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さざなみ

作者: ネコ太郎

あぁ・・・高校のことを思い出すとやっぱ彼女の姿が一番に浮かぶ。


この思いを大事にしたい。ここに小説として残すことにした・・・

目を閉じる、潮風と波の音に耳を澄ませゆっくり呼吸を整える。こころを透かして軽くなった体をゆっくり海に沈める。何も感じないこの心は、私が作り出したもの。かすれた声となびく髪は私の・・・・・

 

 ゆっくり目を開けると目の前には自室の天井があり、これは夢だったと自覚する。枕元に手を伸ばしスマホで時間を確認した。

 

 [5:11]

 

 その時間を見て何を思ったのか、財布とスマホを持ち、寝間着からジャージに着替えて外に飛び出した。団地の階段を駆け下り、全力で走りながら海に向かう。 


 景色は次第にコンクリートから青空に、砂に変わってゆく。

 

 全力で砂浜を走る。息を荒げながら潮風を受ける体を強く海に投げ出した。


 水深5cmにも満たない、海の気分次第で陸にもなるこの場所に何を求めたのだろうか、夢で見たこの浜辺に何をしに来たのだろうか、あの夢がどんな力をもってこの場所に向かわせたのか・・・

 

 「大丈夫?・・・ですか?」


  女性の声だ。


 「あっ・・・はい、大丈夫で・・です。」


 私は体を起こし、その子と顔を合わせる。

 

 目は大きめだけど、ジト目気味でまん丸小顔。シュッとした鼻とにんまりした唇はどこか妖艶で、それを引き立たせるかのようなさらしっとりな髪を後ろでキュッとまとめる子。やや汗を流し、ジャージ姿で私の前に現れたのはどこかで見たことあるような。

 

 「あの・・・クラスの土屋くんだよね?」

 

 「・・・違います。」


 「えっ違うの?絶対そうだって~」

 

 「急に視界に現れて海に飛び込むからびっくりしたよ~飛び込むっていうより突っ込む?」


 「そうですね、すいませんお気遣いありがとうございます。それでは私は帰りますので。」


 素早く立ち上がりこの場を去る。

 

 「ねえまって!・・・少しお話しない?」


 私の肩を触って止めてきた。


 気づいたら走って逃げた。


 その子が持つ手の温もりがやけに冷たく感じその感覚にどこか気持ち悪さを感じていたのかもしれない


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 [8:50]


 あれから数日、7月の最初で最後の3連休も終わり学校が始まろうとしていた。


 私は、天音高校に通う今年で1年生の「土屋 あお」髪を肩まで無造作に伸ばしてじめじめとした印象を振りまいて、誰も近寄らせない高校生男子。

 

 今日も一人で登校して、たまたま確保できた最強ポジションの窓側の列一番後ろの席に座り授業を受けて、ぼっち飯して、帰宅する。そんなリアルに充実した日々を送るはずだった。


 「おはよ~土屋君!一昨日、浜辺であった私覚えてる?」


 「・・・・・」


 「・・・覚えてないかな?・・・そっか!あの時ポニーテールだったから!」


 彼女はウキウキしながら髪を束ね始めた。ゆっくりと場の雰囲気が変わるのを感じる。じめじめから、ぽかぽかとした、まるでお花畑みたいな。


 私はまたこの腐れ縁のような思い出に浸ってまた失敗して自分を苦しめる。わかってるんだ。だから頼む・・・関わらないでくれ。


 「ねぇ聞いてる?こっちみてよ!」


 うっすらと声が聞こえる、、、


 「ねぇ~!」


 一人の世界に入り込んでいたみたいだ。でも別にいいやこうしていれば関わらないで済む

最初からこうしていれば・・・・・

  

 「ねぇ~」


 目の前に彼女の顔があった。


 「おっ・・!やっとみてくれた!」


 「ねぇねぇどうかな!ゴム忘れちゃったから片手で止めてます!」


 嬉しそうににやにやしてる、ホント顔の周りに花浮いてるみたいな笑顔・・・

 

 「髪の毛あるとよく見えないでしょ?」

 

 そういいながら彼女は私の前髪を体温を額で測るように上げてきた。


 「・・・・・えっ?!」


 半分ぼーっとしてたのもあるだろう咄嗟に大きな声が出てしまった。


 彼女も驚いたようでにんまり笑顔が消え、目を丸くして、口をキュっとさせていた。後ろで支えていた手が開き、ボンッと音を立てるようにポニーテールがほどけ、ふさっとしていた。

 

 「ごめんね!急に前髪あげちゃって・・」


 慌てふためきながらすこし頬を赤らめる彼女はすこし不思議でよくわからなかった。


 「いえすいません・・・私も大きな声を・・・」


 さすがにここでは謝らなければならないと思った。


 「あっ!」


 「えっ・・・」


 「やっと話してくれたね!ごめんね!バイバイ!」


 よくわからないまま話が終わった。ほぼ一方通行だったが・・・でももう話しかけないでもらえると助かる。


 「あっそうだ!!!」


 そう思っていたそばからまた・・・


 「私の名前 小波 ふうかって言います!また話そうね!」


 笑顔・・・とても純粋できれいだった。


 この行動を周りが許してくれる君の環境が羨ましい・・・


 そのあとは誰とも関わることもなく一日が終わった。なんでこんな私に声をかけて・・・

 

 いや考えるのはやめよう。また変な勘違いをするから。明日は声かけられないといいな。


 だけど、私の思いに反し、毎日声をかけてくるようになった。

 

 最初はたわいのない話だったが、2週間もするとプライベートな内容に変わってきて、私には少し刺激が強い内容だったり、何がしたいのかわからない子だった。


 それがだんだん日課になってきて、気が付くと一年経っていた。


 この一年間で無視するのも辛くなってきて少しづつだけど話始めた。


 「おはよーー!あしたから二年生になっての初めての夏休みだね!」


 「うん」


 「髪の毛切らないの?なんかもうふわふわ通り越してぼわぼわだけど~」


 私の髪は今や肩甲骨あたりまで伸びて本格的に人を寄せ付けない体になっていた。


 「切るかも」


 「切ったら教えてね!」


 「そうだ!8月の上旬ってどっか空いてる?遊ばない?」


 「え・・・」


 「嫌かな?」


 「いやそういうわけじゃなくて、予定わかんないからまた明日でいい?返事」


 「倒置法!いいよ!」


 ーーーーー


 昔はこんなに人を嫌うやつじゃなかったんだ俺。


 周りの陽キャに囲まれて自分も陽キャだって錯覚して自分を偽って辛くなって、どんどん人間関係が嫌になって悪化して、気づいたら取り返しのつかないことしてて、もう嫌になって人を避けてた。

 

 みんなからの期待と友情がこんなにも軽くて痛いなんて思わなかった、みんなと騒ぎたい、遊びたいこんな子供みたいな欲望で動くんじゃなかった。


 結局キャパオーバーして自分が辛くなって嫌だから遠ざけて自分勝手に怒鳴ってあれだけ回りが心配してくれたのに、あんなに思いやりがある子がいたのに。


 誰とでも話せるって周りからすごいって言われるけど全然できてない俺に言われても・・・


 俺のは自分を押し殺してただけ、俺の意見でみんなを混乱させたくなかっただけ。


 俺の選択はいつも間違うんだ。


 だからさ、、、何も選ばなくて済む君とはきっといい関係になれるって思っちゃったんだ。


 でもそれって俺のエゴじゃん!嫌なんだよそういうの!


 好きとか嫌いとか以前の問題。


 怖いんだよ俺の選択が間違うのが、、、


 君と話せて楽しいって思うだけで何かある気がして。


 君と会話したら空気を壊す気がして。


 また親密になったらきっと本音で話せなくなる。


 ・・・・・・・この選択肢はどうしたら幸せになれる???


 いつになったら私は・・・・・


 「髪切んなきゃな」


 ・・・俺が選ぶから間違える。


 ふうか、今日だけ頼らせて。・・・意志が弱い自分も嫌い


 メッセージを送った


 (おすすめの美容室教えて)


 (お!!!予定の返事かと思ってドキドキしたよ~初めて最初に送ってくれたね!ありがと!おすすめは・・・)


 (ありがとう)


 (楽しみにしてるね!)


 髪の毛もおまかせしてみた。


 誰だかわかるかな・・・


 翌日OKの返事をした。


ーーー

ふうか視点


 8月上旬初めての夏休みデート。


 行先はすべて私が選ぶ完全ランダムのちょっと心配なコース。


 でも、あおくんそういうの好きそう・・・


 多分!


 とりあえず駅集合なんだけど来てくれるかな・・・


 駅に向かう連絡橋の上で、不安を抱えながらきょろきょろしてる。


 「あの・・・」


 あおくん?!!


 そこには、スパイラルウルフカットのアマイマスクのイケメンがいたのでした。


 「あ・・・あのどちら様でしょうか????」


 こんなイケメン知らないこんなイケメン知らない


 この時の私どんな顔してたんだろう・・・


 「えっ・・・私だけど・・・」


 「その声土屋コン?!!」


 「コン・・・?」


 「舌嚙んじゃった」


 「大丈夫?」


 「うん、そんなことより髪切ったんだね!!!チョー似合ってる!」


 「ありがと」


 「じゃあいこっか~」


 「江ノ島へ!」


 「遠くない?1時間くらいかかるけど」


 「大丈夫!」


 私の好きな場所へどうしても連れて行きたかった。


 行きの電車、私がずっとしゃべってあおくんが聞いてみたいないつもの風景だったんだけど、あおくん結構いい顔してた。学校にいるときみたいな死んだ魚の目じゃないどこかキラキラした目で髪型のせいもあるのかなかわいい。


 「江ノ島だ~~~~~~~!」


 「おぉ~~」


 「ねえ早くいこ!」


 「うん」


 「江ノ島だとたこせんべいとシラスカレーパンとあと海!!!!!」

 

 「海はどこでもあるよ」


 「なにいってんのさ、江ノ島の海だから!」


 昔と違って少し話してて楽しい。昔も楽しかったけど一人相撲だとね限界があるから。


 「そっか」


 でももうちょっと反発してもいいんだよ。


 私たちは、江ノ島の中を散策しつつ、しらす丼としらすカレーパンとしらすソフトを食べつつお昼を済ませ島の中を散策した。


 夕方・・・・・・・・・・


 岩場で二人してたそがれていた。と言いたいところだけど疲れて休んでいた。


 「疲れたね」


 「うん」


 私が喋らないのでいつもより静かで、なんか新鮮。


 とぼーっと考えていると、横から熱い視線

 

 なんかあおくんずっと見てくる、、、


 ちょっと恥ずかしいんだけど


 「あのさ、わた・・・いや俺さ、ふうかと今日一日過ごせてよかった」


 「私もだよ、一人称どうしたの?」


 「ほんとは、ずっと俺だったんだ。だけど変わりたくてこうしてた。」


 「うん」


 「でもさ、今日確信したんだふうかと自然体で話したいって」


 「そっか」

 

 「だからさ、ほんとうにありがと」


 「うん!!!こちらこそありがとね!」


 「あとさ、」


 「たくさんの選択肢を間違えて何もかも嫌になってた。けど・・・・」


 彼は泣いていた。


 「あなたに出会えてずっとリードしてくれて、仲良くなれて・・・」


 「ほんとはすごいうれしくて・・・でも言葉にしたら何もかもだめになる気がして。」


 「でも、そんな俺を・・・何も言わない俺がこんなに楽しめるなんて知らなくて」


 「自分でも何言ってるかわかんなくなってきたけど」


 「この関係性が続いてほしいって本当に思ってて・・・」


 「でもそれって、大好きな君を利用してるだけなんじゃないかって」

 

 「選択肢をすべて丸投げして、責任を負わせてって・・・」


 「それが心地よい自分がすごく嫌で」


 「でもずっと一緒に居たい・・・」


 はじめての彼の本音はぐっと心に刺さるものだった。


 友達から聞いた。あいつと居ると不幸になるって、言われてたって。


 でもそんなの間違ってる。その環境を作り出したのは、、、作り始めたのは周りだ。


 なら私がその環境を変えてやる。


 「私ね、友達からなんて呼ばれてたか知ってる?」


 「くそ代官」


 「主役がいるのにさ、私が勝手に仕切っちゃってそれが嫌でみんな離れちゃって」


 「実は女の子と話してるときの私全然違うんだよ?」


 「だからね私が最初に君を利用してたのかもしれない。。。」


 「いつもの自分が出せない環境から逃げて自分の好きな話し方ができる環境を作ったの」


 「だから似た者同士だね私たち」


 「ね・・・私もずっとこんなふうに過ごしたいの」


 「でね・・・この言葉も私から言いたい」


 「ごめんね」


 「大好き!顔も声も性格も私を包んでくれるその大きさも優しさも!」


 「だから私と付き合って!」


 「はい・・・!」


 「こちらこそよろしくお願いします。」



 こうして私たちは付き合った。





 「文章下手でごめんね!」


 お互い様かな?





 




 


 


  


 

 

  

 


 

 


 


「あ!!!勝手に部屋に入ってなにやってんの??!!」


「ふひひ・・・見つけちゃった」


「ねぇ~~~恥ずかしい・・・てかほとんど埋めてるじゃん!」


「いいじゃん私たちの初デートのプランは私が考えたんだし、それに私だって一番思い出あるのそこらへんだし!」


「あっそういえば!書いててね思ったんだけどデートで最初にあった時の私どんな顔してた・・・?」


「・・・」


「なにニヤニヤしてんだよー??」


「軽い女の顔」


「おい!ほかに言い方ないの?!」


「うーん。うん!ない!」




いつもありがとうね。

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