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 何かが、おかしかった。電灯はついているが、ついたり消えたりしている。人がいるはずのマンションや家の明かりはついていなかった。不気味だった。重苦しい空気を肌に感じた。

 走りながら、マンションや家を過ぎていく。

「は、は、は」

 心臓のドキドキが走っているからなのか、恐怖からなのか、はたまた別のなにかが原因なのか楓にはわからなかった。

「なんで誰もいないの?」

 周りをキョロキョロと見回しながら道ばたで立ち止まった。 

 道の向こうを見た。体長二メートル三十はある巨大な影が歩いていた。

 巨大な影はゆっくりと動いている。

「……」

嘘でしょ。

 楓は手を口元にやった。音を立てないように後ずさる。

「逃げなきゃ」

 独りごちてから、無我夢中で走った。

走って、走って、走り続けた。あの訳の分からないモノから一刻でも早く遠ざかりたかった。見つかりたくなかった。見つかってしまって、あれが追いかけてきたらなんて、そんなことは想像したくなかった。

 体力の限界がきて楓は止まった。手を膝に置いた。ひどく汗をかいていると思った。

 目を上げて町の様子を眺める。

「ここ、どこ……?」

町並みは変わらないはずなのに、雰囲気がいつもとまるで違っていた。知っている町のはずなのに、全く別の世界に来てしまった感覚に陥った。

 息を整えながらふらふらとしばらく歩いた。

「たぶん、来ちゃいけないとこだ、ここ……」

 どうしよう。

 不安が胸に押し寄せてくる。黒い海が胸元までせり上がってきている。喉まですぐに到達してしまうだろう。あと少しで溺れてしまいそうだ。

 前を見ると人がいた。影じゃなかった、顔もちゃんとある。間違いない、人だ。

 その人は塀に背中をついて座っている。なんだか疲れているようだった。

「あの人、怪物じゃない」


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