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三人は教室に戻っていた。
天我は床に伸びている。玉が背中に載せられていた。
「影が生きた人間に取り憑いたりするんだね」
と楓が楽朗に話しかける。
「あいつら生きた人間の身体を乗っ取ってまた生き返りたいんだろうな、きっと。そうそう、集めた破片貸してくれ」
楓が布袋を渡すと、楽朗は袋をこねこねとこねだした。しばらくこねていた。
「これくらいでいいかな」
袋が楓に戻されると渡す前までの破片の感触ではなく、中に玉がある感触に変わっていた。どういうことだろう。
「直ったの?」
「泥団子みたいなもんだからなそれ」
「泥団子って」
袋を開くと赤い玉が顔を出した。
「もう壊されんなよ」
「うん」
楓は玉を胸に当てた。
あたたかい。
「まあ、あっちに帰ったらいらねえか。そろそろ帰れるだろうしな」
楽朗はまた机の上に座った。
「なんで、そんなことわかるの?」
「そこのくたばってる奴、影と戦おうとして玉を剣にしてたろ」
「そうだね」
「玉が剣になった奴は大体帰れる」
「そうなんだ」
楓は一安心した。なんとか帰れそうだ。
「私達が戻ったら、楽朗君もあがれるかな」
「俺はまだしばらくいいや。やることあるし。そうだ、来たくなったらまた来こいよな、俺お前と会いたいし」
「え? それどうゆう――」
ドン!
ドアが張り倒されガラスが割れた。