18
「大丈夫なのこれ」
「大丈夫じゃない!」
「うそ」
「ほんと!」
「ついてきて!」
「う、うん」
少女は走って体育館の入り口に溢れる影達に突っ込む。
「よいしょお!」
複数の影を一掃した。
追いついてきた楓の手が取られる。
二人は一緒に体育館を出ていった。
非常灯が明滅する。
廊下を走る。走る。走る。
楓はドキドキしていた。恐怖なんかじゃなく、女の子が戦っているところを見て、かっこいいと思った。彼女がいてくれたら、大丈夫、絶対大丈夫。そんな想いが溢れていた。
廊下の先で誰かが複数の影と対峙していた。あれは、昨日会った少年だ。生きていて良かったと楓は思った。戦っているところを通り過ぎていく。
「サンキュー」
と女の子は少年にいう。
楓の視線が少年とかち合った。
「ありがとー!」
楓も大きな声でお礼をいった。
「おらあああ!」
少年は二人の言葉には応えなかったが、敵をまとめて斬り倒していた。
二人は廊下を駆け抜ける。
「さっきの人は知り合い? 昨日、彼が助けてくれたの」
「うん、楽朗っての」
「楽朗くん……、彼は一人で大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。言ったでしょ、狙われるのは生きてる人間だって」
楓はそれを聞いて、なんだか複雑な心持ちになった。
なんでこうまでして守ってくれるんだろう。
通路に影が溢れ返っていて、二人は先に進めずに立ち止まる。