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「友達――だった人に、死ねとかってノートに書かれて、友達は皆無視だし、先生も僕にだけひどい扱いするし、じゃあいっそ死んでみようと思ったんだ」
「お前は誰かに命令されたらなんでもするのか?」
「いや……」
「なんでやり返さないんだよ」
「……」
「自分の考えくらいあるだろ、なんでそれを相手にぶつけないんだよ」
「誰かを傷つけたくないから」
「違うな、単純にへたれだからだ。ぶっころしてやるとか思うくらいでちょうどいいんだよお前みたいなやつは」
楽朗は吐き捨てるように言った。
「それは野蛮じゃないかな」
と楓が言う。
「僕だって悪いんだよ、友達の気持ち考えないで自分勝手で、しつこく頼ってたから、それで拒絶されたんだ」
「やられたらやり返せよ、つけあがるだけなんだよ、そんな奴らほっといたらよ!」
楽朗は隣の机を蹴った。
いったっーと足をさすっている。
「でも……」
「でももヘチマもあるかよ、しねとか言われたら、うるせえお前がくたばれとでも言って一発ぶん殴れ、それくらいしねえと舐められるんだよ」
「……僕はできないよ」
「天我君は優しいんだね」
「そんなんじゃないよ」
「へたれなだけだ、自分自身を守れないで標的にされてお終いなんだよ、お前みたいなやつは。一方的にやられてたら耐えきれないに決まってるだろ」
「僕は別に喧嘩したいわけじゃない」
「いじめられてえ訳でもねえだろ」
「……」
「逃げることもしねえでただ、やられてるだけだもんな! 良いサンドバックだなぁ!」
「うるさいなあ! 君に僕のなにが分かるんだ! なにもしらないくせになんでもかんでも決めつけて言ってこないでくれ!」