59話 ソーニャ
59話です。
よろしくお願いいたします。
あれから2週間が経過した。
あれから、というのはもちろん、
紫、清十郎、クロエ、月子、伊都子が配送センターにやって来てからだ。
ソーニャはしっかり日にちを数えていたので間違いはない。
2週間は14日。
14日は336時間。
336時間は20160分。
結構な時間である。
その間の楽しい日々に、ソーニャは満足していた。
「ジューロー。
今日で2週間だね」
清十郎がたくさんの土と鉢を乗せた台車を押している手を止めた。
「何が?」
「ジューローが来てからちょうど2週間」
「そうだっけか?」
ソーニャは清十郎の後ろをついて歩きながら、
「そうだよ。ジューロー」と人差し指を立てた。
清十郎のさらに先を行く紫が、振り返った。
「2週間っ。もうそんなに経ったのか」
「そうだよ。サキー」
紫は水の入ったバケツを4つ、器用に抱えている。
時折バケツから零れる水の跡を飛び越えながら、
ソーニャは屋上を目指して歩く。
立体駐車場は迷路のようで、歩くのが楽しい。
葵のいいつけで、大人が居ない時は歩き回ることはできないが、
今なら自由に走り回れるのだ。
ソーニャは少し得意になって走り出し、
紫の背にタッチして先頭に立った。
「サキがオニ!」
ほんの数歩だけ紫が追いかけてくるが、
バケツの水が零れるのですぐに止まる。
思った通り、紫はバケツが邪魔で自分を追いかけて来られない。
だから、紫はずっと鬼でいなくてはならないのだ。
得意になって、ソーニャはどんどん先に走り出した。
「こけるなよ~」
紫の声を背に受けながら、ソーニャは走り続ける。
あと2回坂道を折り返せば、
太陽をいっぱい浴びられる屋上に到着する。
もうすぐという場所で、日の光が目に飛び込んでくる瞬間が好きだ。
それからすぐに青々と茂ったたくさんの植物達が
お出迎えをしてくれるのだ。
幸せの時。
<水が来た>
<水が来た>
<水じゃない。女王が来た>
<女王だ>
<女王だ>
たくさんのプランターに植えられた、
元気そうな植物達の声が聞こえる。
「遅くなってごめんね!」
ソーニャは返事した。
<おお。女王よ>
<おお。女王だ>
<女王よ>
あれから3日後の午前中―――あれからというのは、
みんなが配送センターに来てから―――
ソーニャは植物達の声が聞こえるようになった。
だが、植物達の声は、他の人には聞こえない。
きっとフォルトゥーナからもらった
特別な力がそうさせるのだろう。
植物達の葉や茎の間や、頭上にはたくさんのオドが見える。
オドは、シロの尾についている花だけではなく、
ソーニャの育てた植物からもたくさん出てきた。
どういう仕組みかわからないが、
植物が十分に育つと花や実をつけるように、
オドも一緒になって出てくるようだった。
<女王。水をちょうだい>
<女王。みずをちょうだい>
オーケストラのように、植物達の声が聞こえてくる。
彼らの声は、ソーニャにとって優しい音楽のようだった。
「わかったー。たくさんあげるね」
ソーニャは後ろから来た紫からバケツをひとつ取り上げて、
じょうろに注ぎ込んだ。
順番に水を与えていくと、<おいしい>と
植物達が口々に言っているのが聞こえた。
「よかったよかった」
ソーニャは嬉しそうな植物達の声を聞いて、
自分まで嬉しくなった。
実際、植物の声が聞こえるようになるまで、
ソーニャは植物達に意志があるなどとは思ってもみなかった。
最初に植えたトマトの声が聞こえた時、ソーニャは
そのことを一緒に世話を手伝ってくれている紫と清十郎に言ってみた。
2人は顔を見合わせて難しそうな表情をしていたが、
2、3ソーニャに聞こえないように言葉を交わすと、
「そうか、すごいなぁ。ソーニャは。
俺達には何もきこえないのに」と満面の笑みで言った。
2人の反応は何だかイマイチで気に入らなかったが、
ソーニャはすごいのは間違いなく当たっている。
植物達の声が聞こえるなんて、
世界中探してもソーニャだけだろうから。
トマト、レモン、リンゴ、レタス、キャベツ、
ナス、チューリップ、ヒマワリなど、季節に関係なく、
たくさんの植物達が育ちざかりを迎えている。
ソーニャが世話をすると、植物達はみるみる育つ。
リンゴとレモンとトマトは大きくなりすぎて、
2週間の内に3回鉢を変え、今までに5度の収穫を迎えていた。
「ジューロー。サキー。見て―。トマトが」
昨日沢山収穫したトマトの新しいのがもう実っている。
「うおお。育ちすぎだろ。
もう植えるのやめとくか」
追いついてきた清十郎が言ったので、
ソーニャはすかさず言い返した。
「だめ!!
もっとたくさん植えるのっ!」
清十郎と紫は食べ物の心配をしていた。
だから、ソーニャは2人の手伝いで、
屋上にたくさん植えることにしたのだ。
「いやいや。
食べきれないだろ」
「サキーダメだよ。
もっともっと作らなきゃいけないの」
農園の運営方針は全て、ソーニャが結希から託されている。
だからといって、ソーニャが勝手をし過ぎると、
2人が手伝ってくれなくなるかもしれない。
それでは困るので、少し言い方に気を付けてみる。
「サキー。ジューロー。
お願いーしますっ」
クロエに教えてもらったおじぎの仕方を忠実に行う。
これをすると、紫と清十郎は必ず言うことを聞いてくれた。
「仕方ない。
ソーニャの為に今日は新調したトウモロコシにチャレンジだ」
すでにたくさん汗をかいている清十郎が言った。
「トウモロコシは保存ができるから、
プランター20個分なー」
「すごいー」
ソーニャが感動して言うと、紫がちょっと嫌そうに言う。
「いや~。20は準備が大変だ」
確かに紫の言う通り、
プランターに土を入れて種を植えるというのは大変な作業だ。
だが、ソーニャはワクワクしていた。
新しい植物を植える時は、いつも嬉しい。
どんな風に育つのか、どんな声を出すのか、
新しい刺激がたくさんあるからだ。
それに、トウモロコシが育てば、お米のような主食の代わりになる。
冷凍庫にある食品に頼らずとも、自立した生活が可能になるのだ。
きっとみんな喜ぶに違いない。
作業を続けていると、手伝ってくれる紫が愛おしくなって抱きついた。
「どうした」
ソーニャは紫と清十郎が大好きだ。
植物の世話を手伝ってくれるからではない。
2人は大人なのに、ソーニャを子ども扱いせず、
言ったことを受け止めてくれる。
そんな2人との関わり合いがいつも嬉しかった。
「どうしたー。
ソーニャー」
紫が泥だらけの手でソーニャの脇腹をくすぐった。
後で葵に怒られるかもしれないが、
ソーニャは泥だらけになるのが好きだったので、
そのままにしておく。
反撃として、後ろに回り込んで紫のお尻を叩いてやる。
「コノコノー」
「いててて。参ったよソーニャ」
「みんな楽しそうね」
声に振り返ると、
水の入ったボトルを持ってきた伊都子がいた。
伊都子はボトルの栓を抜いて紫と清十郎に渡した。
ソーニャはなるべく静かにして、紫から離れる。
迂回してから清十郎の方に行くと、
口に手を当てて「しぃー」と言った。
ソーニャは最近になって、
伊都子と紫が仲良くなってきたことに気が付いた。
こっそりと清十郎に訊いてみると、
「よく気付いたな」と感心された。
それから2人は、伊都子と紫がたくさん話せるように、
清十郎の言う「大人の配慮」をすることを決めた
「大人の配慮」ができるソーニャは、
みんなと同じ立派な大人となったのだ。
トマトの葉の間から、
伊都子と紫が楽しそうに話しているのが見える。
ソーニャは見ながらこそこそと清十郎に話しかけた。
「ジューロー。
2人とも楽しそうだね」
「おおー。そうだな。
良いことだな」
伊都子を前にすると、紫が顔を真っ赤にする。
それを静かに見守るのがソーニャは好きだった。
「2人はケッコンするのかな?」
「ソーニャ、気が早いな。
紫は好きみたいだが、
伊都子さんはそこまでじゃない」
「え~」
ソーニャが残念そうに言うと、清十郎が笑った。
「なんでなんでー。
ケッコンすればいいのに」
「伊都子さんには、
他に好きな人がいるかもしれないな」
清十郎が言ったので、ソーニャはがっかりした。
「でも」
「でも?」
「サキは諦めないから、きっとうまくいくよ」
しばらく紫と伊都子と離れて作業していたが、
トウモロコシの作業に入るために合流する。
おしゃべりをしながら4人で作業をしていると、
あっという間にお昼ご飯の時間になった。
後ろに気配を感じて見ると、月子が立っていた。
「あ。
月子さんいたんだ」
清十郎が言うと、月子は静かに頭を下げた。
「ゴハンの時間だー!」
ソーニャは爪の中まで泥だらけになった手で、
月子のスカートを引っ張った。
「ツキコーゴハンなにー?」
月子はとても大人しい。
ソーニャがお尻を叩いても、小指を咥えても、
髪の毛を勝手に三つ編みにしても、
突然後ろから抱きついても、
少し笑うだけで、葵のように叱ってこない。
叱れないのも無理はない。
「ツキコ―。帰る前にアソボ―」
月子はニコニコしているが、返事はしない。
わざとしないのではなく、できないのだ。
出会った時から月子は声が出せなかった。
最初は不思議に思ったが、
施設にも話せない子がいたから、
ソーニャはそこまで気にしなかった。
でもたまに月子は綺麗だから、
きっと声も綺麗なのだろうと想像することがある。
名前の通り、きっと月のように美しい声だろう。
白いワンピースを着ている月子の腰には、
黒い帯と、刀が差してある。
せっかく可愛いワンピースなのに、
そんなものをつけていては似合わないわ、
とソーニャは思う。
月子が刀を置くときは、寝る時だけだ。
外敵がいるから油断しては駄目だと、
いつも葵に注意されるソーニャだったが、
月子のようにいつも気にしていては、
息をつく間もないだろうとうんざりしてしまう。
いつか刀をどこかに置いた月子と
のんびりピクニックがしてみたい。
「ソーニャ。月子ちゃん困ってるよ。
さぁ、みんな一旦帰ろうか」
紫が言うとみんなが立ち上がり、噴水ホールへと向かっていく。
月子の手を引っ張りながらソーニャは、
念のため植物達の声に耳を傾けた。
困っている子はいないか、虫に食われている子は
いないかを確認する。
<腹いっぱい>
<腹いっぱい>
<水大好き>
<女王ありがとう>
<水大好き>
<女王ありがとう>
植物達はみんな元気そうだった。
「またあとでねー」
ソーニャは呟いてから、また月子の手を引っ張った。
◇
クロエと葵と三毛と虎が、食事の準備をしてくれていた。
ソーニャが席につこうとしたら、
葵がすかさず「手を洗いなさい」と釘を刺してくる。
「ぶ~」
頬を膨らませると、葵も同じ顔をした。
「ぶ~。
じゃないわよ。早くしなさい」
「さぁ行こう。怒らせたら大変だ」
紫が笑いながらソーニャを噴水へ連れて行ってくれる。
汲んだバケツの中に、5人で一斉に手を入れると、
中はあっという間に泥色に染まっていった。
本当は一斉にする必要なんてないのだが、
この方が楽しいから良いのだ。
「今日は何かなぁ?」
「何だろうね~」
伊都子が満面の笑みを浮かべた。
きっと紫と話せたからだろうとソーニャは思う。
伊都子が水をかけて、ソーニャの泥を落としてくれる。
「月子さんも手伝って」
伊都子が言うと、月子も一緒になってソーニャの手を触ってくれた。
月子の手はもう綺麗になっているのに、
また汚れてしまう。
それが面白くて、ソーニャは声を上げて笑った。
「こらー。
ちゃんと洗いなさいよー」
「うきゃきゃ。
ちゃんと洗うー」
月子がちょっぴり笑ったので、
ソーニャはとても嬉しくなった。
濡れた手をタオルで拭くと、ソーニャは椅子に座った。
先に座っていたキーラに聞く。
「今日は何?」
キーラが目を細めると、「グラタンだって」と言った。
「グラタン!?」
ソーニャが思わず腰を浮かせると、お腹がテーブルにぶつかった。
「ソーニャ。
おちついて。コップが倒れちゃうよ」
キーラに注意されたのが気に食わなくて、
ソーニャは頬を膨らませた。
「私はおちついています。
いちいちうるさいですよ」
「いちいちうるさいなんて、
誰に習ったんだ?」
注いだお茶を一気飲みした清十郎が訊いてきた。
「葵ちゃんかも」
伊都子が清十郎のコップにおかわりを入れながら言った。
「葵ちゃんか。
確かに言いそうだなー」と紫。
「紫のおっさん。
何か言った?!」
キッチンの方から葵の声が石のように飛んでくる。
気持ちの色が見える葵に、コソコソ話はできない。
「おまちどー」
クロエが熱々のグラタンを持ってきた。
「うきゃー。
すごーい!」
ソーニャは嬉しくてまた跳び上がりそうになる。
「熱いから、ソーニャ。
熱いからね」
クロエがソーニャに何度も忠告してくる。
「うん!」
ソーニャは頷いて、湯気の立つグラタンを見た。
ワクワクが止まらない。
表面の少し焦げたグラタンは、所々からニンジンやブロッコリー
マカロニが覗いていた。
「おいしそう!!」
グラタンは他の席にも次々に並べられていく。
待ちきれないよ。
「よくいっぺんに用意できたな」
清十郎が感心したように言うと、
「クロエさんが、工夫してくれたんです。
みんな一緒のほうがいいからって」葵が返事した。
最後に席についたクロエが「じゃあ、頂きましょう」と告げた。
それがソーニャには神のお告げのように感じる。
「いただきまーす」
最初の一口は信じられないくらい熱かった。
「うがー!!」
「だから言ったでしょ」
隣の葵がお茶を飲ませてくれたので、何とか助かった。
「キーラを見てごらんなさい。
ちゃんとふーふしてるでしょう?」
キーラはまだ一口目のグラタンに息を吹きかけている。
でも、そんなに待っていられないよ、とソーニャは思った。
それからは気を付けながらグラタンを食べた。
半分くらい食べたところで、
「ゆっきーはどうしたの?」清十郎が言った。
ゆっきーとは結希のことだ。
グラタンに夢中で今まで気が付かなかったが、
確かに結希は食卓にいない。
「またバリケードを作ってる。
なんだか建物の裏側が納得いかないって」
葵がため息交じりにいう。
月子もそれが気になるようで、グラタンを食べる手を止めていた。
葵は結希が大好きだから、きっと一緒に食事がしたかったに違いない。
ざんねんだなぁ。
「裏口は完全に塞いだから、
出入口は表にしかない」
すでに全部食べた紫が呟いた。
「そう。
でも、気になるって・・・」
「言ってくれれば俺も手伝うのに、
佐藤は根っからの陰キャだな」
インキャとはどういう意味なのだろうか。
日本人は純粋な日本語だけではなく、
英語を巧みに会話に取り入れている。
もしかしたら、英語なのかもしれないなとソーニャは思った。
「ねぇ。葵。インキャってなに?」
見ると、葵の顔にしわが寄っていた。
もしかしたら、良くない意味なのかもしれない。
「紫さんは、冗談で言っているのだと思いますけど、
そういう言い方は良くないと思います」
伊都子が不機嫌そうに言った。
不機嫌はちょっと嫌だけど、
きっと紫が悪いから仕方がないとソーニャは思った。
「い、いや。
伊都子ちゃん。
そんなつもりは・・・」
「あらあら。
紫さん一本取られたわね」
クロエが口を手で隠して笑いながら、
面白がっているような調子で言った。
「佐藤さんは皆さんの為にして下さっているんですよ」
「はい。
いや、だから、俺も・・・その」
素直に謝った方がいい。ソーニャはそう思った。
「サキー。
謝った方がいいよー。
葵もそう思うよね?」
言うと、皆が笑顔になった。
「そうね。ソーニャの言う通り。
紫のおっさんは、
伊都子さんにちゃんと謝るべきだと思いまーす」
「ソーニャもそう思うー」
「な、なんだよ・・・」
「クロエもそう思います。
ささ、伊都子さんの前に行って」
戸惑う紫の背を押して、クロエが言った。
「はいはい・・・」
大げさに肩を竦めた紫が伊都子の前に行く。
伊都子は少し困った顔をしながら立ち上がった。
「伊都子ちゃん。
俺が悪かったです。すみません」
「私こそ、強い言い方をしてしまって・・・」
「いやっ。
伊都子ちゃんは間違ってないよ。
俺が悪かった」
向かい合った2人が笑顔になる。
「素直なのがサキの良いところだな」
清十郎が嬉しそうに言った。
どうやらうまくいったようだ。
ソーニャは施設でたくさんの仲間外れや、
仲直りが出来なかった友達を見てきたので、
2人がちゃんと仲直りが出来て本当に良かったと思う。
葵と目を合わせると、ソーニャは
「よかったね」とつぶやいた。
琥珀のような綺麗で大きな瞳に、自分が映っている。
「うん」葵は頷いてくれた。
葵は怖い時もあるけれど、こういう時はとびきり優しい顏をする。
ずっとこういう顔をしていて欲しいな、とソーニャは思った。
◇
お腹いっぱいになったソーニャは、
銀の背中に乗って目を閉じていた。
銀は大きくて、ふわふわして温かいから好き。
たまに顔を舐められる。
草花と同じ匂いがした。
「葵さん。
お弁当にしたから、
佐藤さんへ持って行ってくれる?」
「は、はい。
でも片付けが」
「伊都子さんもいるし。
大丈夫よ。
いってらっしゃい」
葵がクロエから小包をもらっているのが見えたので、
ソーニャは銀の背から下りると、「ばいばい」と手を振った。
銀は大きなあくびで応えてくれた。
ソーニャは葵に向かって駆け出す。
「葵ー。
結希のトコソーニャも行くー」
葵が微笑んだ。
「いいわよ」
「葵さん。
ボディガードに月子さんも行ってもらおうかしら」
「わかりました」
月子はクロエを見ると首を横に振った。
まだ片づけが終わっていないのだから、
行かないということかもしれない。
「あなたもずっとここで家事をしていたんだから、
ちょっとは日を浴びてきなさい」
月子は大人なのに、子どもに注意するように
クロエが言った。
クロエにとっては、大人の月子もまだ子どもなのかもしれない。
少し迷っているようだった月子が頷いた。
やってきた月子のお尻を叩く。
月子のお尻はいつもしっとりしている。
背中まである長い髪を引っ張ってみる。
髪は濡れているわけでもないのに、握ると手の平が濡れた。
何で月子は濡れているんだろう。
月子は不思議で面白いから好き。
でもその不思議は、誰かに言うと月子が困ると思ったので、
ソーニャは秘密にしてあげていた。
2人と手をつないで歩き始める。
目指すは結希だ。
「結希ー。
よろこぶかなー」
「きっと喜ぶわ。
ね。月子さん」
月子が真剣な顔で何度も頷いた。
3人が行けば、きっと結希は大喜びだとソーニャは思った。
ありがとうございました。
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