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気がつくと屋上の上にいた。
むっくりと起きだすと夕焼け空が眼前に広がっている。
そばに天我が倒れている。肩を揺さぶった。
「天我君、ねえ起きて」
「ん」
天我は薄目を開け眠そうな目をこすり上体を起こす。
「おやすみ」
また寝ようとしたのを楓は制止した。
「寝るな!」
ぐわんぐわんと身体を揺さぶられてやっと覚醒したようだった。
「僕たち、戻ってこれたんだ」
「うん、天我君のおかげだよ」
「でも、どうやって戻ってこれたの? トイレの辺りから僕、記憶がないんだけど」
影の巨人を斬ったことを覚えていないようだった。あんなことをやってのけて覚えていないというのか。でも、あのときの天我は天我ではなかったのかもしれない。
「楽朗にお礼も挨拶もしてなかったな」
「また会えるよ」
「やだよ僕、あんな世界二度と行きたくない」
「そうだね」
楓は笑いながら言った。
「さ、帰ろうか」
「うん」
「どうする、学校出てあの影たちいたら」
「やめて、そうゆう怖いこと言うの」
「映画とかだとさ、いったん終わると見せかけてからまた、何か来るんだよね」
「これは映画じゃありません小説です」
「え? どうゆうこと?」
「もういい」
「ねえ」
「いいって」
「ねえ、ねえ、ねえ、ねえ」
「しつこいと嫌われるよ!」