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123話 キーラとソーニャ

「みんなよろしくねっ」ソーニャが叫ぶ。

数十匹のオドが『賢者の真心の王国』へ飛び込んでいく。

十分な創製の力を蓄えたページをめくると思い浮かべた。

強くてかっこいい、誰にも負けないゴーレム。

ハンヴィーのルーフが風船のように膨らんで破裂する。

万国旗のようにアンカーが飛び出すと、

周囲の建物から、コンクリート、電線、窓ガラス、など、

構築に必要な資材を回収していく。

「うおおお・・・なんなんだ」

清十郎が寝ているスカーを抱えなおした。

「どうなってんだ?!」「どうなってるの?!」

すぐそばで抱き合っている伊都子と紫もびっくりしている。

「とりあえず、みんなの座る場所を決めようか」

キーラは『賢者の真心の王国』を指でなぞって、

ハンヴィーで使っていたシートを4つ、綺麗に並べることにした。

「いでぇっ!!」

清十郎がスライドしてきたシートに頭をぶつける。

「な、なんか、数が足りないような」すずが訝しんだ。

「コクピットの広さ的に、シートは4つが限界なんだ」

キーラは運転席となる自分のシートの股の間に、

ソーニャを座らせた。2人まとめてベルトを締める。

ピーピーと警告音がした。

「ああ、みんなちゃんと座ってベルトをつけてね」

「いや、さすがにせまいって!」

銀のお尻に押しつぶされた清十郎が騒いでいる。

「しょうがないなぁ。ちょっと後ろを広くするか」

拡張すると、三毛虎と銀がちょうど収まる空間ができる。

設計図は途中で変更可能。大まかでいいのだ。

「三毛虎と銀は外で良いだろ」

紫がぼやいた。確かにそうかもしれない。

でも、きっとみんな一緒がいい。

「わ、私が紫さんの膝に乗ればどうにかなりますよ」

「そ、それはナイスアイディア!」

「セクハラ禁止ですよ」すずが釘を刺す。

やっぱり狭かったのか、三毛虎が暴れ始めた。

「三毛、虎。ステイ!」ソーニャが声を上げる。

みんなが騒いでいる間にも、

ハンヴィーが化け物のように大きくなっていく。

車体の下から2本のリバースジョイントレッグが現れた。

さらに胴体部分が上に伸びて、3関節のアーム、

胸部の突き出した場所がキーラ達のいるコクピットだ。

頭部は小さいが周囲の状況をモニターするために、

高機能のセンサーやアンテナが無数に装着されている。

「大体できたかな」

2足歩行型高機動ゴーレム。高さ7メートル。

基本素材は鉄とコンクリといろいろ。

名付けて、『ムーンスティーラー』だ。名前の由来は秘密。

軍事航空機に搭載されるガトリングや、

オド式のミサイルに加えて、最終兵器も装備している。

「うむ。

我ながら、イイ感じにできたな」

キーラの声に合わせて、ムーンスティーラーは完全に起動した。

暗かったコクピットに光が灯る。

高性能全方位モニターが表示されたのだ。

「うおお。こりゃ、すげぇ」

「でっかいゲームセンターでこういうの見たことあるぞ」

「見てっ。後ろも見える!」

「すごいでしょ」キーラの言にみんなが頷く。

ムーンスティーラーのブースターを点火させ、石の翼を展開させる。

コックピットがガタガタと揺れ始めた。

少し不安になったが、『賢者の真心の王国』のページには、

『пойдем(行け!!)』と出ている。

「みんな。掴まって!!」

加速して宙に飛び出したムーンスティーラーが、風を受けて上昇する。

「飛んだー!」キーラとソーニャは歓喜する。

仲間達も最初は絶叫していたが、

飛行が安定すると歓声を上げてくれる。

「これから、どうするんだ?」後部座席の清十郎が訊いてきた。

「ロックのところに行く」意を決して言うと、

「ロックって・・・あの、鳥のこと?」伊都子が怯えた。

「かたき討ちか」

「違うよ」

ソーニャがベルトを外して、みんなの方を振り返った。

「葵は生きてるよー。みんな、耳を澄まして」

「どういうこと?」みんなが話すのを止めた。

すると、わずかにではあるがイヤーカフから何かが聞こえた。

それは、痛みに耐えるような泣き声だった。

「・・・」

葵が泣いている。全員がそれを耳にした。

「ひとりで、勝手に決めて、1人で、勝手に泣いてっ!」

手を強く握りしめ、爪を真っ白にしたすずが言う。

「行こう」「行きましょう」紫と伊都子が言った。

「みんなに手伝って欲しいんだ」

「頼み事なんて、珍しいこともあるもんだ」

なぜか清十郎は嬉しそうに言った。

「これからは、どんどんするから。

覚悟してね」

ムーンスティーラーが空気の壁を突き破って進む。

「会敵まで、あと10秒」

機体は飛行を続けるロックに一気に追いつく。

「俺達は、どうしたらいいんだ?」

「紫と伊都子は、射撃をお願い」

キーラは急遽2人の前に操縦桿と専用モニターを生成した。

「うお・・・こりゃあすげぇ。感度良好ってか!」

ロックがこちらに気付いた。

漆黒の両翼を開き、そこから腫瘍持ちを放ってくる。

腫瘍持ちは蝙蝠のような姿をしており、一匹一匹がとても大きくて速い。

「撃って!」

「わかったわ」

伊都子がミサイル4機を一斉発射する。

着弾と同時に、腫瘍持ちの群れが爆散する。

ちょっと火力が高すぎたかもしれない。

キーラは爆発に巻き込まれないよう、

ムーンスティーラーを高速旋回させた。

「わーい」ソーニャが両手をあげて歓喜する。

「ちょっとソーニャ。前が見えないよ!」

ソーニャの両手を退けると、彼女はキャッキャッと笑った。

ロックは次々に腫瘍持ちを産み落とすが、紫がガトリングで始末していく。

「へへっ。

航空機からの射撃は初めてだが、いい感じだな」

「紫さん、ちょっと、どこ触ってるんですか」

「い、いや。ごめん、狭くってさ」

「別にいいでんですけど・・・」

伊都子と紫が仲良しさんをしている間に、

ムーンスティーラーが腫瘍持ちに囲まれてしまう。

「ちょっと、2人ともちゃんと撃ってっ」

「おいおい。囲まれちまったぞ」

「わーごめんなさい!」

伊都子が慌ててミサイルを発射しようとするのを紫が止める。

「伊都子ちゃん。巻き込まれちゃうから!」

「む、紫さんったら、近いですよ」

「こいつは参ったな・・・いろんな意味で」

清十郎がやれやれと首を振る。

「ね、キーラ、キーラ」ソーニャが顔を近づけてくる。

「なに? いまちょっと忙しくて・・・」

「これ、何のボタン?」

ソーニャがハンドルの真ん中についているボタンを指さした。

「あ、それは、主砲で・・・」

姉が説明もする間もなく、ボタンを押した。

瞬間、煌びやかな光がモニターを満たし、

大気を焦がす高出力レーザー放たれる。

激しい反動に見舞われたムーンスティーラーは、

回転しながら後ろに吹き飛んだ。

「うおおおおお!!」

「ぎやああああああ!!」

レーザーは俯きがちに角度を変えながら突き進み、ロックの右半身を貫く。

さらに伸びていくと、最後にビルに当たって倒壊させた。

ハレーションを起こしたモニターの映像が戻ると、

翼を失ったロックが墜落していくのが見えた。

「おいっ・・・やったぞ!」

「ソーニャのおかげー!!」

「いやいやいや」直後にアラームが鳴り響く。

かなりのエネルギーを消費したため、

ムーンスティーラーが飛行不能になったのだ。

「燃料切れだ。

仕方ないなぁ・・・僕達も下に降りるよ!」

石の翼を動かして滑空し、機体をゆるゆると着地させる。

黒鳥は100メートル先の地面で倒れていた。

翼をもがれ、全身を火傷し、白い煙を上げている。

「キーラ。

もう一回押してもいい?」

ソーニャの人差し指を鷲掴みにする。

「ちょちょちょ! ダメだって。

あそこには葵もいるんだよ?」

慌てるキーラをまじまじと見て、彼女は喜んだ。

「キーラと手を繋げてうれしい」

「そんな場合じゃあないんだよ・・・」

うみゃーん、と三毛虎が鳴いた。

「あいつが立ち上がったぞ!」紫がロックへガトリングを撃ち込む。

銃弾を浴びながらも、ロックは黒鳥から黒豹へと姿を変えた。

なんとなく、以前よりも体が小さくなったような気がする。

黒豹が地面を揺らしながら走ってきた。

キーラはムーンスティーラーの姿勢を下げて待ち構えた。

「来る!!」

その時、前から来る黒豹に気をとられたキーラは、

主砲ボタンを押したくてうずうずしているソーニャに気付かなかった。

「もっかい押す―!」

「あ」

ソーニャがまた主砲ボタンを押した。

ありがとうございました。

年明けまでに終わりそうです。

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