19
「うわあ、どうするの!?」
「上、行くしかないか、こっち」
二人は少し戻って階段を駆け上がった。
屋上に出た。月があるでもなく、星があるでもなく、闇だけが広がる空。
女の子はドアを閉める。
楓は息を切らしていた。
「どうするの、もう、逃げられないよ」
「さっきのやつ出して」
「さっきの?」
「たまたま持ってたでしょ」
「たまたまって……これ?」
楓はポケットから玉を出した。
「それ、持ってて」
「う、うん」
「ねえ」
「ん?」
「こんなことずっと続けているの?」
「うん、ずーと、ずーとだよ」
「凄いね」
「さっきなんで助けるのかって訊かれたけど、他にやることないしさ。やりたくないって思うときもあるよ。けどね、私たちがやらないと、君たちみたいな人、たぶん死んじゃうんだ」
「そうだね」そうに決まってる。
「ここくる人ってさあ、だいたいが、死にたがってる人とかなんだけど」
「うん」
「半分くらい、自分から奴らに殺されに行くんだよ」
沈黙。
「その命、あたしによこせって思うよね」
目の前の女の子は苦笑いを浮かべていた。
なんて反応したらいいのか言葉が、出ない。
ドカン!
閉まっている入り口に何かがぶつかる音がした。