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寝てる」
「へー、本屋さんとか図書館はあるもんね、一人遊びなら向こうと変わんないんだ」
「見切れないくらいあるからそこら辺は困らんのよ」
「寂しくないの?」
「いや、別に。前まで律いたしな。なんなら他の地域にも俺らみたいなのいるから寂しくなったらいったりしてるし」
「へー」
道のずっと向こうの方で何か動くモノが見えた。
「ん」
「彼かな」
楽朗は目をこらす。ふらふらと自転車に乗った人のシルエット。
「かもな」
「よかったー無事みたいだね」
天我も二人に気づいて笑顔で手を振っていた。
空から二メーター三十はある影が落ちてきた。楓が楽朗と初めて顔を合わせたときに遭遇した影と同じ影だった。
「え……」
三人の間に立ち塞がるように着地。
楓は髪の毛が逆立つような思いになった。
「お前! 学校までこい!」
と楽朗は天我に向かって叫んだ。
「逃げるぞ」
と楓にも言う。
「え」
「さっき話してた奴はこいつだよ!」
影は天我の方に向かって行こうとしている。
天我の自転車がこけた。
「も、もう走れないよぉー」
「はぁ!?」
楽朗は口と目を大きく開けて驚愕の表情を作った。
舌打ち。
「しゃあねえな! 行くぞ!」