7
楓は安心してほっと息を吐く。
なんだちゃんと人がいるじゃない。知らない世界に迷いこんだんじゃないんだと安堵した。
「良かったぁ」
近づいて話しかけることにした。
「あ、あの……」
なんとも頼りない声がでたなと自分で思った。
楓と同じくらいの年齢の少年は楓を見た。それから眉根を寄せた。
「おまえ……生きてるのか?」
「生きてる?」
この少年がなんでそんなとんちんかんなことを訊いてくるのか不思議に思った。
少年は周りに目を配った。
「逃げろおお!」
「え?」
大きな音。楓の後ろの塀がジェンガのように壊れた。巨大な影がいる。
「いやああああああああああ!!!」
楓は脱兎の如く走りだした。
少年は塀にもたれながら立ち上がった。
「ちくしょうがあ!」
少年は首にかけていた物を引きちぎる。青いオーラを纏う剣になった。
楓と少年はすれ違う。
「待て!」
楓は立ち止まり、振り返った。
少年はポケットから何かを取り出して楓に向かって投げた。
それを両手でキャッチする。
「持っとけ」
「なに?」
「走れ!」
楓は前を見た。影がそこまで迫ってきている。
「君は!?」
少年は怪物の方をにらみ、何も応えずに怪物と対峙し始めた。
楓は後ずさった。