表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

04.大切なのは・・・

 トモモの症状を治すためには、登下校以外にもこうして外を歩いて・・・「大丈夫・・安全だよ。」・・・と教えてあげることも大事・・・・なんだけど・・・。

 ・・・彼はまだ、どこからか私たちのことを見ているかもしれない。それなのに私とトモモはこうして外を歩いている。そう考えると・・・やっぱりこれはやめたほうがいいのだろうか・・・。

 いや・・・でも私が注意さえしていれば・・・。

 そうさ・・・どのみちトモモが持つ、”安全圏の外”に対する恐怖心や不安は治していったほうが心の治療に繋がっていくんだ・・・。

 「ルナナ・・・三周・・・終わったよ。・・・家入ろ。」

 「あ、うん。」

 ・・・家の周り・・人通りのある道を三周。・・・できることならもうちょっと範囲を拡げたい。・・けど今はまだ・・・。危険があるかもしれないし・・・トモモ自身も辛そうだから。

 ・・・できることならゆっくりやっていきたい・・・だけど・・・。

 ・・・・私は後数か月で十五になる。そうなったら残りは一年・・。時間がない。十六歳の誕生日が迫ってるんだ。それまでになんとか・・・トモモにはひとりでも頑張れるようになってもらわないと・・・。だって・・・。


 ・・・私は・・・まだ送れていない。彼に・・・。『君と結婚するから、トモモには手を出さないで。』・・・と。

 ・・・彼と結ばれる。それに対する喜びは一切ない。あるのはトモモに対する心配か安堵・・・それと彼への嫌悪感のみ。

 ・・・トモモの症状が治らないままに私が彼と結ばれてしまうと・・・トモモは最悪自殺するかもしれない。それだけじゃなく、トモモが独り立ちできなかった場合でも多分・・・おんなじことになりかねない・・・。それほどまでに今のトモモは不安定だ・・・。

 だからこそ早急に以前のトモモに戻ってもらって・・・そのうえで私がトモモから離れていく。そうすればきっと大丈夫。一度立ち直ったトモモなら・・・私に見捨てられてもきっとまた立ち直ってくれるはずだから。

 そしてそうなった場合。私は彼と結ばれることになる・・・。

 ・・・最悪だ・・・今は完全に嫌悪感しかない。

 こうなったのは彼がトモモに手を出したからだ。

 ・・・あの瞬間・・・トモモが絡んだことで、私の呪縛は完全に解かれた。こうなった以上、私が再び彼を好きになることはないだろう。

 ・・・彼との婚約を改めて考えたことで、そう・・・確信できた。

 

 ・・・だけどそのせいもあって・・・このメールを早く彼に送るべきなのだろうかと今も悩み続けている・・・。

 仮に送ったとして・・・そうすればトモモの安全は確保できるかもしれない。・・・けど、それまでにトモモが変われなかったら・・・。

 私が彼の下へ行ったなら、トモモが自殺するかもしれない・・・。私が彼の下へ行かなかったら、彼の逆鱗に触れてしまうかもしれない・・・。どちらもあくまで可能性の話し・・・だけど・・・捨てきれない。自殺未遂を起こしたトモモ・・・。そしてその原因を作った犯罪者・・・。そんな二人だから・・・。


 ・・・いや・・例え送らなかったとしても彼の下へ行かなければ・・・その時点で彼の逆鱗には触れてしまうか・・・。

 どの道私には選択肢がないんだ・・・。

 そうさ・・・結局のところ私がこのメールを送りたくない理由は、自分の意思でそれを決めてしまうのがただひたすらに嫌なんだ。

 ・・・せめてもの抵抗ってやつか・・・。


 ・・・もうしばらく考えて、やっぱり原点に戻ってみた。つまり、警察への通報。

 ・・・トモモの件だともう時間が立ち過ぎてて無理だけど・・・私が手を出されたら・・・それができる。そんなことしなくても・・・私が十六歳になれば彼は必ず何かしらやってくる。だからそこで通報すれば・・・。だけどどの場合でも懲役満了で出てきてしまう。そこから捜索されるようなことになれば・・・。

 明るい未来が一瞬で暗転するかも・・・。


 ・・・悩んでも仕方がない・・・か・・・。

 ・・・わかってる。その通りなことくらい。でも・・・。

 ・・・こんな状況じゃ悩まずにはいられない。どうあがいたって悩み続けてしまう。答えが欲しいのに答えなんてものが存在してないんだから・・・。


 ・・・いっそ彼をこの手で・・・・。

 ・・・そんなことを考えもした。それこそが彼を壊してしまった私の責務なんだと・・・そう思って。

 それに彼はこの悲劇の根っこ部分なんだ。これを除去さえしてしまえれば・・・。

 ・・・・やっぱりないな。

 ・・・ありえない。

 それだけは絶対にだめだ。


 ・・・・やっぱり私が彼と結婚するか、警察へ通報するかのどちらかしかないか・・・。

 だとするならやっぱりこのメールは送らないほうがいい?彼と関係性が深くなるだけだし・・・。

 ・・・いや、この内容なら「脅されていた。」で十分なんとかなるか・・・?

 ・・・だめだ・・・結局この悩みは解消されてない・・・いや違う違う。

 解消はされてるんだ。

 送ったほうがいいに決まってるんだ・・・。

 ただ私が意地を張っているせいで悩んでいるだけなんだこれは・・・。

 ・・・そうさ・・・。

 ・・・トモモの安全を考えるなら送ったほうがいい・・・。

 絶対に送ったほうがいい・・・。

 送ったほうがいいんだ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ