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学校の外は相変わらず薄気味悪かった。膨らんだ闇。そんな印象の道。
川を見ると魚の形の影がいた。飛び跳ねる影はピラニアに似ていた。
「やべえのに出くわさなきゃいいけどな」
「あの魚の影みたいな?」
楓は川の方を指さした。
「あんなのかわいいほうだろ」
楽朗は川をのぞき込むように見て言った。
「じゃあ、ヤバいのってなに?」
「成れの果てにもいろいろいてさ、二人がかりでもどうしようもできないのもいるから、そんときは逃げるぞ」
「どんなの?」
「たまに不死身のやつがいる、あとどうもできないやつ」
「……なにそれ」
訊いておいてなんだが、正直耳を塞ぎたいくらいだった。
「ま、遭遇しないことを祈るしかないのよ、幸いそいつら脚が遅いから逃げたらだいじょうぶ」
楓は絶対に会いたくないと思った。
「やつら、生きてる人間に集まってくるのかと思ってたけど違うみたいだな」
「なんでそう思うの?」
「お前に成れの果てどもが集まってこない」
「楽朗君がいるからじゃなくて?」
「いや、それは関係ないな。二回目来る人間なんて初めてだったけど、なんかが違うんだろうな」
「何が違うんだろうね」
「しらん」
「死にたがっている人間に集まるのか、単純に呼ばれた人間だけに集まるのか。無理矢理来た私には興味がないってことだね。よかった」
「俺は興味あるけどな」
「どういう意味で?」
「なんでもない」
「そういえば、私達みたいな生きてる人間が迷い込んだとき以外はなにやってるの?」
「んー、本か漫画読んだり、スケボーとかして遊んだりかトランペット吹くかな、あとは