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が震えて割れた。
台風が衝突してきたようだった。
(これが、どうしようもない奴だ)
戦っても勝ち目のない、抗いようのない、圧倒的な存在。どうにかしてやろうとか、考えること自体が間違いだと思うような、そんな存在。
「天我君! 天我君!」
肩を揺さぶる。
ポケットの中の玉が淡く光っていた。
天我の目が開く。
上体を起こして伸びをした。
さもよく寝たという表情をしている。
「よかった、逃げよう! 立って!」
天我が楓に促されて立ったとき、影の巨人を見た。引っぱろうとする楓は、動かなくなった天我を見る。
「ねえ、なにやってるの! 早く!」
天我は玉を握り剣にした。
「かえちゃん、一緒に持って」
「え? どうゆう――」
天我は剣を一緒に持てと言っているようだった。
「いいから!」
「う、うん」
楓は天我の勢いに押されて剣の柄を一緒に持った。
掲げる剣からは緋色の光が湧きでていた。
「光が……」
「いくよ」
二人で剣を振りおろした。
影の巨人を二つに斬っていた。
空の闇も二つに分かたれ、切り口からは緋色の光が溢れていた。
「なにこれ」
「行こう」
楓は天我に手を引かれるまま、光が溢でる先へ走っていった。