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中二病を演じる最強騎士は、氷令嬢と偽りの恋人になる  作者: すなぎも


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25 微かな断片《リトル・シャード》

 なぜ第三王子であるクラウス・ザルヴァインが没落した田舎貴族であるグレイシャ家のヴィオラに婚姻を申し込んできたのか。


 表向きでは『田舎で元気に過ごす無垢だが気品のあるヴィオラに一目惚れした』ということになっていたはず。


「クラウス様は私に氷獄の支配者の力が宿っているのを知っているわ」


「そうか」


「驚かないのね」


「なんとなく予想は付いてたからな。ヴィオラがクラウスに言ったのか?」


 問いに、首を横に振り思い出すかのように遠くを見つめるヴィオラ。


「小さい頃、王都で開かれたパーティで私が犬を氷漬けにしちゃったことがあったの。迷子になった時、興奮状態だった犬に襲われそうになって、それで。それをたまたま見ていたクラウス様が見ていたの。そのあと、グレイシャ家のことを調査して、氷獄の支配者との関係性に気が付いた。きっとそのときから、全て知っていたんだと思う」


「随分まえから目を付けられてたんだな」


「ええ。後から分かったことだけど、私が凍らせてしまった犬は当時の王が可愛がっていたペットだった。それでも騒ぎにならなかったのは、クラウス様が誤魔化したから」


 クラウスの側近が頭を働かせたか、或いは既にクラウスが切れ者だったのか。

 どちらにしてもヴィオラの力に興味を持って騒ぎにしなかった。

 そして後々、グレイシャ家の事を調べて氷獄の支配者に辿り着いたか。


「他に力を見られたことは?」


「小さい頃に何度かは。理由はわからないけれど、クラウス様が近くにいると魔力が疼き出すの。今では抑えることが出来るけど、幼い頃は全然だったから」


「ヴィオラの実家は田舎だろ?なんでそんなに会う機会があったんだ」


「パーティーの後、何度か視察という名目で来ていたのよ。子供同士だから一緒に時間を潰してて……。それで『一目惚れ』っていう表向きの理由が作られた」


「ヴィオラの魔力が本物か確かめに来てたってわけだ。となると、気付かれているのは間違いなさそうだな」


 ヴィオラの説明。

 夜の学園でのクラウスの態度。

 図書館での件もそう。王の起源には認識阻害魔法がかけられていた。

 あれは俺が闘技場で戦った男が使っていた魔力と同じものを感じた。


 それらから察するに、ヴィオラの魔力の性質に気が付いているのは間違いない。

 そしてクラウスは、ヴィオラに氷獄の支配者が宿っていることを隠そうとしている。


「しかしなんでクラウスの前だと疼くんだ?」


「それは、わからないわ。……ごめんなさい」


「謝る必要はない。伝承通りなら氷獄の支配者は王族に封印されてるし。そこらへんが関係しているのかもな」


 ここまでは辻褄が合う。

 だが、問題はここからだ。


「なんでクラウスがヴィオラの力を狙ってるんだ?」


 クラウスの地位は十分なもの。第三王子にして王都騎士団の特別部隊の隊長。

 そのうえ民からの信頼は厚く、イケメンでヴィオラという婚約者がいる。

 なんの不便もないように見えるが。


「わからない。氷獄の支配者のことは私にも聞いてこないから」


 果たしてその力を手に入れてなにがしたいのか。

 偽りの笑み(グリニエ・マスク)を浮かべる奴にいい奴はいないという俺理論でいくと、ろくなことには使わなそうだけど。


「けど、なにかに利用しようとしているのは間違いないわ」


「というと?」


「クラウス様が側近と話しているところを聞いたことがあるの。私の力が少しずつ育っていること。まだ手を掛けるのは早いこと。そして、必ず手に入れる。その力を使って王になる。そう言っていたわ」


「王になる?氷獄の支配者の力で?」


「なんで私の力が王になるのに必要かはわからないわ。けど、そう言っていたのは確かよ」


 クラウスは第三王子。

 王の決め方は知らないが、花嫁の力が強いから王になる!

 なんて決め方はさすがにしてないはず。

 それこそクラウス自らが力を付けてこその王だろうに。


「ヴィオラはクラウスに頼まれたら、その力を悪用するか?」


「絶対にしないわ。この力は極力使いたくないもの」


 そう答えてくれるという予想は付いてた。

 だからヴィオラは魔力制御を必死に練習しているわけで、だから俺と付き合ったことにしてクラウスとの婚約を遅らせている。


 クラウスとの婚約までに、氷獄の支配者の力を自身で使いこなせる様に。


「今のところ理由はわからんが、ヴィオラがその力を使い熟せれば問題ないか」


「私もそう思う。私がこの力を使い熟せればなんの問題もないって。だから」


 ヴィオラは真剣な瞳でこちらを見据えた。


「改めてお願いするわ。シュヴァ、私を鍛えてほしいの。この力を使い熟せるように」


「ああ。ここまで聞いたんだ、協力するよ」


 手を差し出すと、ヴィオラがその手を取る。

 俺に比べて随分と小さく華奢な手だが、皮の硬さから努力の跡が感じられる。

 魔力制御に剣の扱いが必要なのかは疑問なところだが。

 彼女が頑張っているということは伝わってきた。

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