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最後の一体を二人で同時に斬った。
影は煙が立ち昇るように消えていった。
「やっと終わったのかな」
龍太郎が辺りを見回す。影は見当たらなかった。光のない真っ黒な町が静けさと共に広がっているだけだ。
「どうだろうな」
「楽朗」
「ん?」
楽朗は目を向ける。
「僕は死にたいなんて思ってないよ、生きたいよ」
龍太郎は真っ直ぐな目で言った。
「そうか」
「しにたくなったこともある」
「ああ」
「けどね、あの頃の楽朗を見てて思ったんだ」
龍太郎は手を握りしめた。
「精一杯生きたいって」
「じゃあ、そうしろ」
「ここに来たのは、きっと神様が僕に頑張ってほしいから、楽朗に会わせてくれたんだ」
「そんな神とか都合良くいると思うかあ?」
「こんな世界があるんだもん、きっといるよ」
「じゃあ、長く生きられなかった俺は神に見放されてたのかもな」
「かもね」
「いらねえよそんな神様、クソ食らえだ」
龍太郎は笑った。
「まあ、短くても悪くない人生だった。生まれて良かったと思ってる」
「そっか」
龍太郎は優しく微笑んだ。
「帰ったらしんどいんだろうなあ」
龍太郎はうずくまる。
「だろうな」
楽朗は歯を見せて笑った。