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楽朗は玉を握り剣を出して走りだす。
「う、うん」
楓もそれに続いた。
楽朗が影に斬りかかった。
影はふり向いて楽朗の剣を腕で受ける。
剣で腕は斬れないようだった、蜘蛛の影とこれは同様である。
楓が間髪入れずに斬りかかったがこれも弾かれる。
飛ばされて民家の屋根に着地した。
手がジーンと痺れた。
今のやり取りで楓はこの影が他の影とはまるで違うことを悟った。
「下手に倒してやろうとか絶対に思うな! 逆にやられかねないし、腕の一本二本落としてもまた生やしやがるからな!」
そんなの、ずるじゃないかと楓は思った。だから逃げろと言っていたのか。
「おい、そこのへたれ野郎! これ握ってろ! また走れるようになったらすぐ逃げろ」
楽朗はポケットから玉を取りだし、天我に投げた。
投げられた玉を天我はキャッチできなかった。
「あ」
コン! 額に衝突。
「あいたあ」
「ばかやろう! 死ぬ気で拾え!」
玉がコロコロと転がっていく。
天我はやっとの思いで立ちあがりよたよたと玉の方に向かっていったが、また倒れてしまった。
「あのへたれ、倒れてんじゃねぇぞ!」
再び立ちあがろうとしても、すぐに倒れていた。
「私が!」
「へたれの方に行こうとか思うなよ! あいつの方に行ったらこいつも向こうに行きかねない、そうしたらゲームオーバーだ」
「でも……」
「あいつが動くのを待つしかねぇ!」
天我は這って進みだした。
朦朧とする意識の中、なんとかたどり着き玉を握る。