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48話 クロエ

48話です。

よろしくお願いいたします。

黒江(くろえ) (ちか)の家は、教師の家系だった。

幼い頃より、当然のごとくクロエは教師を志した。

22歳の春、初めて教壇に立った時のことを、今でも覚えている。

その頃の子ども達の髪型は、男子も女子も短髪で、

男子の多くは坊主頭、女子は後ろの短い

おかっぱ頭だと相場が決まっていた。

みんな一様にのびのびと元気で、純粋まっすぐ育っていた。

クロエはとにかくがむしゃらに、

これから日本を背負っていく子どもたちに、

勉学を授けようと邁進していた。

当時、クロエには婚約者がいた。

教師の家系で、クロエと同じ教育者としての

使命を背負った人だった。

名前を学 (ガク)という。

ガクはクロエよりも5つ年上で、

こだわりが強くて怒りっぽいクロエと違い、

懐が深く温厚な性格の持ち主だった。

ガクの祖父とクロエの祖父が仲良く、

以前から互いの家同士は、

親戚同然の親密な付き合いがあった。

幼いクロエにとって、

ガクは気安いお兄さんという感じだった。

クロエは小さな頃、ガクの父親から

「将来はガクのお嫁さんになるんだよ」と言われていた。

繰り返しそう伝えられてきたことと、

成長とともにガクを好くようになってきたこともあり、

クロエは本当にそうなれば良いなと思っていた。

だから、クロエが中学生になったとき、

正式に許嫁になったときはとても嬉しかった。

クロエが教師になったとき、ガクはすでに

教師だったので、2人はいつでも結婚し、

新たな生活を始められる状態にあった。

しかし、ガクが「チカが仕事に慣れるまで待つ」と

言ってくれ、最終的にはクロエが25の時に結婚に至った。

ガクとクロエは子どもを望んだが、2人には授からなかった。

クロエはずっと子どもが欲しかった。

自分とガクの可愛い赤ちゃんを育ててみたかった。

だが、クロエは長く嘆き続けることはしなかった。

自分の子どもはいなくても、

学校にいけば子ども達はたくさんいる。

それにガクとの結婚生活は幸せそのものだ。

これ以上の幸せを求めたら、きっと罰が当たってしまう。

ガクは贅沢のしない人間で、

学校に行く時以外は、いつもよれよれのシャツを着ていた。

クロエが服を買おうとしても、

無駄遣いだと言って許さなかった。

それなのに、クロエの衣服や家事道具には気を遣ってくれた。

こちらの方が無駄遣いではと伝えると、ガクは控えめに笑った。

ある日、クロエの生理が止まった。

体調も悪く、子どもができたのかもしれないと思った。

だが、それはただの過労だった。

倒れて横になっているクロエの頭を、

ガクは一晩中撫でてくれた。

クロエは、今死んでも良いと思えるほどに嬉しかった。

ガクは病気の後ろめたさからか、

普段からクロエの体に触れなかった。

だから、ずっと過労でいたいと思ったものだ。

しかし、そんな生活も長くは続かなかった。

クロエが30になったとき、

ガクは突然愛人との間に子どもができたと言ってきたのだ。

クロエにとって、これは青天の霹靂だった。

悲しみは大きかった。

ガクには、自分との子どもを作って欲しかった。

だが、ガクも長い間ずっと

子どもを欲しがっていたことを知っていたので、

クロエはこころを殺して喜んでみせた。

「あなたに子どもができてよかった」

生まれて初めて見た伴侶の涙に、

クロエは報われた気がした。

2人は離縁し、多額な離縁料をガクの実家から頂いた。

1年が丁度過ぎた頃、クロエは実家を通して、

「生まれた子どものために使ってください」と

離縁料を全額返した。

それから、クロエは60歳で退職するまで、

全てを教育に捧げた。

60歳で退職すると、私立高校から校長として

来てほしいと声をかけられた。

いじめによって女生徒が自殺した学校に、

立て直しの一環として、クロエは赴任することになった。

前任の校長は教育委員会や遺族への対応に追われ、

最後はメディアから叩かれて辞職してしまっていた。

前校長は以前から知っていた人で、

子どもの目線で話をする良い教員だったので、

クロエとしては敵討ちのつもりだった。

今まで小学校の教諭だったクロエは、高校生のしかも

校長に抜擢されたので最初は慣れなかった。

だが、小学生も高校生も、歳が違うだけで

問題の本質は変わらない。

クロエは今まで教師人生で培った経験を存分に発揮した。

国にかけあい補助金を得ると、

優秀な臨床心理士を1名2年に渡り常勤で配属させ、

生徒はもちろん保護者向けに、何度も説明会をした。

さらに、クロエは現場で頑張ってくれている

教師達のケアにも余念がなかった。

週3で点滴を打ちながらの、苛烈な業務だった。

体調の悪さが、自分を顧みる作業をクロエにもたらす。

人のために尽くす日々は嫌いではない。

教師として生きてきた自分に後悔はない。

だが、60歳を迎えた今、これまでしてきたことが、

自分の人生を本質的に満たしていたのか、

クロエは疑問に思うようになった。

突き進んできたクロエが、ここにきて人生に迷ったのだ。

人の生きる意味とはなんだろう、とクロエは思う。

ガクのことを思い出す。

クロエにとって生きる意味とは、やはり子どもだ。

子どもを産み育て、後世に自分の血を残すことが、

人の生きる意味だと、クロエはそう思う。

しかし、そうなれば、子どもができなかった

自分の生とは一体何なのだろう。

無意味なのだろうか。

校長室から見える、放課後の運動場が見える。

サッカー部と野球部、陸上部が盛んな本校は、

こういった景色が毎日のように繰り返されている。

やはり無意味なのかもしれない、とクロエは思った。

そう思いながら、残り一年の任期を

過ごさなければならないのが辛かった。

そんな矢先、クロエはガンになった。

もしかしたら、ここ数年の無理が祟ったのかもしれない。

医者には内臓の難しい場所にあるガンで、

手術はできるが失敗したら死ぬと言われた。

余命はたったの1年だけだった。

クロエは迷った。

人生で最も迷ったかもしれない。

教師になるときも、教師をしているときも、

このまま自分の道を突き進めば良いと思った。

だが、自分の生があと1年に迫っているのを知ったとき、

このままで良いのかという気持ちが大きくなった。

自分の生に意味があったのだと、こころから思いたい。

それは、このまま一年教員を続けても、

得られない気がする。

結局、クロエは自分が病気であることは伏せて、

64歳で学校を辞職した。

メディアからはクロエを非難する報道がされた。

全校集会でクロエがした挨拶は、

何者かによって録音されており、

その内容は投稿者の都合よく切り取られて、

SNSやメディアによって拡散された。

炎上に次ぐ炎上で、学校やクロエの家には連日報道陣が詰めかけた。

クロエの教員人生最後の日は、無惨なものとなった。

退職後、数か月は眠れない日々が続いたが、

メディアが都内で起きた殺人事件へ矛先を向けると、

弾圧はあっけなく終わり、灰になったクロエだけが残された。

責任を果たしたクロエは、その後さらに3ヶ月は失意の内にいたが、

精神科病院でカウンセリングを受けながら、

少しずつ回復していった。


教師のなんたるかを知らず、ただ教師になってしまいました。

あの学校の校長になったとき、敵討ちのつもりだったんです。

最後までやるつもりで始めたのに、

死ぬとわかって続けられなくなった。

全部報いですね。

ガクさんと別れたとき、泣けばよかった。

離れたくないって言えばよかった。

必死だっただけで、意味を考えなかった。

教師という、わかりやすい正義、正解に縋ったのね。

だから、未だに自分の存在意義すらわからないの。

今までの教師人生の中で、感謝されることもありました。

うれしくて、涙がたくさん出ました。

でも、自分がよく生きたとは思えないの。

先生、わかってもらえますか。

なぜでしょうか。

こんなに恵まれた人生だったのに、何が不満なのかわかりません。

おかしいですね。ふふふ。


服薬と隔週で行われたカウンセリングのおかげで、

クロエはずいぶん良くなった。

再スタートを切ることができたクロエは、

今まで忙しくてできなかった、

キャンプや山登りや国内旅行をした。

かねてからの夢だった、家庭菜園で花も楽しむようになった。

最近世間ではお月様が2つになるなど、

天変地異が起きるのではないかと心配されているが、

そんな賑わいも寿命もわずかの自分には遠くのものに感じられた。

ある日家のそばにあった銀行がなくなり、

小さな噴水のある公園のようなスペースに変わった。

公園にはギリシャ調の見事な彫刻がいくつもあり、

クロエは驚いた。

ニュースでも話題になっていて、どこの誰が

一晩のうちにこんなことをしたのか、

警察にも専門家にもわからないということだった。

クロエはせっかく近所なので、

出現した噴水公園を見に行ってみることにした。

公園には人だかりができていた。

テレビが来ていたので心臓が苦しくなったが、

短時間で帰っていったので、クロエは安堵した。

噴水までやってくると、池の縁に座っている男性が譲ってくれた。

礼を言って座ると、男性は優しく笑って離れて行った。

みんなが穏やかな笑顔を浮かべていることを、

クロエは喜んだ。

クロエは人々の表情を見ながら、自身の人生を振り返った。

なぜか、そうしたい気持ちになったのだ。

クロエが最初に思い出したのは、

6年生の担任になったときにクラスにいた、

ヨシ君だった。

風呂に入っていないのか、いつも汗の匂いをさせており、

体操服や制服の襟や袖に、黄色い汗染みをつけていた。

聞いてみると、家には風呂があるが、

水が止められているという。

ヨシ君の1日の食事は、給食のみ。

授業中はとにかく机に突っ伏して、

体力の消費を抑えているようだった。

こういう子はたまにいる。

クロエはいけないことだと分かっていながら、

ヨシ君が登校してくると、隠れて菓子パンを与えるようにした。

「先生とだけの秘密よ」そう伝えると、

ヨシ君は嬉しそうに何度も頷いていた。

ヨシ君は菓子パンのおかげか、授業を聞くようになった。

もともと頭の良い子だったので、成績もかなり良くなった。

だが、臭いのせいでからかわれることが多い。

クロエはお風呂セットを準備して、

3日に一回は銭湯に行けるようにしてやった。

ヨシ君は背が低かったので、

終わったあとは牛乳を買って飲ませた。

その生活は一年続き、ヨシ君は無事卒業していった。

クロエが聞いた話では、ヨシ君は資格をとって、

今は立派に働いているということだった。

クロエのヨシ君への対応は、大変な問題になる行為だ。

こうした無茶を、今まで数えきれないほどクロエはしてきた。

我ながら、自分勝手に生きてきたと思う。

だが、それでもクロエは、人生を全うしていない気がする。

あんなに無茶してきたのに、まだやりたりないのかしら。

クロエは自嘲気味に笑った。

小さな子どもを連れた母親を見かけた。

母親と子どもは、とてもリラックスしているように見える。

春のような陽気に包まれて、クロエは次第に眠くなってきた。

ああ、ここは気持ちが良い。

大きなあくびをして、立ち上がる。

あと数ヵ月の準備で、自分は

満足のいく死を迎えられるだろうか。


   ◇


クロエはまた噴水公園に居た。

ここにはもう5日連続で来ている。

散歩がてら寄っただけなのに、ついつい長居をしてしまった。

そう思いつつ、鞄に入れた文庫本を取り出す。

今まで感じたことのないくらい、安らかな時間だった。

恍惚の時を過ごしていたクロエに、唐突に変化が訪れる。

それは、憂いを抱えた大人しそうな青年と、

可愛らしい丸眼鏡の女の子との出会いだった。

青年は結希。

女の子は葵。

自慢ではないが、クロエは今までたくさんの子ども達を見てきた。

その中でも、結希と葵は数少ない人種だったとクロエは思う。

結希と葵には、初対面のクロエですら感じる濃い影があった。

影というのは、具体的に説明するのは少し難しい。

わかりやすくいえば、子どもが頭を撫でられそうになった時に

みせる身体の竦みや硬直、不自然な視線の動き

などがそれに当たるかもしれない。

時折見せる、ふとした仕草のひとつひとつが、

過去にあった孤独や悲しい体験を浮かび上がらせる。

それが、クロエが2人から感じる影だった。

だが、影がある子ども自体は、実はたくさんいる。

学校によっては、20人に1人くらいの割合で

存在するかもしれないほどに。

だから、影があるだけでは、クロエにとって数少ない人種、

ということにはならない。

では、葵と結希は何が特別だったのか。

それは、葵と結希は影があっても、影に負けず、

正しく生きようとする力強さを持っていたというところだった。

深い影を持っている人は、次第に人格が歪んでいき、

人生の方向性すら歪んでいってしまうことが多い。

自分の不幸を誰かのせいにして攻撃して、

誰かの不幸を願うことで、安堵する。

そんな人も少なくない。

そして、それは無理もないことなのだ。

しかし、2人は歪んでいても、正しく生きようとしていた。

そういう意味で、葵と結希はクロエにとって、

稀有な存在だったのだ。

人は苦労を重ねると、

自分でも気づかないうちに歪んでしまい、

その歪みは大人になった後にまで残り、

本人の人生を狂わせてしまう。

だが、ごくわずかではあるが、

狂った人生を自分の力で変え、

失ったものを取り戻してしまう人がいる。

自分がどこかでおかしくなっていたことに気付き、

それを周囲のせいにせず、自らを律して生きていこうとする人がいる。

クロエはこの2人が惹かれ合っているのも感じていた。

ガクと自分の若い頃を思い出す。

もし、ガクとクロエに子どもがいたら。

クロエは思った。

この2人の力になれたら、

教師人生の経験が少しでも役に立てたら、

クロエは本当の意味で報われるのではないか。

思いがクロエの中で大きくなり、

2人に関わることをやめられなかった。



世界的規模の無差別テロが、日本を巻き込んだ。

ラジオで聞いたクロエは、戸締りをしっかりして、

自宅待機をすることにした。

クロエは以前転勤先の土地で洪水の被災をしたことがあり、

その経験から災害対策用の備蓄と、必要な道具を揃えていた。

少しの間やっていたニュースでは、テロが頻発していて、

都内は非常に危険な状態だという。

救急車や消防車、警察車両が行き来しているのが

サイレンの音で分かる。

外で困っている人がいないか気になったが、

こういう状態の時は焦って出歩くとかえって

迷惑をかけることにもなる。

クロエは雨戸をしっかりと閉めて、家で静かに過ごした。

しばらくして電気がつかなくなったので、

お気に入りのガスランタンで明かりをつけた。

やがてラジオからは何も聞こえなくなり、

外の情報を得ることができなくなった。

クロエは先のことを考えて、質素な食事をこころがけた。

ランタンの光を頼りに、読書をする。

読書は不安を解消してくれた。

クロエが好きなのは児童向けに書かれたファンタジーだった。

女性の作家さんで、感性豊かで、

読んでいるとこころが癒されるような文章が魅力だった。

灯りが点かないので家の中は薄暗く、

まるで野外キャンプをしているような感覚だった。

家の中でキャンプなんておかしいけど、楽しいものね。

クロエは雨戸が外から何度か叩かれるのを聞いたが、

尋常ではない叩き方だった為、放っておくことにした。

数日はあっという間に過ぎた。

備蓄はまだ豊富にあったが、周囲がすっかり静かになったので、

クロエは外の様子を見てみることにした。


   ◇


街はひどいありさまだった。

事故を起こした車や、火事の跡がそのままになっている。

略奪があったのだろう。

お店の割られたガラスが放置されていた。

近所で付き合いのあった家に伺ったが、

中はひどく荒らされていて、クロエは愕然とした。

これは本当にテロがあったのかもしれないわね。

自分は運が良かったのだ。

ラジオも電気も復旧しないところをみると、

もしかしたらこれから他国の侵略でも始まるのかもしれない。

それにしても、みんなどこに行ってしまったのかしら。

たくさんの教え子達や同僚達の顔よりも先に、

結希と葵の顔が浮かんできた。

2人とも無事だろうか。

周囲を確認しながら、注意深く街を移動していく。

歳のせいなのか、病気のせいなのか最近は足が重くて仕方がない。

しばらく歩いても、クロエは誰とも出会わない。

クロエの足は自然と噴水公園に向かっていた。

クロエは未曽有の事態に心底怯えていたので、

そこに行けば少しは安心できると思ったのだ。

噴水公園に着くと、そこには簡易テントが設置されていた。

クロエはほっと胸を撫で下ろし、テントに近づいた。

中には若い男性が2人と女性が1人いて、クロエが尋ねると

親切に今の状況を教えてくれた。

聞いたところによると、一連の惨状は戦争やテロではなく、

突然変異した獣が人間を襲ったことが原因だという。

警察や消防、行政は機能しておらず、

助けが来る目星はつかないままである。

だが、この噴水公園には外敵となる獣達は入り込むことが

できないため、安全地帯だという。

3人は周囲から必要なものを集めながら、

これまで何とか生きてきたそうだ。

クロエは家にある備蓄と、機能性の高いテントを

ここに運ぶのを手伝ってほしいと伝えた。

備蓄の内容を説明して、もしここに避難してきた人達が現れたなら、

平等に分けて欲しいと伝える。

相手方はクロエの申し出を聞いて、

信じられないような表情を浮かべていたが、やがて頷いた。

互いに状況を説明し合った後、自己紹介をする。

男性の名前は赤司 紫 (あかし むらさき) と

阿多 清十郎 (あた せいじゅうろう)という。

紫は高身長で、筋肉質、刈り上げた髪型が

清々しい印象の好青年だ。

清十郎は、紫と対照的で、低身長で肥満体型だが、

目が優しく、とても穏和な印象に見えた。

クロエから見れば、2人とも若くて生きる力に

満ちているように見える。

もう1人の女性は、井上 伊都子という。

伊都子は小柄だがしっかり者という印象のある女性だ。

さっそく4人でクロエの家から荷物を運んだ。

作業が終わる頃には、頭が痛くなるほど疲れてしまった。

紫と清十郎にクロエのテントを組み立ててもらった頃には、

辺りはもう暗くなっていた。

クロエ達は火を焚き、温めたスープを飲んだ。

時折、聞いたことの無いような生き物の鳴き声が

遠くで聞こえた。

火を囲んでしばらくすると、清十郎がクロエに訊いた。

「どうして食べ物があるって、俺達に教えたんですか?」

クロエの中には純粋な本音と、

少しの建前を含めた本音との、2つの答えがあった。

どちらを伝えるか悩んだ末、

純粋な本音の方を答えることにする。

「寂しかったから」

「寂しいって・・・それだけ?」

紫が横から茶化すように言うと、

伊都子が「ちょっと」と釘を刺した。

あらあら、この2人ちょっといい感じね、

そう思いながらクロエは続きを話す。

「私学校の先生をしていたの。

すごく楽しかったけど、最近退職したわ。

それで、世の中が大変なことになって、本当に独りになって、

まぁ、もともと独り身なんだけどね。

それで、あなた達に出会って、

少しでも人と一緒にいたかったから、そうしたの」

「へぇ」

紫が軽く言ったが、清十郎の方は黙ったままだった。

あまりに長く静かにしていたので気になった。

「あんまり深く考えて無かったのかも」

「自分達が、クロエさんの荷物を奪って

逃げると思わなかったんですか?」

清十郎が鋭く言った。

「まぁ、少しは。

そんなこと、改めていわれると不安になるのだけれど」

顏を向けた先の伊都子が少し笑う。

「大丈夫です。

清十郎さんはそんな人じゃないです」

伊都子の言を聞いて、クロエも笑顔になる。

「まぁ、しませんけど」

清十郎が短く言う。

本音を言うと、そうなっても良いと思っていた。

どうせ長くない命だから、若い人の役に立つなら、それでもいいのだ。

だが、クロエがそれを口に出すことはない。

「自分は、何のメリットもないのに、

危険を冒して他人のために動くクロエさんが

おかしいと思っただけです」

清十郎という人物が少しだけ分かった気がした。

清十郎は珍しく真っ直ぐな人だ。

真っ直ぐ過ぎて、人と人が存在することで生じる

軋轢や摩擦に苦しんできた人。

だからつい、人の好意を疑ってしまうのね。

「あなた達が頼りになりそうだったっていうのもあります」

とクロエは茶化した。

憮然とした表情の中に後悔を含ませた清十郎を見て、

クロエは懐かしい思いがした。


   ◇


翌日、クロエは早く目が覚めた。

紫と清十郎はもっと早く起きており、

支度をすると噴水公園から出て行った。

「2人はどこに行ったの?」

「辺りの様子を見に行ったり、食べ物を探したり、

いろいろみたいです」

「すごいわね。朝から」

「はい。すごいです。

あの2人は」

クロエは家から持ってきた荷物を、

伊都子と共に整理することにした。

食料を日にちごとに分け、

当面は過ごせそうな量があることを確認する。

「私達、本当に食べ物に困っていて。

だから、クロエさんのおかげで、助かりました。

清十郎さんも、本音ではそう思っています」

伊都子がクロエに膝を向けると、改まって頭を下げた。

若いのに所作のしっかりした子だ。

きっと良い方に育てられたのだろう、とクロエは思った。

「いいえ。助かったのは私の方よ。

1人でいる間、とっても寂しかったんだから。

本を読むしかすることなくて」

「クロエさんっ。

本がお好きなんですか?」

伊都子が熱の篭った瞳をクロエに向けてくる。

「え、ええ。

前から好きで・・・」

ぐいぐい前のめりになってきた伊都子に、

クロエは両手を出して距離をとった。

「どんな本を読むんですかっ??」

「えーっと、うーんと。

最近は・・・」

クロエが返事を考えていると、遠くで音がした。

立ち上がった伊都子の血相が変わる。

「あれ!!」

伊都子が指さした方を見ると、

遠くにいる紫と清十郎がこちらに駆けていた。

「あ、あれは」

2人の後ろを、角の生えた奇妙な生き物が追っている。

「あれは小鬼です!!

人を襲うんですっ。

もっと奥に隠れないと」

伊都子がクロエの手を掴むと、無理矢理引っぱった。

クロエは訳も分からず、伊都子に従う。

噴水公園に滑り込むように入って来た紫が、

クロエと伊都子に叫んだ。

「もっと奥へ!!」

伊都子と一緒になって紫が手を引いてくれたので、

クロエの足が軽く進むようになる。

恐ろしい奇声が背後で上がる。

クロエは悲鳴を上げながら、物陰に隠れた。

「せ、清十郎さんは」クロエが言うと、

「あいつは大丈夫」と紫が短く返事した。

物陰から顔を出すと、清十郎が小鬼に向かって

何かを投げつけているところだった。

「無理すんなっ。早く来い」

清十郎は奇声を上げて苦しむ小鬼から背を向けて、

噴水公園の敷地内に入った。

小鬼達は手前で立ち止まり、

ひとしきりこちらに向かって奇声を上げていたが、

しばらくするとまるで興味を無くしたように引き返していった。

「な、なんだったの?」

膝に手を置いて咳き込む清十郎の背を撫でながら、

紫が血の気を失った顔をクロエに向けた。

「あいつらは、小鬼です。

人を見つけて襲って来るんです。

でも、この公園には入って来られないから、大丈夫」

「そんなこと、あなたは何で知ってるの?」

「いや。俺達も先日気付いて」

「もっと早く知っていたら、もっとマシだったのに」

紫の言葉を遮って、苦渋を浮かべた清十郎が言った。

小鬼の姿が見えなくなったのを確認してから、

一行は食事休憩となった。

「そういえば、みんなのこと、あまり知らないのよね」

スープが行き渡ったところでクロエが切り出す。

「確かに」と伊都子が言うと、紫と清十郎があからさまに顔を顰めた。

クロエがそれでも面白そうな顔をしていると、

根負けしたように紫が手を挙げた。

「じゃあ、紫さん」

紫は以前、自衛隊に勤めていたという。

「すごいわねぇ。

立派なお仕事をされていたのね」

クロエが言うと紫は「怪我をして退職しちゃったんですけどね」

と頭を掻きながら言った。

紫は普段飄々としている紫だが、

褒められると本気で恥ずかしがっているのが面白い。

「次は伊都子さんね」

「は、はい」

伊都子は背筋を伸ばして、顔を上げた。

「わ、わたし、図書館の司書をしてて・・・」

「ああ~。なるほど、それで本のこと詳しいのね~」

「は、はい。

まだひよっこですけど」

「ううん。立派だわ。

また本のことを教えてもらわなくちゃ」

伊都子がたんぽぽのような笑みを浮かべる。

「じゃあ、セイちゃんの番ね」

「あの」

清十郎が挙手をする。

「はい。どうぞ」

クロエが発言を認めると、

「セイちゃんって、なんですか?」

清十郎は困ったように言った。

「セイちゃんは、セイちゃんよ。

愛称があった方がいいでしょ?」

「あー・・・なるほど」

清十郎は高校を卒業してから、看護師をしていたという。

クロエは紫に視線を向けた。

「2人は仲良しよね」

「同級なんです。

同じ学校で」

「どうりで仲が良いのね」

紫はすぐに笑顔になった。

「そうなんですよ。

付き合い長くて。な?」

紫が清十郎の肩に手を回して、

照れくさそうにいった。

「おまえが照れるなよ」

清十郎はまんざらでもなさそうな表情をしている。

2人は事件直前に久しぶりに再会したそうで、

それからずっと行動を共にしてきたという。

「丁度一緒にいたんで、2人で協力してきたんだ」

「まぁ、タイミングは良かったな」

クロエは腕組みをして、2人へ訊いてみた。

「そういえば、事件の原因って、一体何なのかしら」

清十郎が「多分なんですが」と前置きをしてから始めた。

「月が2つになったり、キラリーランドが森になったり、

噴水がいきなり都内に現れたり、見たことも無いような外敵や、

獣達が現れたのは、すべて関係があるような気がします」

清十郎は早口で言った。

彼の言葉を皆が固唾を飲んで聞いている。

「原因、とまではいかないんですが・・・。

例えばスマホとか、車とか、電気や先進的な技術が

使用されたものは全て使えなくなりましたよね」

「確かにそうね」クロエが言うと、伊都子が頷く。

「ああ。

でも、ライターは使える」

紫が意見を言うと、

「そう。ライターはOKだった。

でも、懐中電灯はダメだった。

使えるか使えないかは、やっぱり文明の程度でラインを

引かれているような気がします」

「原始的な道具なら使えているものが多いんですね」

2人の会話を静かに聞いていた伊都子がいう。

清十郎はゆっくりと頷いた。

クロエは「すごいわ」と清十郎と紫の手を握った。

紫と清十郎が後ろ頭を掻く。

「そんなに褒められると、

逆に馬鹿にされているような気が」

「私は、すごいと思ったことはすごいと伝える主義なの」

「そんな主義なんかあるんだ・・・」

「私からもいいですか?」

伊都子が挙手をした。

「私、ここ最近の出来事全部、

ファンタジーみたいだって思っていたんです。

噴水とか、キラリーランドの森林化とか、

月が2つになったりとか」

伊都子の言に「わかるー」と紫が頷いた。

「そういう着眼点も面白いね。

お互いに感じたことや思ったことを共有した方がいいな」

紫が楽しそうに言った。

今度はクロエが挙手する。

「街中の人達は、どこに行っちゃったの?

どこか避難所があるとか?」

「避難所はいくつかあるようですが、国が動いたというよりも、

それぞれの地域の人が任意で作ったものみたいでした」

「知ってるの?

どこにあるの?」

清十郎が苦々しい表情になる。

「かなり離れたところです。

外敵がうじゃうじゃいるので、

ここから行くのはちょっと無理ですね」

「そう。でも、生きている人が他にもいるのね」

「ええ、たぶん」

「国が動いていないって、どうしてわかったんですか?」

伊都子が顎に手を当てつつ聞いた。

まるで何かを推理しているような仕草だな、

とクロエは思った。

「いつまで経っても支援が来ないからだ。

これが都内だけなら、無事だった地域から支援がくる。

自衛隊とか、隣の県からたくさんボランティアとかね。

でも、そういうのが全く無い。

きっと問題は全体に広がっていて、

国の機能が完全に停止しているんだと思う」

紫が真剣な面持ちで言うと、伊都子が手を挙げた。

「で、でも。

本当にそんなに大変なことになっているんですか?」

「多分、なってる。

そうじゃなかったら、ここ数日くらいで

ヘリの1つや2つは飛んできているはずだ」

「ああ・・・」

伊都子が閉口したところで、清十郎が言った。

「俺も、気になっていることがあるんだけど」

皆の視線が清十郎に集まる。

「たくさん事故があったはずなのに、

遺体がどこにもない」

クロエは首肯した。

「残酷な話だけど、本当にそうだわ。

今までまったく気付かなかった」

「わ、私。

しってます・・・」

目に涙を浮かべた伊都子が、震える声を出した。

「あらあら」

クロエが肩を抱いてやる。

「無理しなくてもいいの」

「いいんです。

話させて。わたし知ってるんです」

伊都子に無理をさせたくなくて、

クロエは清十郎と紫を交互に見つめる。

「伊都子さん。

無理しなくていいんです」

「そうだよ伊都子ちゃん。

いろいろあったんだろうし」

伊都子が頭を振る。

「いいんです。

きっと大事なことだと思うから」

伊都子は涙しながら、祖父が亡くなった瞬間のことを話した。

祖父は事件後、ずっと伊都子と一緒に居たが、

小鬼に襲われて大怪我をしてしまった。

祖父は怪我が原因で亡くなったが、

その遺体は、しばらくすると消えてしまったそうだ。

「き、消えたって・・・消えたってこと?」

紫と清十郎互いに顔を見合わせたまま言葉を失っている。

「はい。

光みたいなのが出てきて、何も残らなくて」

信じられないわ、とクロエは思ったが、

泣いている伊都子が嘘を言うようにも思えなかった。

「ありがとう。伊都子さん。

話して下さって。いいおじい様だったのね」

伊都子が何度も頷くと、クロエは小さな体を抱きしめた。

「おじい様は、あなたを守ることができて、

良かったと思っていらっしゃるわ。

私なら、きっとそう思うもの」

「そうでしょうか」

「そうよ。きっとそう」

クロエは清十郎に視線を合わせた。

もうこのあたりで終わりにした方がいいかもしれない。

「さて、会議はお開きにしましょう。

すぐにお味噌汁を入れますから」

清十郎と紫がボトルに入れておいた

インスタント味噌汁を、カップに注いだ。

「伊都子さん。お味噌汁どうぞ」

紫が明るく言ってくれたので、クロエは助かった。

話題が変わってからは、

泣いていた伊都子も徐々に落ち着いていった。


   ◇


それからの生活は、不安もあったが同時に楽しくもあった。

小鬼に追いかけまわされたのにも懲りずに、紫と清十郎は

毎日のように街へ出て行った。

その間、クロエと伊都子は食事の準備をするのだ。

留守番中、何度か小鬼が近付いて来ることがあったが、

隠れていると迂回してどこかに行ってしまう。

クロエと伊都子は、大きなあくびをしながら歩く小鬼を

可愛いとさえ思うようになっていた。

「あの子、お腹空いてないかしらね」

「そうですね。この辺りには食べ物なさそうだから、

困ってるかも」

「少しあげてくる?」

「あ、あげないですよっ。

襲ってきたらどうするんですか」

「そうよね」

慌てる伊都子をクロエ笑った。

小鬼が離れて見えなくなったのを確認してから、

飯盒で米を炊いた。

のりがあるので、今日はおむすびが良いかもしれない。

「クロエさん、慣れてますよね。

こういうの」

「ええ。キャンプをしてたから。

実はここ最近始めたんだけど、はまっちゃって」

「すごいです。

てきぱきしてて」

「そう。うれしいわ」

「優しいし、みんなをまとめられるし、

さっきは学校の先生みたいでした」

「学校の先生だったのよ。

わたし」

「そうなんですか?」

「あら、言ってなかったかしら。

○○高分かる?

あそこで校長先生していたの」

「ああ。

あの・・・」

伊都子が言いよどむ。

きっと彼女は数年前にあった事件のことを知っているのだ。

仕方ないわよね。

あれだけニュースで取り上げられたんだもの。

「まぁ、いろいろあったけど、楽しかったわ」

「楽しかった、ですか?」

「ええ」

伊都子はまじまじとクロエを見ていたが、すぐに俯いた。

「どうしたの」

「そんな風に言えばいいんだ、って思ったんです」

伊都子が少し寂しそうに言った。

「私、司書だって言いましたけど、

本当はまだ司書補なんです。

一年前に学校を卒業したばかりで、

都立図書館で働いていたんです」

「ああ。改装したところよね。

すごいじゃない」

クロエが両手を合わせて喜ぶと、伊都子も笑ってくれた。

「そ、そうでしょうか?」

「うんうん。すごいわっ」

伊都子が頬を赤らめて、髪を耳にかけた。

「私、はりきっていたんですけど、

うまくいかないことが多くて。

本を探すのに手間取ったり」

苦みのある笑みが伊都子を満たしている。

「初めてなんだから仕方ないじゃない」

「でも、不甲斐なくて」

伊都子が晴れた空を見ながら、何かを思い出そうとする。

クロエは静かに待った。

「・・・ある人に会ったんです」

「うん」

「その人、本を探してて」

「うん」

「私は必死で探して、

倉庫に積まれたこの本を見つけたんです」

伊都子が自分の鞄から、ハンカチに包まれた本を取り出した。

それは、日焼けとカビが所々についているとても

年季のいった古い本だった。

「これなんですけど」

「古い本ねぇ」

クロエは本を受け取ると、表紙に優しく手を触れた。

「10年以上貸し出しがなくて、

もうすぐ処分する予定だったんです」

伊都子に本を返すと、彼女はまるで宝物のように抱きかかえた。

「すごいわ。

よく見つけたわね」

クロエが大きな声で言うと、伊都子が照れくさそうにする。

「そ、そんな大げさな・・・」

「渡せたの?」

「はい。でも実は、見つけたのが翌日で。

申し訳なくて。

でも、渡したとき、すごく喜んでくださって」

伊都子の頬が朱に染まる。

なんて可愛らしい子だろうか。

その時、クロエの目には本の端が光ったように見えた。

「・・・え?」

光はクロエと伊都子の周りを飛び回った。

「え・・・えーっ」

クロエは自分の見たものが信じられず、何度も瞬いた。

光は伊都子の頭に引き寄せられるように、

何度もぶつかると、やがて空に向かって飛んで行ってしまった。

「・・・い、今の・・・」

「どうしたんですか。クロエさん怖い顔して」

「伊都子さんっ」クロエは伊都子の両肩を掴んだ。

「うわあっ!

どうしたんですかぁ?!」

「こ、これっ。

もう一度見せて頂戴!!」

「・・・は、はい」

唖然としている伊都子から本をひったくると、

クロエはくまなく中身を確かめた。

「クロエさん。

どどどど・・・どうしたんですか・・・」

心配そうにこちらを見ている伊都子の前で、

クロエは唸りながら本のページをめくったり、

マラカスのように振ってみたりした。

「・・・」

どう見ても、ただの本だ。

クロエは咳ばらいをひとつすると

「こ、この本渡せて良かったわね」伊都子の頭を撫でた。

きっとあの光は、何かの見間違いだったのだ。

「え・・・。

何か猛烈にごまかされた気がするんですけど」

「ま、まぁ、気にしないで頂戴。

見間違いよ。み・ま・ち・が・い☆」

クロエがウィンクをしてごまかそうとするのを、

伊都子は目を細めたままじっと見ていた。

「で?

話の続きは?」

「はぁ・・・なんだかわかりませんけど。

この本、全部英語なんです」

開いて見せられた本は全て英語で、しかも字がとても小さい。

長編作品のようだった。

「本当だわー」

「その方は、その日の内に全部読んでしまって。

すごいなって」

伊都子の目には思慕の念があった。

クロエはピンときた。

伊都子は、きっとその人のことが。

「もっと詳しく話して」

若いって良いわね、とクロエは思う。

「は、はい」

返事はしたものの、伊都子は本に視線を落として、

動かなくなった。

「・・・こんな時に、こんな話良いんでしょうか?」

伊都子は大切な家族を失ったばかりだ。

こんな時に、意中の人について語るなんて、

おかしいと思ったのかもしれない。

「いいのよ」クロエは頭を振った。

「むしろ、こんな時だから、話して欲しいかも」

「え。むしろ、ですか」

「うん。

人はそうやって勇気を出すんだから」

永遠に失う前に、手を伸ばせば良かった。

「勇気・・・そうでしょうか」

「伊都子さんは、その人に言いたかったことがあるのね」

遠慮して言わなかった言葉が、クロエにもある。

「え」

伊都子は顔と首を赤くしたが、否定はしなかった。

「言いたいことがあるなら、言った方が良いわ。

私みたいなおばぁちゃんになってからじゃあ遅いんだから」

目の前で肩を竦めて笑う伊都子を、クロエは気に入った。

「クロエさんの恋バナも聞きたいな」

「いいでしょう。聞かせてあげますわよ。

おほほほ」

飯盒で炊いた米はいい出来だった。

ありがとうございました。

次回更新は来週末を予定しています。

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