表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/81

73

「……」

 ねじくれた闇の底を見つめた。

「ちょうだい」

 くぐもった低い声。

 天我はポケットから玉を取りだした。

 ほのかな光。

「僕だってやるときはやるんだよぉ!」

 玉がまばゆく光だし黄色い剣になった。

 剣をそこにいるモノに突き刺した。

 顔の無い影の胸に剣が深々と刺さる。

「倒せた……!」

 いや、

 闇は笑っていた。ヒステリックに自嘲的にニヒルに不気味に。

 天我は恐れを感じたが勇気を振り絞り声を張りあげた。

「なにが、なにが可笑しいんだよ!」

 闇がアメーバのように膨らんだ。

「う、あ」

 天我を飲み込んだ。

 少年の割れるような叫びが聞こえた。



 

 トイレの外で待っていた楓は顔を上げた。

「なに?!」

 楓は扉を開ける。

「どうしたの!?」

 見ると、天我の身体に影が巻きつき、渦巻き、今にも飲み込まれようとしていた。いや、もう飲み込まれたあとだ。目が闇色に染まり、呻き声と嗚咽を漏らしていた。それから笑い声を出した。幼い女の子の声だ。嬉しそうな、歓喜に震えるような。その声はだんだんと低くなって、くぐもった声になった。

「ああ、生きてる。生きてる。ははははは」

 楓は後ずさった。どうしていいのかわからない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ