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「嘘でしょ?」
言葉が出てくる前から薄々気づいていた。だけど信じたくなかったから言わないようにしていた。進んでも進んでも道が同じなのだ。どこからが境かわからない。だがある程度いくと先ほど通った道に逆戻りしている。
自分の家に向かおうとしていた。だがこれじゃあ、いつまで経ってもたどり着くことはできない。永遠に家に着かない。
前を見るとゆらゆらと影が見える。
ヤバい。
天我は脇道にそれた。
楓は蜘蛛の影に苦戦していた。斬ろうとしても剣は弾かれるばかりだった。
他の影みたいに斬れない……
「うわああああああああああああああ!」
それでも果敢に挑みかかった。
蜘蛛の脚を斬った。
やった。
と思った瞬間。
身体に衝撃が走り、思い切り吹っ飛んでいた。
剣が手から離れた。床に転がる。
フェンスに叩きつけられる身体。
飛びかける意識。
(あ……)
目だけ向けると、蜘蛛の影が近づいている。
剣が踏まれていた。
手を伸ばしても届く距離にはない。
身体が痛みで動かない。
や……だ……
そのときだった。
蜘蛛の影を背後から斬りつけた者がいた。
蜘蛛の影は二つに分かれて果てた。
「りっ……ちゃん?」
いや、違う人物だった。知っている。