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02.君のことが好きで仕方ないのに、

 ・[主視点]

☆→天真てんま さくら、【転生後】天光あまみつ るな

○→華一はないち 太陽たいよう

□→桜華おうか とも

 君のいない世界は・・・とても辛く・・心が苦しい。今日を精一杯生きてみても、一向に明日が見えてこない。そんな世界で僕は、今日を生き続ける。ひとり・・・永遠に・・・。

 

 大人になった僕は、君のために貯めておいたお金も合わせて旅に出ることにした。名目上は心のケアと自分探しの旅。だけど実際は行く先々で君を探していて・・・まともな観光なんてことはしてこなかった。

 「本当にダメだな・・・・・僕って奴は。」

 そんな折に、一人の女性と出会った。名前はさくら。・・・そう、君と同じ名前。

 ああ、だけど間違えないでね。

 別に運命を感じた訳じゃないから。

 それでも、打算というか・・・・それほどまでに僕の心が消沈していたというか・・・。

 僕はその女性が住む町に、しばらくの間住むことにしたんだ。


 とある町に住み始め・・・あっという間に時間が過ぎていった・・・・。サクラさんともある程度交流を交わし、だいぶ仲良くなった。

 サクラさん・・・・・彼女からは、どことなく君に似た雰囲気を感じる。

 ・・・もしかしたら本当にそんな事があるのだろうか・・・。

 だけど彼女の年齢は僕の2個下。君が生きている間に既に生まれていた人だ。だから彼女が君の生まれ変わりな訳が無い。でもサクラさんから感じ入るものはとてもとても・・・。

 違うな・・・。

 どちらかというと、サクラさんに君を重ねているのは僕の方か・・・・。

 そう。彼女が君に似ているのは、僕がそう信じたいからだ。どんな人にだって似てる部分もあれば違う部分もある。今の僕はサクラさんを通して君のことしか見ていない。だから彼女のことを・・・。

 ・・・・それでもやっぱり・・・満たされていく・・・。心に空いた隙間が・・・・彼女と過ごすことで埋められていく。

 ・・・ああ・・・好きだ。

 ・・・一緒にいて欲しい・・・。

 

 気付けば早いもので、この町に住んでから1年が経とうとしていた。

 もう・・1年。

 ひたすらに長かった筈の1日が・・・今ではこんなにも愛おしい。

 うん。

 ・・・さくら・・・・僕・・決めたよ。

 僕は彼女に告白する。

 好きだと伝える。

 一緒に居たいと伝える。

 絶対、彼女と夫婦になってみせるよ。


『 さくらへ。

 僕は見つけたよ。

 サクラさんへと受け継がれた君の魂を。

 さくら・・・・・僕は君を愛している。

 だからずっと一緒に居ようね。

                   太陽。 』



 「「〜〜〜〜おし〜えの〜にわ〜にも〜、はや〜いく〜と〜せ〜・・・・。」」

 いつからあるのかも知らない・・・卒業ソング。人気だからこそ・・・今も尚残り続けてるんだろうな・・・。

 「・・・・もうすぐだね。」

 ・・・もうすぐやってくる卒業式が過ぎれば・・・また一歩。みんなが私に近づく。

 「中学生かぁ〜・・・・中学生からクラスが複数になるんでしょ?」

 「・・・うん、そうだね。南小学校の子たちも合流するから・・・四クラスだったかな。」

 「四分の一かぁ〜。ルナナぁ〜。離れちゃってもお昼は一緒に食べようねぇ〜。」

 「トモモ、お弁当は高校生からだよ。」

 「あれ?見てないの?」

 「ん?」 

 「この町の給食センターも潰れちゃったから一学期の間は学校側がお弁当用意してくれるって。」

 「そんな事どこに書いてあった?」

 「学級だより。」

 「へ、へぇ〜。」

 後で一応読み返しとこ。

 「・・・まさか他にも何か大事なこと書いてあった?」

 「ん〜・・・特になかったかな。」

 「そっか・・・ありがと。」

 「ど〜いたましてぇ〜。」

 ・・・顎を突き出し両手をハの字に広げながら中途半端に腰を曲げ言葉を返すトモモの動作を・・・私ガン見した上でガン無視した。

 「・・・・・でもさ、お弁当になったからと言っても班ごとに食べる方式は変わらなくない?」

 「まぁその場合は?・・・先生にお願いして?」

 「いけるとお思い?」

 「支持者集めれば、ね?・・・トモとおんなじ考えの人結構いると思うんだ。」

 「あら、そ。」

 「何、他人事みたいな顔してるの?」

 「え?」

 「トモがリーダとして表だって動くんだからルナナはその補佐役になるんだよ?」

 「・・・それ・・決定事項?」

 「イヤ?」

 「イヤじゃないけど・・・。」

 「なら、そう。ルナナは絶対に補佐役。イェーイ!校門演説バンザ~イ!」

 「ちょっと待って?!いきなり話し飛んだよ?!演説すんの?!校門前で?!全校生徒に向かって?!?!」

 「もち!上がるね!」

 「うん!めっちゃヤヴァイね!晒し者じゃん!」

 「何もしないよりやって後悔!ワタシャ町長になるオンナだよ!!こんくらい朝飯前さ!!!」

 「ヨッ!町の大看板!偉大な姿を見せちゃってぇや!」

 「・・・まぁやる前に先生に確認と報告はするよ。第一印象でヤバイ奴認定されるのだけはゴメンだから・・・ね?」

 「第一印象・・・・大事・・・とっても。」

 「ねぇ〜・・・・・。でさ・・・。」

 「ん?」

 トモモの声が急落し・・・。

 「いい加減どうにかしなよ、あの変態。今日もルナナのこと見てるよ。気づいてないとでも思ってるのかな?」

 あまり話したくない内容の会話が始まった。

 「・・・わざと・・・らしい。自分のことを見てって・・・・。」

 「また話しかけられたの!?ホントやばいよ?!何で警察に言わないの?!トモがいってあげようか?」

 「大丈夫。悪い人じゃ・・・ないから。」

 ・・・”私”の中では。

 「いやおかしいじゃん!ルナナのストーカーなんだよ?!毎週毎週ルナナが外出る度に付け回してきて。」

 「いやでも・・・・。」

 言い難い事情があるし・・・。

 「いくら咲良さくらさんと交流があるからってこれは明らかにアウトだよ!」

 「・・・でも・・・。」

 彼をこんなにも落ちぶらせてしまったのは”私”と私が原因だし・・・。

 「なんでいつもこの話題になると口ごもるの!もういい!トモが言ってきてあげる!」

 「やめて!ホントに・・・お願い・・・・・やめて・・・・。」

 彼のことは・・・できれば私だけで解決したい・・・。

 「・・・わかった。今日はもう帰ろ。ルナナの家行く。」

 「・・・うん。」

 ・・・何も言えなくてゴメン・・・トモモ。


 彼と初めて会ったのは咲良さんに深夜徘徊を注意されたとき。けどその時の彼は、多分私の顔を見ていない。すぐさま私が逃げたから。

 次に会ったのは公園。トモモと一緒に遊んでた時。彼は咲良さんと息子と一緒だった。

 最初に話しかけてきたのは咲良さんの方から。

 「久しぶり。」って。そこに息子を連れた彼も合流して・・・そして・・・・。

 「・・・・さくら?」

 彼の呟く小さな息使いは・・・”私”が受けた温もりにそっくりで・・・・それだけで・・私は涙の雫が零れそうになってしまった・・・。

 彼の声には「・・・何?」って嬉しそうな笑顔の咲良さんが反応した。

 それに対して彼は・・慌てた感じで「なんでもない、なんでもない。」って繰り返して・・・それで気付いた。

 彼は今・・・”私”の名前を呼んだんだって。

 私はまた・・逃げた。そして・・決めた。もう会わないって。

 たった一度・・・正面どうし向き合っただけで、彼は”私”の名前を呼んだんだ。このまま会い続けると・・きっとろくなことにならない。それはただの勘でしかなかったけど・・・どこか心の奥の方では確信めいた何かを感じ取っていた。

 だけどそんな腑抜けを神様は許してくれない。悪魔はいつだってオモチャを弄ぶんだ。


 「僕のこと、覚えてるかな?少し話さない?」

 いつものように暇な時間を使って・・一人走りながら過ごしていると・・・彼に声をかけられた。こんな変質者、普通であれば逃げるべき案件・・・なんだけど・・・その時の私はその選択肢を選べなかった。


 ・・・彼から聞かされたのは彼の過去。・・・つまり”私”との記憶。そして”私”と私の関係性。前者に関しては無関心を決め込み、後者に関しては当然・・否定した。

 けれどもそれを、彼が完全に信じることはなかった。きっと私が直感で何かを感じ取ったように、彼も心の奥深くで確信めいた何かを掴み取ったんだと思う。

 その日以降・・・何度も何度も・・・彼は私に話しかけてきた。


 ・・・最悪だ。

 忘れかけていたこと。

 忘れようと努力したこと。

 全てが思い起こされる。

 彼と会うたび一つ一つ・・・ゆっくりと。

 それは私の人生じゃないのに・・・。


 「やめてください!」

 私は叫んだ。

 「これ以上話しかけるなら通報します!」

 叫んだ。

 「・・・・ごめん。」

 だけど彼は、ただうなだれて謝るだけ。「もうやめます。」の一言も言えない。なのに・・・その行動一つ一つが愛おしく・・・懐かしく感じてしまって・・・・。

 もうイヤ・・・。

 消えてよ・・・私の前から・・・・。

 そう思いはするのに・・・言葉にはできない・・・。だってそれは本音じゃないから。


 この日以降、彼は遠くから私のことを見るようになり・・彼の方から話しかけてくることはなくなった。

 

 「あの人・・・めっちゃこっち見てない?」

 トモモは・・・この異変にすぐ気づいた。

 いや、気づいて当然かな?

 彼は周囲に紛れて堂々と私のことを見ていたから。

 

 「あの、見るのはもういいんでせめてバレないようにしてくれませんか?」

 一人になったタイミングで、そう、彼に頼んでみた。

 こんなこと、早く通報すべきなのに・・・・。

 本来であれば明らかにおかしい行動。この行動のせいで彼は更に確信めいた何かを掴むかかもしれない。だけど・・・。


 この行動は今の私でも最善手だったと思っている。

 一つ。

 彼に見られるのは・・・複雑ではあるものの・・まぁ嬉しくもある。

 一つ。

 彼を通報したくない。

 一つ。

 これ以上彼を傷付けたくない。

 一つ。

 彼とさくらさんの関係を壊したくない。

 一つ。

 彼とは離れた距離にいるべき。

 一つ。

 トモモにこの事実がバレてほしくない。

 一つ。

 トモモと過ごす時間にあまり割り込んでほしくない。


 ・・・他に何かいい方法・・・あったかな・・・。

 そのことをどれだけ繰り返し考えてみても、今の私では他に何も思いつかなかった。


 ・・・彼は拒否した。私の頼みを。

 彼曰く、ひっそりと隠れながら見ていると通報される可能性が高いから・・と。それともう一つ。単純に自分のことを私に見ていてほしいから・・と。

 私は結局、彼の意見を受け入れてしまった。けれどそれと同時に、私の中のにいる彼が少し遠のいてしまった。

 

 彼は変わってしまった。”私”の知っている彼は、変わってしまっていた。それとも・・・これこそが彼の本質だったのだろうか?いや、それすらも違うかもしれない。彼は変わってしまったのではなく、変えられてしまったのだ。”私”と私、死者と生者の手によって。

 なればこそ、私はけじめをつけなければならないと思う。彼との関係に・・・。”私”との関係に・・・。

 

 


 「ーーー・・・卒業証書 授与。」

 「ーーー・・・天光(あまみつ) (るな)。」

 「はい!」

 

 ーーー・・・もうじき・・・”私”の命日がやってくる。

 その日までに・・・彼との全てを断ち切ってみせる。

 そして当日・・・私は”私”に別れを告げる。

 それですべて終わる。

 覚悟は決めた。

 もう悩まない。


 ピーンポーン・・・と、微かに音が鳴り響く。

 「はいはーい。どちら様で・・・。」

 ガチャリ・・と扉が開き・・・中から咲良さんが顔を出した。

 「こんにちは。ルナです。」

 「トモもいま~すで~す。」

 「あら、いらっしゃい。久しぶりね、二人とも。さ、あがってあがって。」

 

 「はい。ジュースとお菓子。」

 「ありがとうございます。」

 「それで?今日はどうしたの?太陽くんがいないことの確認連絡までして。」

 「・・・・その・・・太陽さんのことで少し・・・。」

 ・・・・落ち着け。

 「・・・もしかして何かされたの?」

 「・・・その・・・。」

 大丈夫だから・・・落ち着いて・・深呼吸・・・。

 「トモが言おうか?」

 「大丈夫・・・・・フゥ。」

 「もしかしてこの前、月ちゃんが友ちゃんに口止めしてたこと?」

 「・・・はい。」


 ・・・この前・・・咲良さんと三人で話していた時に、トモモが私の静止を無視して咲良さんにストーキングのことを話そうとした。だから私は・・・トモモの口を手で抑えた。咲良さんが言っているのはこの日のこと。

 ただこの日、トモモの口を抑えようとした瞬間の焦りと勢いが強すぎて・・・トモモを床に押し倒してしまった。そのせいでトモモは頭を打って・・・・本当にごめん。


 「ということは・・・・。月ちゃんが言いたいこと、何となくわかったわ。・・・私から言っていい?」

 「・・・はい。」

 「実はね・・・私、ここ最近の太陽くんの様子がおかしいって感じちゃってね・・・それで色々と探ってみたの。そしたら彼、ストーカーみたいに君たちの後を付け回してて・・・。合ってる?」

 ・・・・知ってたんだ。

 「その通りなんですよ!ホントキモくてキモくて。それでトモ、ルナナにこの事警察に言おうって言ったのにそれをずっと嫌がってて。・・・だからせめてさくらさんには伝えようって。それが今日、ようやく叶ったんですよ。ホント面倒くさい。」

 「・・・ごめん。」

 「二人とも・・・本当にごめんね。太陽くんのこと。私自身、太陽くんがなんであんなことしてるんだろっていくら考えても全然わからないし・・・私がやめてって言っても全然聞いてくれないの。」

 「・・・ごめんなさい・・・私のせいで・・・。」

 「謝らないで。月ちゃんは何も悪くないんだから。」

 「そうだよ、ルナナ。あの人の頭が全面的におかしいだけなんだから。」

 「本当にその通りよね。・・・わかった。今日の夜、太陽くんともう一度話し合ってみるわ。それでだめだったら警察に連絡する。・・・それで許してくれる?」

 「・・・わかりました。」

 「トモは許さないから。ルナナとの時間邪魔されて許せるわけないじゃん。」

 「「・・・・・。」」

 「・・・今日は・・帰ります。」

 「・・・二人とも、今日はありがとう。それと本当にごめんね。」

 「・・・・・・また。」

 「ばいば〜い。」

 

 咲良さんの家からの帰り道・・・トモモに少し強めの口調で問われた。

 「・・・結局今日も、ルナナからは全然話さなかった。なんで?」

 私はそれに・・・。

 「・・・ごめん。」

 とまたしても謝ることしかできなかった。

 「またそれ。なんなの?なに?なんであの人の話を始めるとこうなるの?」

 「・・・それは・・・・。」

 ・・・言っていいのかな・・・。

 「ルナナさ・・・・・・・。あの人のこと好きなの?」

 ・・・驚愕・・・しかし。気づかれて当然・・・なのだろうか。気づくための材料は揃っていた。恐らく。だとしたら私は・・この事実をトモモに指摘してほしかったのか?

 「好き・・・なのかな・・・。」

 無知な振る舞い・・・。それが私の取った行動。本当に・・・ 最低のクソ野郎だ。恋に悶える人間はここまで盲目的に・・愚かしくなってしまうのか・・・。

 

 バチンッ!と、辺り一帯に大きな音が鳴り響いた。

 頬がズキズキと痛む。

 トモモが涙を我慢している。だけど雫は落ち続ける。

 その光景に呆けていると・・・彼女は一人、去っていった。その背中を・・・追いかけるだけの勇気を私は振り絞れず・・・・・・。結局全身から力が抜け・・・私は深い水底へと落ちていってしまった。

 

 「君!大丈夫か?!」

 遠くの方から声がして、私の意識は現実に引き戻される。

 「気分でも悪いんか?!救急車必要か?!」

 遠くからした声が今度は真ん前から聞こえてきて・・・私は驚き後ろに倒れた。

 「あ、え?」

 「おい嬢ちゃん、大丈夫か?一人で立てるか?」

 「あ、はい。」

 知らないおじいさん・・・いつの間に・・・。

 「ほんまに大丈夫かいな。目ぇ真っ赤っ赤やて。・・・ほらハンカチ。」

 「あ、ありがとうございます。」

 わ、いい香り。

 ・・・おじさんのなのに。

 て、違う。

 どうしよ。

 私から立ち去るわけにはいかないし・・・だけど今は早く一人になりたい・・・。

 「元気なったか?」

 「あ、はい。」

 「そうか。良かった良かった。・・・のぅ嬢ちゃん。」

 「なんですか?」

 「悩むのは結構。じゃけん、しょいこみすぎたらアカンよ。嬢ちゃんはまだ若いんやさかい。」

 「あ・・はい。ありがとうございます。」

 「かッかッかッかッ・・・。」

 ・・・・・それでようやく・・変な笑い方のおじいちゃんは遠くの方へと去っていった。


 

 『トモモ。ホントにごめん。』 18:36


 ・・・その日の夜はなかなか寝付けなかった。なのに朝一で目が覚めて・・・。


 『ホントにごめん。今日会える?』 8:08

 

 『連絡、欲しい』 9:00

 

 『会いたい』 9:05


 『会いたい』 9:15


 『本当にごめんなさい。』 9:24


 『でもルナはトモモのことがいちばん好き』 9:24


 『あんなストーカー野郎のことなんて

  嫌いだから』          9:25


 『トモモのことがいちばんすき!』 9:25


 『だからお願い』 9:25

 

 『返事して』 9:25


 『ねえ』 9:25


 『お願い』 9:25


 『返事欲しい』 9:25


 『今から家行く』 9:27


 『だからお願い』 9:27


 『会って』 9:27


 『ついた』 9:30


 『チャイム押すね』 9:30


 ・・・ピーンポーン。

 「はい~?」

 出迎えたのは・・・トモモの母親。

 「・・・こんにちは。ルナです。」

 「あれ?るなちゃん?ともと遊びに行ったんじゃないの?」

 「え?」

 ・・・本当に私は・・・。

 「とも、朝早くから支度して出かけて行ったからてっきり今日もるなちゃんと遊びに行ったんだと思ってたんだけど。」

 「・・・・・・わかりました。ありがとうございます。」

 探さないと。

 「上がっていかなくて大丈夫?」

 「大丈夫です。」

 急いで探しに行かないと。

 「そう。それじゃあまたね。」

 「はい。」

 おいていかれる・・・。


 ・・・私は走った。


 『今どこにいるの?』 9:34


 ・・・トモモを探して。


 『公園?』 9:35


 ・・・町中を。


 『コンビニ?』 9:39


 ・・・ひたすら走った。


 『図書館?』 9:51


 ・・・どこまでも。


 『本屋さん?』 10:09


 ・・・どこまでも。


 『スーパー?』 10:14


 ・・・どこまでも・・・・・。


 『服屋?』 10:30


 『パン?』 10:36


 『ケーキ?』 10:36


 『駄菓子?』 10:37


 『おしえて あいたい』 10:39


 『いつもの公園で待ってる。』 11:33


 『もうすぐつく』 11:36


 ・・・のど・・・乾いた。

 ジュース飲みたい・・・・。

 なんでお財布持ってこなかったんだろ・・・。

 「ハァ・・・・。」

 ・・・・公園まであと少し・・・。

 そしたら給水器がある・・・。

 「ハァ・・ハァ・・・・ン・・あと少し・・・あと少し・・・・。」

 長い事走り続けたせいで、息が続かない。辛い・・・・・・苦しい・・・・。でももう少し・・・・。そしたら・・・・ーーーー。


 ーーー・・・そしたらトモモに会える。

 会える・・・会える・・・会える・・・会える・・・・・・会え・・る?

 あれ?

 なんで?

 あれ?

 なんで会えるんだっけ?

 私・・・どこ向かってるんだっけ?

 トモモは?

 どこにいるの?

 あれ?

 ここどこ?

 私公園に・・・そうだ、公園に着いて。

 それで?

 なんで公園にいるんだっけ・・・。

 トモモは?

 トモモ~?

 お~い。

 どこにいるの~?

 トモモ~。

 トモモ~・・・。

 トモ~?

 トモちゃ~ん?

 トモさんや~い・・・・。

 ねぇ・・・隠れてないで出てきてよ~。

 ねぇ・・・・・。

 ねぇってばぁ・・・・。

 トモモ~・・・。

 ねぇホントに・・・あ、太陽!

 トモモ見てない?

 さっきから探してるのに全然見つからないの。

 ・・・太陽?

 あれ?

 たいよぉ~・・・・どこいったの~・・・。

 ねぇ・・・太陽~・・・。

 トモモ~・・・。

 ねぇ・・・。

 ねぇ・・・。

 ねぇってば・・・。

 ねぇ!

 そういうのほんとにやめてよ!

 ねぇ!

 どこにいるの!

 はやくでてきてよ!

 ねぇ!

 ほんとに!

 おねがい!

 ねぇ!

 どこ!

 いや・・・いや・・・・。

 ねぇ!

 ほんとに!

 いやなの!

 こわい!

 やめてよ!

 たすけて!

 でてきて!

 どこにいるの!

 ねぇ!

 こわい・・・こわいの!

 ほんとに・・・いや!

 ひとりこわい!

 どこ!

 ねぇ!

 ひとりにしないでよ!

 ねぇ!

 ひとりにしないで!

 こわいの!

 ひとりにしないで!

 ねぇ!

 さみしいの!

 こわいの!

 たすけて!

 ひとりにしないで!

 ひとりにしないで!

 ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!ひとりにしないで!



 「ハァァァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・ハ・・ハァ・・・・。」


 ・・・体が冷たい。強張った手が震えている。布団の裾を握りしめた拳が開かない。涙と汗が混じって服と枕がびしょ濡れ・・・。


 ・・・大丈夫・・・大丈夫・・・大丈夫・・・。

 落ち着け・・・私・・・。

 「・・・ふぅ・・・よし。こいつらはとりあえず洗濯にだそう・・・・・。」


 昨日は結局・・・公園で6時間くらい待ったけどトモモはやってこなかった。


 『いま公園ついたよ』 11:41


 『待ってる』 11:42


 『今日は帰るね』 17:02


 「既読はなし・・か・・・。壊れてるわけじゃないよね???」


        12:12 『お昼はどうするの?』


 『ごめん!大丈夫!』 12:12 既読


        12:13『りょうかい。(ピシッ!)』


 「壊れては・・ない。・・・・・壊れてないか・・・。」

 そのことに・・・少し気が落ち込む。

 とりあえず朝ご飯・・・はいいかな。

 なんか気分悪いし。

 ・・・熱でも出たかな。

 後で測っとこ。


 「ハァ・・・。」

 今は・・・もう動きたくない。

 体がだるい・・・。

 ああでもベッド・・・。

 ・・・・無理。

 

 結局その日はパパのベッドに入り込むことにした。隣でカタカタと音が聞こえてくるけど、今はそれすらも心地良い。私はひとりじゃないんだって・・・そう感じるから・・・。

 しばらくはここで寝ようかな・・・。

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