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01.君のことが好きなのに

 「ててて・・手!出して!」

 「手?・・・はい。」

 すると君は・・シロツメクサで作られた指輪を、私の薬指に通してくれた。

 「やや・・約束!結婚!僕と・・・結婚すること!」

 「・・・・・・うん!」

 顔を赤らめる君に、私は幸せ溢れる笑顔を返した。

 まだ小学生に成り立ての二人が誓いあった、しあわせ色に輝く花道。・・・・何時まで経っても忘れられない思い出。嬉しくて・・恥ずかしくて・・・でも幸せいっぱいの・・一番初めの・・一番大切な君との思い出。・・・絶対に忘れることのない思い出。

 

 君は覚えてる?

 あの日の出来事。

 私の初めての指輪は”右手”の薬指だったんだよ。

 でも気づいたのは家に帰ってからだったから・・・。

 笑っちゃうよね・・・・ふたりとも気づかなかったなんて。

 ああ・・・この前までは思い出すたびに笑顔になれたのに・・・・・・・今では・・思い出すたびに胸が締め付けられる。

 ・・・ごめんね・・・・・ごめんね・・・・。



 高校生活2回目となる桜散りゆく温かな日差しの下で、君は病に倒れ余命宣告を受けた。もう長くはないと・・・。

 涙を流す僕を慰める君・・・。

 「なんで・・・どおして・・・。」

 僕は無力だ・・・。君の側にいてあげることしかできない。祈ることしかできない。願うことしかできない。

 「ああ・・神様!お願いです!お願いします!どうか・・どうか・・・・さくらを・・・・さくらを・・・・。」

 


 神様はいるかもしれない。・・・けれど願いを聞き届けてくれる神様はいない。だから・・・記憶を残したままの輪廻転生・・なんてものは信じていない。来世の私は私じゃない。それでも・・・君には囚われてほしくないから・・幸せになって欲しいから、嘘を付いた。それが・・・君へ贈る最後の愛。

 だけどそれじゃ寂しいから・・・わがままを1つだけ。

 「私のこと、忘れないでね。」と。

 この言葉が・・呪縛になってしまうかもしれない。そんなのは嫌。でも私のことを忘れられるのはもっと嫌。 

 だから・・・ごめんね。



 「きっとどこかで生まれ変わった”私”は幸せに生きているから・・・君も・・幸せになってね。だけど・・それでも・・・・私のことは、忘れないでいてほしいかな。」

 それが最後の・・君からのお願いだった。

 忘れるわけがない。忘れられるわけがない。

 今を生きること、これを諦めないでほしい・・けど・・・・・。もし本当に君が生まれ変わってしまったのなら、絶対に君を見つけてみせるから。君が探さないでねと言ったとしても、絶対に見つけてみせるから。

 だって僕は・・弱いから・・・。


 

 こんな私のことを好きでいてくれる。そんな君が大好き。だからこそ・・私も私が好きでいられる。

・・・ねえ?・・・・お願い・・・。

 薄れゆく意識の中・・・・哀しみに濡れる君の頬を・・この手の指先で確かに感じた。

 温かい。

 ありがとう。

 ありがとう。

 ありがとう。

 君が側に居てくれただけで、私は救われた。幸せでいれた。しあわせ色の花が咲き誇る愛の園に抱かれて・・最後まで・・・・。

 だからこそ・・ごめんね。

 本当に・・ごめんね。

 君を置いて1人、先に旅立ってしまって・・・。

 感謝と・・謝罪と・・愛と・・願いと・・・・たくさん伝えたい。

 何度も繰り返したい。

 だけど・・もう・・・・・私の体は動いてくれない・・・・。

 さよなら・・・私だけの太陽。

 ありがとう・・・私に温もりをくれて。

 大丈夫。

 太陽は一人でも輝き続けるから。

 きっと大丈夫・・・・。


 

 人類の進化に合わせて進化し続けた未知のウイルス。UV001(ユーブイダブルオーワン)。通称ゼロイチウイルス。これは直接の性行為や輸血などによって感染する型。その後数年間をかけてゆっくりと増えていく。それがある一定量に達すると発症。数日の間に一気に増殖し、生物の体組織を破壊し尽くし死に追いやる。

 唯一できることと言えば・・・感染後、薬を服用し続けることで発症リスクを抑えることができるのみ。発症後は気力と体力で踏ん張るしかない。・・・そう。このウイルスに完全な治療法は存在しない・・・。

 ・・・さくらとさくらの父親も・・・事故の治療で受けた輸血により感染・・・その後の定期検査で発覚した。そしてその発見が早かったおかげで・・・僕は感染を避けることができた・・・・。

 できたんだ・・・。

 ・・・その後もさくらは諦めてなくて・・・入院を続けながら治療法の研究を手伝ってたみたい・・・だけど・・・。

 外を散歩中に発症して・・・・だけどさくらは・・耐えて・・・耐えて・・・耐え抜いて・・・生き続けていた。

 だから何度も願った。願い続けた。

 発症後の致死率は高いとはいえ百パーセントではなかったから。

 ・・・・それでもその願いが叶うことはなかった。


 ・・・ーーー「改めて自覚したよ。神様なんていないんだって・・なあ!」

 天を仰ぎ叫んでみても・・・返ってくるのは木霊だけ。・・・君に届くこともない。

 「誰か・・教えてよ・・・。僕はこれからどうやって生きれば良い?君がいない世界で・・・どうやって笑えばいい?もう何も・・・・何もわからないんだ。僕だけじゃ何も考えられないんだ・・・・。」

 僕は弱い。僕自身が思っていた以上に。

 君がいなくなったことで、その事実が色濃く映る。気分が沈み続ける。このままじゃ僕は・・・僕を嫌いになってしまう・・・。

 ・・・・・別に良くないか?

 君はもういないんだ。

 そんな世界で、僕に生きる意味はない。

 ならいっそこのまま・・・君の元へ・・・・・。

 ・・・そんなこと・・・許されるわけがない・・よね。

 ・・・うん。

 ・・・そうだよね。

 ・・・だから・・許して欲しい。

 君を探すことを。

 それだけが・・今の僕にとって唯一、生きる理由になり得るから。



 神様ってやつは・・・本当にいるらしい。

 なぜかって?

 私が生きているから。

 記憶を残したままの生まれ変わりが起きたから。

 ・・・・・。

 私は一度死んだ。とある病に冒されて。奇跡なんていうくだらない神様の微笑みを覗くこともなく。

 だけど嘲笑はあった。

 まさか前世の記憶を持ったまま赤ん坊からやり直すことになるなんて。

 お陰様で公開処刑されてる気分だったよ。

 ど・う・も・あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す・ね!か・み・さ・ま。

 「はぁ・・・。」

 なんでこうなるかなぁ・・・。


 生まれ変わってから初めの方の生活は、食って出して寝て起きてくらいしかできなかった。後は、ばぶ語で喋るかはいはいするかくらい。

 でも一年も過ぎれば言葉も増えて歩けるようにもなってめちゃくちゃ喜んだ。内心で。これでようやく公開処刑から開放されたんだから。・・・って思ったのも束の間、トイレ高すぎ。泣いた。

 頑張って歩いたのに・・・。

 我慢したのに・・・。

 あ、いや、我慢はできてなかった。

 うん、普通に無理だった。

 だからもう暫く経つまでは諦めることにした。

 

 生まれ変わってからはや2年目。

 赤ちゃんライフ満喫してますぅ。

 ばぶばぶぅ〜。

 ・・・・・退屈。

 1日の殆どを寝て過ごしているとはいえ、やること・・・いやできることが少なすぎる。

 ・・・・正直前世での入院生活みたい。

 まぁある意味では今の私も囚われの身だし仕方ないか・・・。



 来年からは小学生!と張り切ってはみるものの。喜びの感情はあまり湧いてこない。どちらかというと、恐れや不安のほうが強い。

 ・・・・小学生になれば、当然の如く行動範囲が広がる。年を取れば更に。

 私は前世と同じ地域に生まれ変わった。なればこそ、君が近くにいるかもしれない。

 もし私が君を見つけてしまったら・・・。私は今世の私でいれるのだろうか。

 もし君が新しい人を見つけていたのなら・・・。私は・・前世の”私”を捨てられるのだろうか。

 ・・・・君に会いたい。

 ・・・君が好き。

 その想いは・・・今尚強く灯り続けている。だけどこれは”私”の物。”私”の想いは過去に置いてきた。絆いだのは願いだけ。

 ”私”がそれを望んだから。

 私がそうと決めたから。

 私は”私”じゃない。

 私は君には会わない。

 私は君が嫌い。

 ”私”は・・・・。


 「色褪せることなく月は輝き・・・月光届くは大地の底にて・・・灯火今尚燻り続く・・・。」


 君のせいだ。

 どれもこれも全部・・君のせいだ。

 君という光が私を照らすせいで、”私”が何時まで経っても消えてくれない。

 だから・・・仕方ないよね。

 人は太陽なくして生きてはいけない。

 私にも君が必要。

 そういうことで。

 私は”私”じゃない。だけど私も君が好き。それが私の本能。

 そもそもよくよく考えてみたら、別に私が君を好きになろうと死人には関係のない話。

 何を迷っていたのか。

 気分晴れてスッキリ快調。

 やったね!


 ・・・と、君が好きと自覚してからはや数年。少しセンチになった時期もあったりしたけど至って健康に育ちました今日この頃。外を歩くたびにキョロキョロと探しますはヒトヒカリの宝物を遂に見つけることができました、が、しかし・・・・。


 「ハハハ・・・笑えるぅ〜・・・・・・。」

 何を期待していたのか。こうなることを願ったのは私だと言うのに・・・。

 ああ・・・。ソラを覗けば嘲り笑うその顔付が視界いっぱいに浮かぶ浮かぶ。

 やっぱり神様は神様なんだ。平気でオモチャを弄ぶ外道。人が望んだ形なんかに染まらない自由人。いいさそれで。私だってそもそもお前のことなんて信じていなかったから。 

 でもやっぱり腹は立つから・・・、

 「死ね!くそ鬼畜悪魔野郎!」

 深夜の公園、誰もいない世界のど真ん中で思いっきり叫んでやった。

 「はースッキリ。バレないうちにか〜えろ。」


 「・・・・・・真っ赤なおッは〜な〜の〜・・ト〜ナカ〜イさ〜ん〜は〜・・・・・」

 「ねぇ・・そこの君・・・・。」

 「ッッ?!」

 気分揚々に季節外れのクリスマスソングを歌いながらスキップをかましてた帰り道の途中で、後ろから突然女の人の声がした。

 バッ!と振り返ってたけど暗くて顔がよく見えない。

 ヤバい。

 変態か警察か・・・。

 いや、考えるよりも前に・・・逃げるが吉!

 「さらばッ!」

 小声で叫び全力ダッシュ。

 ここ最近動けるのが楽しくて走り回っていた私の体力を舐めるなよ!

 はははははは!

 

 楽しい・・楽しい・・苦しい!

 前世では大人になるにつれて激しい運動ができなくなったあげく、最終的には病床生活だったから。

 ああ・・こんなにも気持ちの良い苦しさはいつぶりだろうか。

 息が上がって、脚が痛くなって、腕が上がらなくて、苦しくて吐きそうになって・・・だけど止まれない。

 後ろから何者かが追ってきてるかもしれないから。

 「はははははッはッはッはッはッ・・ハァ・・・ハァ・・・。」

 着いた・・・家・・・着いたぁ・・・。

 早く・・鍵を・・・。


 ベッドでひとしきり休むと、どっと疲れが押し寄せてくる。それは頭が正常に戻った証。そこに徹夜での眠気も加わり、私の意識は深い地の底へと落ちていった。

 

 

 ・・・・・・・・。

 私・・・川の流れる音が好き。

 木の葉が風に揺らめく音や、夜に響くカエルや虫たちの大合唱も。

 ・・・君は?

 ・・・・その女の人?

 誰それ・・・待って・・・なんでその人と同じ指輪してるの?

 私との指輪は?

 シロツメクサで作ってくれた私との・・・待って!

 行かないで!

 私を置いて行かないで!

 いやッ!

 ひとりにしないで!


 「・・・・・・涙・・・・・泣いてるのは・・私?・・・それとも・・・”私”?」


 ・・・・・・・。

 嫌な夢を見たせいで、昨日の朝のことを思い出してしまった。

 「はぁ〜あ〜。早く支度しない・・とぉ!時間!ヤバイ!遅刻してるぅ〜・・って今日は休みだった。」

 

 「おはよぉ〜。」

 「おはよう、お寝坊さん。昨日は夜更かしでもしたの?」

 「・・・うん。まぁ〜ねぇ〜。」

 コーヒーカップ片手に問いかけてきたママに対して、手の甲を使い髪をかき上げ大人の女性っぽく返事を返した。

 「あんまり夜更かしするようなら一緒に寝てあげるからね。・・・チュッ。」

 ママの投げキッスに私は・・胸の前で腕を交差しバリアを張る仕草を取る。そして体を左右に振りながら・・・

 「い〜や〜。」

 と拒絶を示した。

 「ママといっしょに寝るとベタベタ引っ付いてくるも〜ん。」

 そう。ママと寝るとさっきの投げキッスが直で!マシンガンの如く!飛んでくるのだ・・・。たまったもんじゃない。

 「だって可愛いんだも〜ん。」

 更に甘えの雰囲気を強めるママに・・・

 「い〜や〜。」

 私は動作を激しくする。

 「も〜・・・。」

 「「アハハハハハハ。」」

 少し寂しがるママと二人笑い合い・・・ママはカバンに手を通す。

 「それじゃあお母さん、お仕事行ってくるね。」

 「は〜い。」

 「桜華おうかさんもすぐに来るみたいだから。」

 「わかった〜。いってらっしゃ~い。」

 「行ってきます。」

 ・・・ガチャリ・・・と音がして・・・私は今日もひとりになった。


 ・・・嫌だな。

 静かな場所で一人になると、つい考え込んでしまう。昨日のこと、前世のこと。他にもたくさん。

 ・・・あれは確かに”私”が望んだ光景。だけどいざ目の前で見てしまうと・・・心が締め付けられる。彼が手の届かない存在となってしまったことを改めて自覚してしまうから。

 どうしたらいいんだろ・・・なんて考え込んでしまうけれど、どうすることもできやしない。彼には奥さんがいて、子供がいて、幸せな家庭があって・・・。それを壊すことなんて私にはできないし、やりたくもない。彼にはこのまま幸せでいて欲しい。”私”のことを記憶の片隅にしまいこんで、ずっと・・・。


 落ちた視界・・・静かな世界の中に・・・ピーンポーン・・・・と少し甲高いチャイムが鳴り響く。

 「こんにちわ〜。」

 桜華さん・・・お父さんとお母さんが仕事に行ってて、私が一人きりになってしまうときに来てくれる人。”トモちゃん”、と言う”私の友達”のお母さんでもある。

 その人が今日も来てくれたんだけど・・・正直要らない・・・。

 だって私の精神年齢は高校生以上だし。

 一人でも全然大丈夫だし。

 ・・・なんだけど・・・まぁ無理か。

 ・・・と諦めるとは。

 だって外見は小学生だし。


 「ルナちゃん!来たよ!」

 大股になり両手を広げ・・・私の玄関に大の字を作る少女。それがトモちゃん。

 「トモちゃん!いらっしゃい!」

 堪えきれずに漏れる笑顔で私はトモちゃんを歓迎する。

 「ルナちゃん、準備はできてる?」

 「うん!すぐ行こう!Shopping!」

 「ルナちゃんねいてぃぶぅ〜。」

 「うん。ルナ、帰国子女だから。」

 「うぉぉぉ!ルナちゃんかっくいィィ!」

 ・・・チャキッ・・・とメガネをクイする動作に合わせて、

 「まぁ〜ねぇ〜。」

 と大人味を出していくぅ〜。

 「ヒューヒューぅ!」

 ・・・楽しい。

 ・・・知ってか知らずか・・・トモちゃんはいつも私に元気をくれる。落ちていく私をすくい上げるように。

 ありがとう・・・トモちゃん。

 とても元気が出たよ・・・。

 ・・・とまぁこんな感じが私とトモちゃんの関係性。



 「まぁ見てルナさん。この宝石千円もするんですって?」

 トモちゃんが指差した宝石はピンク色に輝くトルマリン(おもちゃ)だった。

 しかもさくらのインカット!

 可愛いぃぃぃぃ!!!!

 けど私はいらないかな。

 「あらやだお高いわねぇ。トモちゃんさんは買いますの?」

 トモちゃんの言葉に合わせて・・寄せて会話する遊び。いわゆるごっこ遊びか。こういうの。

 「ん〜〜〜・・・。今日はお財布が少しさみしいの。」

 「あらそうなの〜。ん〜・・・あ、そう言えば。」

 これ一つしかないし、トモちゃんに買ってあげよ。

 「どうかしたの?ルナさん。」

 「先週はありがとうねぇトモちゃんさん。」

 「・・・先週?何かあったかしら?」

 特に何かあったわけじゃないけど建前として・・・

 「あれよあ~れ。」

 「・・・・んんん???」

 「まぁぁいいのよ。そのお礼にこ〜れ。買って貴方にプレゼントするわ。」

 「まぁぁぁぁぁいいのぉぉ?ありがとぉぉ。大事にするわぁ。」

 「そうしてちょうだい。オホホホホホホホ。」

 「オホホホホホホホ。」

 「「オホホホホホホホホホホホホホホホ。」」

 ・・・こういうノリ、一段落すると一気に恥ずかしさが押し寄せてくるんだよな・・・。

 まぁやめる気ないけど。

 だって楽しいから!

 「あ、君!」

 「え、私?」

 突然、知らない女の人に声をかけられた。

 「・・・ルナちゃんの知り合い?」

 「ううん、知らない人。」

 ・・・のはずなんだけど・・どこかで・・・。

 泥遊びしたんかってくらいの茶色い髪の毛。ロング。ポニーテール。体育会系。だけど雰囲気は・・・少し”私”に似てる?

 「え、じゃあ誰・・・誘拐犯?!」

 「違ッッ!んんッ!そこの君。」

 お店で大きい声を出したことに少し赤くなる女性。その女性が私を指差してきた。

 「あ、はい・・?」

 「あんな深夜に外出ちゃだめだよ。まだ小学生でしょ?」

 「深夜?」

 「・・ルナちゃんなんかやったの?」

 「やった・・・・あ、昨日の?」

 ・・・昨日の突然声かけてきた不審者?までは言わなかった。

 「そう。突然大声が聞こえてきて何事かと思ったら、君を見つけたの。ああいうのはだめよ。もし万が一にでも危ない人が近くにいたら、本当に危険なんだから。」

 そうか・・・昨日の夜会ったから・・・。

 「・・・ごめんなさい。」

 「・・・ま、まさか。ルナちゃん深夜徘徊やっちゃったの?」

 ちょっと楽しそうな表情をしたトモちゃんが会話に割り込んできた。

 「うん。まぁ。」

 「お、大人、だ・・!」

 大人って・・・・まあ背徳感は結構あるけど。

 「憧れちゃだめよそんなことに。誘拐されるかもしれないんだから。」

 「あ、はぁ〜い。」

 いやでもちょっと待って。

 昨日は暗くて顔、よく見えてなかった。

 ・・・だとしたら私はいったいどこでこの人のことを・・・・。

 「さくら〜。お待たせ〜。」

 「ッッ!?」

 ”私”の名前!?

 「こっちの買い物は終わったよ〜。」

 あ、この女の人の名前か。

 て、違う。

 そうじゃない。

 この声は彼の・・・君の声!

 そうだこの女!

 君の奥さんじゃん!!

 やばい逃げないと。

 いやそれだと不自然か?

 でもここにいるのは絶対嫌。

 目の前で見せられるのはもっと嫌!

 だから!!

 「トモちゃん!」

 「ぅえッ?!」

 気付いた時にはトモちゃんの手を握りしめて走り出してた。溢れてきたもの全部押し込めて。そんな中で最後に少しだけ聞こえてきたのは”私”の名前を呼ぶ声。いや、正しくは彼の奥さんの名前を呼ぶ声・・だった。


 「ハァ・・ハァ・・・ン・・どう・・・したの?ルナちゃん・・・いきなり走りだして。」

 火照る体に薄っすらと汗をかきながら・・・息を切らし膝に手をつくトモちゃん・・・。

 ・・・・ごめん。

 「ちょっと・・休も。」

 「・・・うん。・・・あ、そこに丁度椅子あるよ。」

 ちょっと硬めの四角い椅子に、二人並んで座り休む。

 「・・・・・・ここ、人来るかな。」

 少し休んで回復したトモちゃんは・・いつも通りの息遣いに戻り私の疑問に答えをくれた。

 「ん〜〜〜・・・来ないんじゃない?死角になってるし、端っこの方だし。」

 その言葉を聞くと、我慢していた糸が切れた。涙が溢れる。感情がグチャグチャで整理できない。

 そんな私の頭を・・・力が入らなくて肩にもたれかかる私の頭を・・・トモちゃんは自分の膝に寝かしつけてくれた。優しく・・そっと撫でてくれた。

 ・・・クセになる匂い・・・。

 ・・・・・落ち着く。

 そうやってゆっくりと意識を落としていく私に・・・・。

  「・・・・好き・・好き・・・大好き・・大好き・・・・・・・・トモちゃんは・・ルナちゃんのことが大好きです。」

 愛の告白が降り注いだ。

 彼女は・・・トモちゃんは・・・”私”のことを何も知らないし、私の心の全てを明かしたこともない。なのに・・・私の本音を見抜いてそうな感じがする。そんなことはありえないのに。”私”を知らない限り絶対に不可能なのに・・・。

 「ぎゅ〜〜〜・・・。ハグハグゥ〜・・・。・・・落ち着いた?」

 ハハ・・・小学生に慰められるなんて・・・・・まったくもって不甲斐ない。

 「ありがとう、トモちゃん。私も・・トモちゃんのことが好き。大好き。」

 その返事にトモちゃんは・・・。

 「・・・ポッ・・・。」

 と・・自分で効果音を付けながら顔を更に赤らめる。そして・・・。

 「あ、それじゃあ・・・・やっちゃう?」

 グイッ・・・と顔を近づけ・・・。

 「ぅえ?!何を?!」

 「ち・・誓いの・・・キス。」

 私の唇に差し迫った。

 その行動に心を縛り付けられて・・・。

 「・・キス・・・・・・私の・・ファーストキス。あげるね。トモちゃんに。」

 「それじゃあ私のはルナちゃんに。」

 「うん。」

 「・・・・・私は・・トモは・・・。ルナちゃんのことが・・・。」

 「・・・ルナは・・・トモちゃんのことが・・・。」

 「・・・せーの。」

 「「大好きです。」」

 私たちは恋人になった。

 ・・・・これできっと・・・君への感情も塗り替えられていくかな・・・。

 ・[主視点]

☆→天真てんま さくら、【転生後】天光あまみつ るな

○→華一はないち 太陽たいよう

□→桜華おうか とも

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