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「もっといたかったな」
遠くの方でゆらゆらと揺れる影が見えた。こちらに向かってきていた。
それを見て龍太郎は立ちあがる。
「あの影大きいね、ラスボス? あれ倒したら帰れるのかな」
「いや、あいつは不死身だ。戦ってもいいことないぞ」
「あは、楽しそうだね。不死身の敵を倒す」
「だから倒せないんだって」
龍太郎は一人で突っ走っていった。まるで新しいおもちゃにはしゃぐ子供のようだった。
楽朗は人の話を聞いていない双子の片割れにあきれる。
「あれとやんのかよ」
楽朗は息をはいたあと、龍太郎の背中を追った。
「君は楽しませてくれるのかなあ!」
龍太郎は嬉々とした声を発した。
影の腕と剣が衝突して激しい振動が腕に伝わってきた。
龍太郎はあまりの衝撃にのけぞった。身体に電流が走りぬける。
「うわ」
「下がれ!」
首根っこを捕まれて後ろにぐんと引っぱられた。
龍太郎のいた場所を黒い腕が草刈り鎌の如く通過。
目と鼻の先で風がブン! と鳴った。
あの場所にいたらどうなっていたであろうか考えたくもない。
龍太郎は生唾を飲み込む。
「普通の奴らの比じゃねぇぞ」
「早く言ってよ」
「来るぞ!」
突進してくる強大な影。
二人は左右に別れる。
影はすぐさま方向転換。足を踏ん張ったアスファルトがぐしゃりと沈む。
双子の片割れの方に向かっていった。
腕が龍太郎目がけて飛んでくる。
剣で受けるが腕が思いきり弾かれてしまう。
何度も受けきれるものではなかった。