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 学校の屋上。風がヒューヒューと空気を切り裂くような音をだしていた。スカートがパタパタなびいている。太陽さん、こんにちわ。

楓はフェンスに指をかけた。グランドにいる生徒が見える。楽しそうな声。

「なんでりっちゃんが死んで、私が生きてるんだろう。逆なら良かったのに。私なんかが生きているよりもりっちゃんが生きている方がずっと、ずっと良かったんだ。りっちゃんに会いたい」

 楓はフェンスに背中を押しつけて、ため息をもらした。

 夕焼け色になった教室で机に突っ伏して寝ている。

楓以外誰もいない教室。

 気がついて、眠たい目をこすった。

「寝ちゃってた」

 楓は机に置いていた眼鏡をかけ、窓の外を見る。

 もうそろそろ暗くなる頃だ。

「帰ろ」

 鞄に教科書を入れて、教室を出た。

 誰もいない廊下。

 水道の蛇口から水滴が落ちる。

 いつから寝てたんだろう、そのあたりの記憶が曖昧だった。学校で眠るなんてことはじめてかもしれない。

 眠る前を思い出そうとしながら、歩いていると――

 後ろの方になにかの気配を感じた。少し背筋が冷たいような。

 振り返った。けれど、誰もいなかった。

「誰か、いるの?」

 しーんと静まりかえっている。気のせい? 頭をかしげながら楓は前を向いて歩きだした。階段を降りて、下の通路に黒い影が見えた。

 楓はその黒い影を見て立ち止まった。

 動けなかった。

 黒くて、淡いようなぼやぼやしてハッキリとは見えない闇のようなモノが動いていた。

 影はそのまま通り過ぎていった。

 その影が見えなくなるまで、楓は固まったままだった。息をするのを思い出してから、階段をゆっくり降りきった。影が消えていった方を恐る恐る見たが、何もいなかった。

「……」


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