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「来たよ!」

 五体、巨大な影が入り口を破壊して押し寄せてくる。

 女の子は剣を構えた。

自分から影に向かって突っ込んでいく。

 一体を切り裂く。二体、三体目を倒すが、更に入り口から十体の巨大な影が我も我もと躍りでてきた。

「ああ! もう」 

 その内の一体が楓の方に向かってきた。

「こっちにくる」

 楓は逃げた。

 角まで追い詰められ、背中にフェンスが食い込む。

「もう、逃げられない……」

 楓は手に持っていた玉を握りしめる。

「死にたくない……」

ずっとずっと、無気力に生きてきた。ただなんとなく生きていた。なんとなく学校に行ってだらだら授業を聞いて。家に帰って、なにもするわけでもなく。何かしたいこともとくになく、死にたい、終わらせたいなんて思っていた。そんな勇気も無いから実行に移すこともなかったけれど。なんのために生きているのかわからなかった。私はなんなんだろう。空気みたいな、道ばたの草のような存在。いや、空気も草も世界に必要だ。無くてはならない存在だ。私は必要とされていただろうか。わからない。お父さんやお母さんには必要とされていた、望まれて産まれてきたんだろうと思う。けど、他の人からは? 誰も感心なんて持ってくれていなかったと思う。だって私が関心なんて持ち合わせていなかったから。他の存在なんてどうでもよかったから。そんな私に興味を抱いてくれる人なんているはずがない。そこら辺に転がる石ころみたいなものだ。たまたま同じ場所にいたに過ぎない存在。ただそこにある。石だって世界に必要だけれども。私は――「その命、あたしによこせよ」そんな言葉を聞いて、はいって渡せるのなら、ここに来るまえの私だったら、素直に渡していただろう。命を差し出していただろう。

 巨大な影が腕を振り上げる。

 けど今は

「避けてえ!」

「死にたくない!」

 玉が眩い光をもって輝やいた。


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