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また影を斬った。
影を斬ると流れてくる感情に吐き気がした。
「大丈夫か?」
楽朗が影を切り裂いてから龍太郎に話しかけてきた。
「平気だよ」
湧くように出てくる影。
龍太郎と楽朗は背中合わせになる。
「どんだけいんのこいつら?」
「わかんね」
「退屈しなくていいね」
龍太郎はニヤリとした。
「飽きるッつーの」
二人は同時に動いた。
さすが双子と言うべきかピタリとした息だった。お互いの考えがわかっているかのような動きで影を寄せつけない。一方が斬ったあとで間髪を入れずにもう片方が別の影を斬る。次々と、斬って斬って斬りまくった。
「凄いよ楽朗、身体が二つあるみたいだ」
「二つもいらねえだろ」
「なんで?」
「一つでもろくに扱えてないのに、二つじゃ持て余すだろ」
「そうかなあ、僕は便利だと思うけど」
「動かねえ身体二つになってもしょうがねえだろ」
「それはそうだね」
二人はまた背中を合わせた。
「なんでか楽朗と一緒だと動きがよくなる」
「相性が良いやつといると、この世界だとこうなる」
「じゃあ、僕達一番強くなれるじゃない? 同じ遺伝子を持った双子なんだもん」
「兄弟が相性いいかって言ったらそうでもないだろ」
「そうかなあ」
「まあお前となら強くなれるってのは確かだな」
「仲良しだったからね僕ら」
「そうだな」