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明日はいりますか?  作者: リル
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第二話 謎の力

数日間の間、洞窟の中で暮らした私達は食料や雑貨を集めていた。

 十分な食料と雑貨を集めた私達は、外からの叫び声がしない事を確認する。

 静かに洞窟の入口まで進み、飛竜がいない事を確認すると森まで走り抜けた。

 数日間で少年と考えた作戦。

 それは〝罠〟を使う作戦だ。

 戦闘は避けるが、普通に逃げても飛竜に見つかる可能性が高い。

 そこで少年が考えたのが飛竜を罠で引き寄せる作戦だ。

 奴らは魔力に敏感なのか、魔法に寄ってくる習性がある。

 そこで洞窟の入口に魔法陣をつくり、十分な距離を取った時に発動させる。


 「もう十分離れたんじゃない?」

 「そうね、そろそろ発動しましょうか」


 魔法陣を起動し、結晶の塊を創る。

 魔力の動き敏感な飛竜達は一斉に結晶へ向かった。

 これでもし火龍が動いても、先に飛竜に力を振るうだろう。

 そう思い、私と少年は森を駆け抜け、荒野に出ていた。

 森を抜け、山から離れた私達は安堵し、膝に手をついてその場で少しの休息をとっていた。

 突然、雲が割れ、目の前に赤い巨大な龍が降りてきた。

 火龍。

 何が起こったか理解が追いついていない少年を抱え、急いで近くの岩陰に隠れる。

 見れば先ほどまで私達がいた場所が炎に包まれていた。

 怯えている少年を岩陰に隠し、隙をみて逃げろと伝えると火龍の前にでる。

 戦って勝てるとは思わないが、少年を連れて逃げれば二人仲良く焼かれるのは目に見えている。

 いい感じに時間稼ぎをして、結晶で視界を塞いで逃げよう。


 「程々にがんばろうかな」


 そう呟くと、私は〝結晶〟の魔法の準備をしていた。

 今までにない大規模の魔法。

 ブレスは幾重もの結晶の壁で塞ぎ、魔力の制御を終わらせる。


 《〝結晶魔法〟シャーレル》


 黒い結晶の刃を五本。魔力を動力とした高速の動きで龍を刻む。

 私が操作することができ、最後に龍を貫かさせた。

 大魔法の一種。

 確かな手応えを確信したのだが、視線の先には翼と体をわずかに傷ついた火龍だった。

 火龍は怒りの表情を浮かべ、私にその鋭利な爪を振り下ろした。

 呆然としていた私の前に小さな影が見えた。

 見れば少年が手を広げ、立っていた。

 そのまま龍の爪に体を貫かれ、少年から血が吹き出る。

 そのまま私に倒れかかった。


 「ここまで……守られてばっかりだったから、少しは、役に立てたかなぁ……」

 「え?」


 私の胸にいる少年は静かにその動きを止めていた。

 私がどこを触ろうと、少年は動かない。

 私が殺してきたたくさんの人と同じように。少年は私に倒れていた。

 理解が追いつかなかった。短いとはいえ、少しでも心を許した人が死んだことが。

 そんな私を意に介す事も無く、火龍は再びその赤黒い爪を無慈悲に私に向けて振り下ろす。

 私にはそれを防ぐ力も気力も無かった筈だ。

 だが――――

 青と白の光の柱が、私と少年を守った。

 少女の瞳と髪は蒼銀となり、静かに少年を抱き上げると、右手を少年の胸に当てる。

 少年の体は再生し、欠損した部位も元に戻っていた。

 それはまさに神の奇跡。強力な力を感じた火龍は少女にブレスを放つ。

 少女は左手を向けると、ブレスをその蒼銀の魔力だけで防ぐ。

 そのまま左手を掲げると、空に光が現れた。

 一つや二つではなく、無数の光。龍はへと向かい堕ちてきた。

 それは蒼銀の結晶。

 無数の結晶が龍を貫くと、けたたましい叫びを上げる。

 翼に大きな傷を負った火龍は、こちらを睨むと、飛び去っていった。


 「私、生きて……?」


 自身が生きている事に少しの喜びを感じたが、すぐにそれは消える。

 少年は私を庇って死んだ。

 それを認識する程、胸が締め付けられるように感じた。


 「お姉さん?治してくれたの?」

 「え?生きて!」

 

 思わず私は少年を抱き締めていた。

 子供みたいに涙を流して。

 少年も少し困惑しながらも私を抱き締めてくれた。


 「生きてて良かったぁ。君が死んで、私は……」

 「殺すとか言ってたのに。ちょっと仲良くなっただけだよ、僕達」

 「でもぉ!」


 再度抱き合った後、私達は王国へ向けての旅を再開した。

 最初の出会いの時とは違い、会話も弾んで楽しい時間が続いていった。


 「そういえば、お姉ちゃんの名前は何なの?」

 「私の名?シャーラよ。ラストネームは親がいないから分からないわ」

 「いい名前だね!僕も言ってなかったから言うよ。僕の名前はブレット・ラーイだよ」

 「ブレット・ラーイね。覚えたわ」

 「シャーラ姉って呼べばいいかな」

 「シャーラでいいわよ。多分そんなに歳も離れてる訳でもないし」

 「分かった!そしたらブレットって読んでね!ブレでも良いよ!」


 お互いに話しをしながら、野営をする。

 どんどんブラットも私も眠くなるので、周囲に結界を貼ると、そのまま一晩を過ごした。

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