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霊界から解放されたってことは、生まれ変わるのかな。沢山話したいことあったのになって思うけど、これでいいんだ。
「わざわざあいつに会いに来たのかよ。けどよくこれたな」
「うん、偶然屋上から飛び降りようとしてた生徒がいて」
「ふーん、んでそいつは?」
「さっきの影とやり合ってたらどっか行っちゃった」
「はいぃ? そいつ玉持ってんのかよ」
「持ってないと思うけど」
「ちょっとまずいかもな」
「どうして?」
「持ってると持ってないとじゃ寄ってくる影の量が違うからな。お前は持ってたろ」
「うん、楽朗君から渡されたからね」
あれで遭遇していないほうだと考えたらぞっとする。
「彼が楽朗君みたいな人に会うことはないの?」
「望み薄かな、自分のテリトリーの外に行くなんてそうそうしないし、生きた人間は特定のエリアの外から出られない。だから今このエリアにいる〝防人〟は俺だけのはずだから探してやんねぇとまじいな」
楓は膝に手をやって立ちあがった。
「いこ!」
「もう、いいのか?」
「うん!」
悠長なことは言っていられなかった。休んでいたら取り返しのつかないことになるかもしれないのだ。急いで助けに行かないと、こんな世界で訳の分からないモノたちに追いかけられるのは、怖くてたまらないはずだから。りっちゃんだってそうしていたはずだから。
灰色の校舎を二人でくまなく探した。あの彼はどこにも見当たらない。
「ねえーいないのー!」
「いたら返事しろー!」
大声で呼ばわったが返事はまるで返ってこなかった。声が闇に飲み込まれ溶けていく。
「学校にはいないのかもな」
「学校の外か……」
「とにかく探すしかないな」
「うん」