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 とりあえず、あの日と同じように寝て、あの日と同じ時間に学校をうろついてみたがダメだった。

 校舎を出た。

「んーー」

 楓は腕組みをしている。あの日、律が言っていたことを思い返していた。

 ここくる人ってさあ、だいたいが、死にたがってる人とかなんだけど

 死にたがる人間ならあそこに行ける。

 自殺をしようとしたらまた、行けるのだろうか。

 やってみる?

 楓は首を横にふった。

 いや、そんなことをしてホントに死んでいられないよ。

 じゃあ……

 死にたがっている人間、自殺しようとしている人間を探すしかないんじゃないのかと楓は思い至った。

「っていっても、そんなのそうそう見つかんないよー」

 いくら日本の自殺人口が高いといっても、死にたいなんてそんなこと見ず知らずの誰かに言ったりしないだろうし、そんなことを公言するような人は本気で死のうなんて思っていないと思う。実行に移さず、心の片隅にそっと置いておく程度。本気でやろうとしている人間はそんな素振りも見せずに突然行動に移すんじゃないか、そう思う。殺人を犯す人だってそんなものだろう。ニュースとかのインタビューでもよく聞くではないか。そんなことをするようには見えませんでしたとか。普段は優しい子でとか。ほんとびっくりですとか。対象が自分自身なのか他人なのかの違いでしかない。身近ではない人間が見ている面なんんてものはその人間のほんの僅かな、外見的な印象にすぎなくて、見えてない所にその人の本質があるはずだ。見た目になにかの痕跡が現れるにしても、繕った外面でそこに別のなにか盾を置いて自分の身を守るのだ。誰も精神的に問題があるなんて他人に知られたくないし、それをさらけだせる人間は強いから、自殺も他殺もしないのではないだろうか。他人から見た自分が本当の自分なのか、自分で認識している自分が本当の自分なのかは定かではないけれど。

 楓はなんとなく屋上の辺りを見た。

 人が飛び降りようとしていた。


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