56
たどり着いた先はあの不気味な世界だった。
闇だけが広がる空。学校の屋上。
楓が元の世界に戻るときに崩壊していた屋上は元に戻っていた。
「戻ってこれた……」
周りを見回していると、
「いってえ」
と後ろでさっきの男子生徒が転がっていた。
楓はふり向いて男子生徒に声をかける。
「あなた、なんで来たの?」
「なんでって」
「そっか、あなたが呼ばれたんだもんね、あなたは来て当然なのか」
楓は一人で納得していた。
「呼ばれた?」
天我はキョロキョロと周りを見る。
「ねえ、さっきの穴は?」
先ほどまであった渦はどこにも見当たらなくなっていた。
「なくなっちゃったみたいだね」
「どうやって戻るの?」
「私もわかんない」
「ええ!?」
楓は天我にここのことをざっと説明した。
「な、なにそれ、信じられないよ、異世界なんて」
「別に信じてくれなくてもいいけど」
そのときだった、屋上の入り口の扉がキーと開いた。
二人はぎょっと扉を見た。
「なに?」
暗くてよく見えない。
けど、何かがいた。
楓は玉を握り赤い剣をだした。
楓は緊張しながら闇を見つめた。
影だ。大きくはない。大丈夫。私だけでも倒せそうだ、と楓は思った。
りっちゃんがいなくても戦ってみせる。彼を守らないと……私しかいないんだから。