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天我はなにも考えられなくなった。
ただ、手の中の優しい温かさを感じていた。
薄目を開ける。
小石がある。
どれくらい目をつぶっていたのかはわからないが、くたくただったのが走れるくらいにまで回復していた。顔を上げて二人の方を見るとあの怪物と戦ってくれている。
そうだ逃げなきゃ。
天我が自転車に目をやると、自転車は見るも無惨に潰れてぐしゃぐしゃになっていた。
嘘でしょ?
たぶん、あの戦いの被害を受けて、壊れてしまったんだろう。
こうなってしまったら、自分の脚で走るしかない。
とにかく逃げなきゃ。
天我は立って二人に向かって言葉を発した。
「ごめん!」
反対の方向に向かって走りだした。
「学校な!」
と楽朗がもう一度言った。
もう天我は路地に入ったあとだった。姿はない。
「やっとかよ」
と言いながら攻撃を避ける。
「よかった」
「俺たちももう少し時間を稼いだらずらかるぞ!」
「わかった!」
走った。
走った。
走った。
走った。
走った。
はしった。
はしった。
はしった。