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 誰も応えない。

 当然だった。家の電気はついていないのだ。いたらつけるに決まっている。誰もいない。頭の片隅ではわかっていても、誰かを呼ばずにはいられなかった。助けてほしくてしかたがなかった。 

 キッチンへ行き、コップを手に取り、水を蛇口から出した。グラスから水が溢れる。その水を一息で飲んだ。乱暴にコップを置く。

 それから電気をつけようとしたが、つかなかった。

 テレビもつかない。ラジオもつかない。

「なんでつかないの、ねえ、なんで!」

 頭がおかしくなりそうだ。

 少しでも明かりがあれば落ち着ついていたかもしれないのに。

 動悸が止まらない。 

 階段を上がった。

 自分の部屋の机に置いてあるスマホを操作した。うんともすんともいわない。充電機をつけてみる。なにも反応なし。肝心なときに役に立たない。スマホを壁に向かって投げつけた。

 深呼吸をして息を整えた。   

 時計の針は八時半をさしている。

 玄関の扉の鍵を閉める。手が震えている。家のあらゆる窓の鍵を閉める。カーテンも閉める。ベッドに入って布団を被る。丸くなる。小さく、小さく、丸くなる。

「これは夢だ、きっと夢。そうに違いないよ。寝て、目が覚めたら、元の世界に戻ってる。うん、大丈夫、安心しろ楓。大丈夫、寝たら、元に戻ってる。絶対戻ってる」

 震えながら目をつむっていた。しばらく寝られなかったけど、だんだんと意識がまどろんでいくのがわかった。良かった。

 これで……やっと……




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