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地震?
いったいなんだろう。
屋上の床が割れた。
落ちる。
「きゃ」
楓は手を伸ばした。
律が楓の手を取った。
二人は見つめ合う。
「しっかり掴まってて」
「うん」
「今度は離さないね」
「うん……」
楓がぶら下がっている下の方に、渦潮のようなものが現れていた。
律はその渦潮に目をやる。
「あー、やっぱ無理かも」
律の目線につられ楓も下を見やった。
「どうゆうこと?」
「あそこに入れば帰れるよ、元の世界に」
楓は握っていた手をもっと強く握った。
「嫌だ……、私、残る! りっちゃんと一緒にいる!」
「ばか言わないの、帰りなよ」
律の顔は嬉しそうな泣いているような顔だった。
「りっちゃんも」
「無理だよ、あたし、死んでるもん」
「嫌だ、嫌だ!」
律は大きく息を吸い込んだ。
「あたしの分も生きろ!」
楓はボロボロと涙を零した。
握られていた手が離れる。
落ちてゆく。
離れていく。
会いたかった人と離れていく。
せっかく会えたのに。
近かったのが遠くなる。
「バイバイ、会えて嬉しかった」
「りっちゃん!」
楓は渦に飲み込まれた。