16
「あいつにら包丁とか通用しないからさ」
楓は女の子を見てから、槍を手から離した。走りやすくなった。
「じゃあ、追いつかれたら終わりってこと?」
「そんなときは、こいつ」
女の子は首にさげている黄色い玉を見せる。
「それは?」
「さっき、あたし剣持ってたでしょ、それ」
いつの間にか剣がいなくなっている。
「……」
楓はポケットに入れていた物を取りだした。
「これ?」
色は違うが、女の子の首にさがっている物と同じような玉だ。
「あれ? なんで持ってんの?」
「なんか、外で会った男子が持ってろって」
「ふーん」
「こっち!」
さらに通路を曲がって体育館に向かった。
二人で扉を閉める。
楓は膝に手をついて、ゼーハーとした。
「なんで、あの怪物は私たちを襲うの?」
「私たちっていうか、あなただけだけどね」
「私だけ?!」
「あいつら生きた人間しか追いかけないんだよ」
沈黙。
「あなたは、なんで助けてくれるの?」
「なんでだろうね」
「そういえば名前――」
体育館のドアが吹き飛ぶ。
二人で音の方を向いた。
「き、きた」
「おでましだよー」
女の子は首紐を引きちぎって剣を握った。