表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

03.八重津 咲良

 太陽くんと初めての出会ったときはこんなことになるなんて想像もしていなかった。

 ・・・太陽くん・・・私に向かっていきなり「君が好きだ!」って。ホント笑っちゃう。

 その時私は接客の仕事中で、周りには結構な人がいたの。そしたら近くにいた4人が「「おおおおぉ!」って盛り上げてきて。でも流石にお断りした。だって初対面だし。私はまだ君のこと何も知らなかったから。


 それからも君の告白は続いて・・・だけどそれも断り続けた。そしたらようやくアプローチを変えて、お食事に誘われた。近くの喫茶店。「シャインマスカットがたくさんの美味しいケーキがあるんだ!」って。なんでシャインマスカット限定なんだぁ〜ってツッコミいれちゃったよ。それで面白くなっちゃって、私は一緒にお食事することにしたの。


 ・・・フフフ。今思い返しても笑っちゃうね。君の会話内容はどれもこれも、僕は君のことが好きなんです!君のことが知りたいんです!って。その感情が通り越してて全部丸わかりだった。

 そんな雰囲気に絆されちゃったのかな。時間と共に、私の心も君を知りたくなっちゃったみたい。


 そうやって変わっていく内に、気付いたら飲み合ってた。気付いたら付き合ってた。気付いたら同棲してた。気付いたら・・・君からのプロポーズを受けていた。

 短くて長い・・・かけがえのない瞬間。

 君からの輪っかを、私はこの手で受け取った。


 君との時間は、とてもとても幸せだった。幸せだった・・・。君の過去を聞くまでは。


 天真 桜。私と同じ名前の子。君がかつて愛した子。君が未だに見つめている過去。

 彼女はその昔、大きな事故にあったらしい。そこでお腹の膨れた母を亡くしたと。だけど悲劇はまだ終わらない。輸血した数年後に感染が発覚。彼女の父が先に亡くなり、やがて彼女も帰らぬ人と・・・。


 君は、私を通して彼女のことを見てたんだね・・・。

 そのことに、気付いた。いや、彼自身が教えてくれたのかな。私のことを試すために。

 私は悩み・・・迷った。けど・・・「それでも私は君が好き」と、彼にそう伝えた。


 その日以来・・・彼が私の名を呼ぶたびに底しれぬ違和感を感じていた。けど、気にしなかった。彼が彼女のことを見ているのは理解している。でもその間にいる私のこともちゃんと見てくれてるって。そう信じていたから。


 ある日、私の全てが裏切られた。

 彼は、天光 月と言う子どもを天真 桜の転生体だと言ったのだ。

 その子とは前に数度会っている。深夜の公園。宝石店の前。彼女たちの通学路。昼間の公園。そして私の自宅。・・・仲良くなった子ども。その子が転生者?

 当然否定した。けど感情的になりすぎて、そしたら話を聞くほどに嘘と思えなくなった。まるで運命に導かれるように私と出会い、彼の前へ現れた少女が、本当に天真 桜の転生体なんじゃないかって。

 結局その日は怒って飛び出し、警察に通報した。

 それから暫くは、あの少女と会っていない。


 冷静に考えればありえない話。たまたま偶然が重なり合っただけの奇跡。彼はその奇跡を運命と思っているようだけど、やっぱりありえない。

 そんな折、数カ月ぶりに天光 月ちゃんともう一度話すことになり、ルナちゃんがやろうとしてることを聞いた。

 

 計画実行当日。全ては上手くいった。ルナちゃんは太陽くんから解放され、太陽くんは天真 桜から解放され、私は太陽くんを取り返した。

 本当に良かった。多分人生で一番安堵した日だと思う。


 更に時間が経って、私は長女を身籠った。その記念に旅行に行くことになった。無理は良くないから近場だったけど。


 たくさん遊んで、楽しんで。旅行先をいっぱい満喫した帰り道で。私たちは事故を起こした。


 私は・・・長女とともに世界から消された。



☆○

 『 事故に起こしてしまった。

     咲良さんが死んでしまった。

      

           君に、会いたい。 』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ