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 そんな馬鹿げた話があるのだろうか。死んだ人が目の前にいるなんて、ありえるのだろうか。目の前の少女は間違いなく動いているのに。

 楓はすぐ近くの頬に恐る恐る、野に生えた花を触るように触れた。

「あったかいよ」

 指に触れた肌は自分の肌と何も変わらない、生きている人の肌と一緒だった。

 女の子は袖をまくしあげた。

「あったかくても、死んでるんだよ。貸して」

 楓が持っていた槍を取る。女の子は自分の白い腕をすっと切った。血が――出ていない。

「ね?」

 楓は血の出ない傷跡を見つめる。

「それは、治るの?」

「うん、ほっとけば大丈夫」

 楓は傷跡が見えないように袖を戻してあげた。

「ねえ、私はこれからどうすればいいかな」

「とりあえず」

 何かが破壊される大きな音がした。

「逃げよっか」

 女の子は楓の手を取り、二人は走りだした。

 暗い学校の廊下。心なしか誰かといると、暗い場所でもそんなに怖くなかった。怖さで押しつぶされそうだったのも、離してくれなかった寂しさも、不安の塊もどこかにいった。

「リュックの中、なに入ってんの?」

「食べ物と水」

「捨てていいよ、水は水道あるし、食べ物不味いでしょ。それに、動くのに邪魔」    楓はそう言われてリュックを落とした。背中が軽くなる。

「なんでこの世界の食べ物ってあんなにまずいの?」

「さあ、なに食べてもばっさばさだよね」

 通路を曲がった。

 二人で走っていたらなんだか、昔を思い出した。りっちゃんとよく手を繋いで走り回っていたっけ。あの頃は私がりっちゃんを引っ張っていた。もしりっちゃんが生きていたなら、この子みたいな感じなのだろうか。

「その槍も捨てていいよ」

「え。でも、襲われたらどうするの」



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