


 まあ、それはそうか。

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