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「もうやだ」

 逃げだした。目から零れる涙をふきながら。

道路の真ん中に得体の知れない影がいた。

「あ……」

 迂回路を取る。だがその先にも、四足歩行の影。立ち止まり、ゆっくり元来た道を戻った。

 いったいあれは、なに? 

 次に選んだ道にもドロドロとした影。その横を駆け抜けた。こないでと心の中で叫び続けた。翼の生えた影に見つからないよう物陰に隠れる。もう少し、もう少しで家につくというとき、蛇のような影がいた。息を潜める。目をつむる。ただただ怯えた。塀の影からもう一度覗いてみる。蛇の影は相変わらず同じ場所にいる。

 また迂回路。 

 玄関にやっとついて、鍵を開けようとした。なかなか、上手く開けることができなかった。鍵穴に鍵をうまく差し込めない。どっちに回せばいいのかわからない。

「はやく、はやく、はやく、落ち着いて、落ち着いて」

開いた。

 扉を開けて乱暴に閉める。

 楓は扉を背にしてへたり込んだ。

 胸の前で手を握った。

 手の震えは止まってくれそうもなかった。もう一生震えてるんじゃないだろうか。そう思った。

「もう、なんなの」 

 息が落ち着いてから、手を壁につけてなんとか立ちあがるが、足がふらふらする。台所に向かうことにした。

 なんだか身体が重かった。ひどく、疲れている。足が腕が目が取れてしまうんじゃないのだろうか。それらと比べても一番疲れているのは精神だった。くたくたなんて言葉をゆうに通り越している。

「お母さん……」

 誰もいない電気のついていないリビング。

 嫌だ。

「お母さん! お父さん!」

声がやけに響いた。


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